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拾伍乃吉備団子
難易度:★★★★★  
?千夜一夜 2021/12/31 23:06
 
ある日の鬼退治訓練高等学校にて。

今日もサルキジイヌの3名は補習授業中でありました。

お昼になり、給食の時間となりました。

あまい吉備団子が8個、しょっぱい吉備団子が8個、合計16個が3名に支給されました。見かけはどれも同じで食べてみて初めて味がわかるという趣向です。

そこへ風紀担当の一寸法師先生が乱入してきました。

先生「16個を3名で平等に分けるなんて不可能だから、私がひとつ食してやろう。パクっ」

サルキジイヌ「あーーーー」

先生「諸君っ。知っているか? あまい吉備団子の重さは10グラム、しょっぱい吉備団子の重さは10.1グラムなのだ、正確にな。給食室の調理師にたったいま聞いてきたから間違いない。」

サキイ「ギャースギャース \(>_<)/ ヒドイー」

先生「静粛に諸君!
ここに取り出したるは精密天秤。ただし、天秤につきものの重りはここにはない。
この天秤を使って、私がたった今、食した吉備団子があまかったのか、あるいは、しょっぱかったのかについてを確実に判定する方法を考えたまえ。
もしも方法がみつかれば明日の給食にあたっては特別に今日の何倍もの個数の吉備団子をやろう。」

イヌ「先生!?…何倍って?」

先生「もちろん、天秤の使用回数には制限があるのだが……10回以内で確実に判定できる方法を見つけたならば3倍の吉備団子、8回以内で確実に判定できる方法を見つけたならば6倍の吉備団子を明日の給食で支給してやろう。」

サキイ「うおおおおー」

――

問1:「重い団子が7個、軽い団子が8個」もしくは「重い団子が8個、軽い団子が7個」のどちらであるのか、天秤使用回数を10回以内で、確実に判定できる方法を考案してください。

問2:8回以内ではどうなりますか?

――

問1についての想定解は、カッコいい?です。言われてみれば、そりゃそうだよね、という。

問2は難問です。

――

難問です。☆☆☆☆☆クラスです。
じっくりとお考え頂ければ幸いです。



ちなみに、更に回数を8回未満に減らせることが判明しているのですが、そんな超難問、出題者の千夜一夜には解説不可能です。
 
Answer 
問い1:
別解もあるようですけれども、私のお気に入りは以下の通り、シンプルです。

重い団子が7個あるのか8個あるのか、二者択一です。

これを、別な意味に置き換えます。すなわち。

15個中、重い団子の個数を3で割ったときの余りは1個でしょうか、はたまた、2個なのでしょうか。

重い団子の個数が7個であれば、3で割ったときの余りは1個ですし、重い団子の個数が8個であれば、3で割ったときの余りは2個なのです。

重い団子の個数を3で割ったときの余りの個数を、天秤使用10回で調べる方法があります。次に記します。

15個の団子を3個づつ、5グループに分けます。

各グループごとに、そのなかの重い団子の個数を3で割ったときの余りの個数を調べます。

ひとつのグループに含まれる重い団子の個数のバリエーションは、0個、1個、2個、3個です。従いまして、重い団子の個数を3で割った余りの個数のバリエーションは、0個、1個、2個に限られます。

ひとつのグループについて天秤を2回使えば、この0個、1個、2個のどれであるのかについて容易に判定できます。
グループにはいっている団子を J、K、Lとしましょう。
JとKとの重さを比べ、JとLとの重さを比べる、あわせて2回の天秤の使用で、このグループ内の重い団子の個数について情報が得られます。3つのケースが考えられます。
@J、K、Lが全て同じ重さならば、重い団子の個数は0または3です。重い団子の個数を3で割った余りの個数は0です。
AJ、K、Lのなかにひとつだけ重い団子があるばあい、重い団子の個数を3で割った余りの個数は1です。
BJ、K、Lのなかにふたつ重い団子があるばあい、重い団子の個数を3で割った余りの個数は2です。

このように、ひとつのグループについて天秤を2回使えば、その中に含まれる重い団子の個数を3で割ったときの余りが、0個、1個、2個のどれであるのかについて簡単に判定できます。

全部で5グループありますので、天秤を10回使えば、各グループ内に含まれる重い団子の個数を3で割ったときの余りを、全て突き止めることができます。

ここまでで天秤の使用はオシマイです。

最後に、各グループごとに調べた余りの個数を全部足し算して、得られた総和を更に3で割った余りの個数を求めます。

これが2ならば、15個中の重い団子の個数は8、1ならば15個中の重い団子の個数は7、と判明します。

※天秤パズルにありがちな、天秤の傾きごとに調査手段が複雑に分岐していくようなことがありませんので、私は問1についてのこの解法がとてもお気に入りなのです。

―――

問い2

別解の存在が知られておりますが、私の *お気に入り* の想定解を御紹介いたします。

15個の団子を3個づつ、5グループに分けます。

これらの中に、重い団子が何個づつ入っているかについて、全可能性を数えあげると、12通りになります。一覧を書いておきます。

00133 00233
00223 01133
01123 01223
01222 11123
11113 02222
11122 11222

この一覧にある各要素は、重い団子が少ない順に並べてあります。
縦二列になっていますが左の列は重い団子が15個中7個になっていて、右の列は重い団子が15個中8個になっています。

