私は、夜武神（ヨムガミ）と言う者です。
今日は、例の変わり者の教授に呼ばれたので、この部屋に来ています。

私を呼び出したのは、古畑 剣真（コバタ ケンシン）‥通称、コバケン教授。

「‥何か用ですか？」

私がそう尋ねると、教授は出前のラーメンに豪快に酢を入れながら話し出した。

「昨日、佐藤 赤哉（さとう あかや）と言う男が毒殺された。
　ラーメンの中に毒が入っていたらしい。」

「‥はぁ。」

「被疑者は4人だ。メモを取るといい。
　塩谷 錦（しおや にしき）‥被害者の運転手だ。
　須崎 冬夢（すざき ふゆむ）‥コック。
　清勇 ヘレネ（せいゆう -）‥被害者の秘書。
　御園生 琴代（みそのう ことよ）‥被害者の内縁の妻と言った所か。」

「（‥まだ酢入れてる。）」

「まず、佐藤は塩谷の運転する車で別荘へ。
　その時、他の3人はタクシーを利用した。
　別荘に着くと、多少の談話の後に夕食の準備。
　和食、イタリアン、フレンチ、中華、イギリス料理の5種類から、1人1種類ずつ選んだ。」

「‥じゃあ、須崎が犯人じゃないんですか？
　毒を入れられたのも須崎だけの気がしますけど。」

「まぁ聞きたまえ。
　須崎も、誰が何を注文したのかは分からない。
　毒を入れるのも、誰でも可能だったと言えよう。
　須崎も、時々倉庫に材料を取りに行っていたし、トイレに立つ者も居た。」

そこで教授は手を止めて、今度は胡椒をかけ始めた。

「‥質問を受け付けよう。」

「じゃあ‥別荘に着いてから、被疑者は被害者に何かしましたか？」

「特に何もしていない。‥ああ、それから、別荘に着いてからはコックの須崎以外の全員が同じ部屋に居た。
　ちなみに会話の内容は‥。
　・塩谷 ‥車
　・清勇 ‥政治
　・御園生 ‥音楽
　‥と言った所だ。」

「うーん‥。あ、佐藤は、ラーメンが大好きでいつもそれを選んでいた、とか。」

「違うな。どちらかと言えば、ラーメンは時々しか食べない。
　‥さて、そろそろ答えを出してもらおう。
　犯人は誰か？ そして、如何にして被害者の選んだ料理を当てたのか？」

教授はそう言うと、胡椒と酢にまみれたラーメンを食べ始めた。