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通り魔殺人の夜
難易度:★★★★
木有恵尊 2012/03/20 21:44 桜が咲き始めたとある朝、路地裏で一つの死体が見つかった。
被害者は二十代のOL。後頭部を鈍器で殴られ、うつ伏せになって死亡していた。 警察にとって困ったのは、それが「通り魔殺人」であったことだ。通り魔殺人ともなると、事件解決への手掛かりが非常に少なくなる。 そんなある日、一人の少年が「女を殺した通り魔を見た」と警察署にやってきた。 「ほ、本当かい、君」刑事に成り立ての青柳は、声を裏返しながら訊ねた。彼の隣にはパートナーの赤城がいる。 「はい。本当に僕は通り魔を見ました」 「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだい」 少年は顔を伏せながら、「怖くて」と言った。「もし警察に言ったら、何かされるのかもしれないと思って」 「まあいい。とにかく、説明してくれ」 青柳に促されて、少年は首を引く。 「僕がコンビニのバイトを終えて自転車で帰っている途中、いきなり近くから女性の悲鳴が聞こえてきたんです」 「ちょっと待って、それは何時くらいの話?」 「多分、深夜零時くらいだったと思います。それで、気になって近くの路地裏を覗きこんだんです。そしたら、奥に髪の長い女性と、その手前に金属バットを持っている人がいて」 「それで?」青柳は手帳に証言をまとめながら、先を促す。 「女性は怯えた表情で金属バットの人を見ていて、壁に背中を付けながら身体を震わせていました。僕も怖くなって、動けなくて。そして次の瞬間、手前の人が金属バットで女性を殴ったんです。そのまま女性は前のめりに倒れて、動かなくなりました」 「その殴った奴の顔は? 性別は?」 「分かりません。女性が倒れた後、必死になってその場から逃げましたから。でも、体系からして男だと思います」 「それじゃあ、その男の着ていた服は?」 「黒いパーカーを着ていました。下はデニムでした。あと、薄らとですが、背中にGODと書かれていた気がします」 「成る程、これは重要な証言ですね、赤城警部!」 黙って話を聞いていた赤城は少年を見つめ、「君、嘘を吐いてはいけないよ」と優しく言った。 「は?」と素っ頓狂な声を上げたのは青柳だ。 「もし君の言っていることが本当だとしたら、矛盾が生じるんだ。面白がって嘘の証言をしているのであれば、ちゃんと謝りなさい」 少年は顔を青くして、それから「ごめんなさい」と頭を下げた。 一体どこがおかしいと言うのだろうか?
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