天秤使用を8回以内で、重い団子が7個なのか8個なのかについて知りたいときに、上記の一覧は、大きな手掛かりになります。

その目的のため、一覧表にデータを補強して整理します。

AABCC 00133 7
AABBC 00223 7
ABBCD 01123 7
ABCCC 01222 7
AAAAB 11113 7
AAABB 11122 7

AABCC 00233 8
ABBCC 01133 8
ABCCD 01223 8
AAABC 11123 8
ABBBB 02222 8
AABBB 11222 8

右端の7または8は重い団子の総数です。これを知りたいわけです。

左端のABCDなどの記号列は、5グループのなかで互いに重さが一致しているかどうかを見るための鍵となります。

たとえば、
ABBCC 01133 8
を見ると、5グループのなかに重さの種類が3種類(0,1,3)あり、そして、軽→重の順に並べると、一番軽いグループが1グループ(A)、中くらいの重さのものが2グループ(B)、一番重いものが2グループ(C)あることを意味しています。

さて。
鍵を見ればほとんどの場合に、全体で重い団子が何個あるのかについて確定しています。具体的には、

AABBC 00223 7
ABBCD 01123 7
ABCCC 01222 7
AAAAB 11113 7
AAABB 11122 7
ABBCC 01133 8
ABCCD 01223 8
AAABC 11123 8
ABBBB 02222 8
AABBB 11222 8

この10種類の鍵については、一意に、7か8かがわかります。

その一方、鍵を知るだけでは7と8との区別がまだつかないのが下記のものです。

AABCC 00133 7
AABCC 00233 8

これの解決方法については説明の都合上、後述します。

中間まとめ。
15個の団子を5グループにわけて重い団子の分布を知れば、それを鍵として、一寸法師先生が食べた団子が甘かったかしょっぱかったかを知ることに大きく前進することができる、ということになります。

では、
《重い団子の分布を知る》にはどうしたらよいでしょうか。

実は【別途に私が出題済みの】問題、すなわち《木火土金水》の解法をそのまま使えば良いのです。

5グループの間で、重さの序列を決定するためには、最大7回の天秤使用でことたりる、というのが《木火土金水》での結論なのでした。

これを使えば、私たちは先程から話題にしている《鍵》を入手できます。

その鍵が「AABCC」でさえなければ、既にあげてある一覧表を見ることで15個中の重い団子の個数がこれで解決しました。
ここまで天秤は7回使っています。

鍵が「AABCC」のときには、天秤をあと1回だけ使うことで、

AABCC 00133 7
AABCC 00233 8

のどちらであるのかについて決定できます。

その方法は簡単です。

Bのグループに重い団子が1個あるのか、2個あるのか、どちらであるかを判定したいのです。

Aのグループは軽い団子のみからなっていますので、こちらから2個を取りだします。次に、Cのグループは重い団子のみからなっていますので、こちらから1個を取りだします。 こうして取り出した3個をまとめてグループとし、改めてXと呼びましょう。Xのなかには重い団子が1個はいっています。

グループBとグループXとを天秤で比較します。

釣り合えば B には重い団子が1個はいっています。

釣り合わなければ、必ず X よりも B のほうが重く、 B には重い団子が2個はいっています。

以上で
天秤を1回だけ使うことで、
AABCC 00133 7
AABCC 00233 8
の区別がつくことの説明が終わりました。


総まとめ。

とどのつまり、天秤を最大でも8回使うことにより、15個の団子を5グループにわけて重い団子の分布を知れば、それを鍵として、一寸法師先生が食べた団子が甘かったかしょっぱかったかを知ることができます。

――

以下、余談です。

問1でも問2でも、想定解は、3個づつ5グループに分けるという共通点がありました。一方において相違点もあります。

問1では、グループ内の団子どうしで【のみ】天秤を使う、他グループの団子どうしでは天秤を使わないのでした。

問2 では、問1とは好対照でして、同一グループ内の団子どうしでは全く天秤を使いません。

多分…なのですが… 天秤を使わない対象を作っているので、天秤使用回数を節約できているのではないかと当初は思ったのですが…

手元にある、天秤6回で済ます解法は、もうちょっと綺麗じゃないやり方をしています。

木火土金水による判定を最後までやりきらず途中までやっておいて、この途中経過を全8パターンに分類し、各パターンごとに最短手順で攻略する、というものなのでした。
かなり面倒ですし面白味がありません。
 
■
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