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殺意の画鋲
難易度:★★★  
?永久駆動 2008/12/30 11:14
「君と別れたくない。」情熱的に抱きしめる浩司。
「私はあなたを許せないし、
 あなたの正体を美佐子にも教えておくわ。
 貸したお金は絶対に返してもらうわよ。
 車で送ってくれてありがとう。」
浩司の腕をふりほどく詩織。立ちつくす浩司を残し、
詩織は自分の職場のビルに裏の通用口から入る。
守衛に挨拶をしてドアに手をかけた。
「痛い!」指を押さえる詩織。
「どうした。」かけつける浩司。
「指を見せて。血がでてるよ。」
「痛たたたた、やめて指を離して・・・・・うぅぅ。」
そのまま気を失う詩織。
「どうした詩織?・・・・救急車を呼んでください!」
すぐ横の守衛室で見ていた守衛に叫ぶ浩司。

ガイシャは水野詩織24歳、OL。
救急隊が駆けつけたが、ほぼ即死。
ガイシャの体内から猛毒のテトロドトキシンが検出。
テトロドトキシンは指先の傷から入ったと思われる。

ガイシャの足元に画鋲が落ちていた。
針にテトロドトキシンが塗ってあった。
裏には両面テープが貼ってあった。
浩司が地面の画鋲を発見し拾いあげた。
画鋲から浩司の指紋のみ検出された。

「通用口のドアノブに毒を塗った画鋲が
 両面テープで貼ってあったのでしょう。
 ドアノブの下なら死角で見えなかったと思います。
 ガイシャはドアを開けようとして指を刺し叫び声をあげた。
 それを聞いて浩司がかけつけた。」
「ガイシャがドアに手をかけた時、浩司は離れていたんだな。」
「浩司は道に立って、ビルに入るガイシャを見送っていました。
 通用口にはまったく近づいてません。守衛が目撃しています。
 ガイシャの叫びを聞いてすぐ走ってきたそうです。」
「通用口のカギは開いていたのか。」
「ガイシャの同僚、橘美佐子がその20分前に出社してます。
 通用口のカギはいつも美佐子が開けていました。」
「他の社員は。」
「他に5名の社員がいますが、だいたい9時ギリギリに来ます。
 いつもは美佐子が一番早く出社しオフィスを簡単に掃除する。
 次にガイシャが来てビルの正面玄関を開ける。
 そんな役割分担だったそうです。

 美佐子の証言です。
 出社した時、ビルは守衛室以外は無人でした。
 正面玄関も閉まっていました。
 持っていたカギで通用口を開けました。
 その時、ドアノブに画鋲など無かったそうです。
 ただ手袋をしていたので気付かなかった
かもしれないと言ってました。

 近頃は寒いのでガイシャも普段は手袋をして出勤していましたが、
 当日は浩司に車で送られたので、手袋をしていなかったようです。
 
 次は守衛の証言です。
 深夜1時に通用口の施錠を確認しています。
 ドアノブも握ったが画鋲には気付かなかったそうです。
 それ以後はずっと通用口が見える守衛室にいました。
 ガイシャが触れる前にドアに触ったのは美佐子だけでした。
 それ以外にドアに近づいた人間はいません。」
「動機は何かわかったか。」
「浩司はガイシャと美佐子の2股をかけていたらしいです。
 それがガイシャにばれて、最近は修羅場になっていました。」

問題 この事件の真相は
    推理は囁きで
Answer「画鋲はドアノブに貼られていてたのではない。
 浩司が手の中に画鋲を持っていたんだ。
 ガイシャが『痛い』と指を押さえているところに駆け寄り、
 彼女の指を取り、そこで画鋲を刺したんだ。」
「なぜガイシャは『痛い』と言ったんですか。」
「静電気だ。
 ガイシャが浩司に話していたんだ。
 通用口のドアはいつも静電気が強く、
 手袋をしていないと、ものすごく痛いと。
 『今日は車で送ってあげるから手袋はいらないよ』
  とでも言って、浩司は詩織に手袋をさせなかったか、
  あるいは彼女の手袋を隠したか。」
「静電気ですか。なんか殺人のトリックとしては頼りないですね。」
「詩織が『痛い』と叫んでくれなければ、犯行を先に延ばしただろう。
 でも浩司には詩織が『痛い』と叫ぶ確信があった。」
「確信ですか。」
「浩司はビルに入ろうとするガイシャを、
 情熱的に抱きしめたんだ。
 つまり自分のジャケットとガイシャのコートを
 しっかりこすりあわせたんだ。
 ガイシャに強い静電気を帯電させるために。」
■
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