「薬の受け渡しでっせ。
　場所は宮前中央公園の噴水西側の公衆トイレや。
　たった今運び屋が売り子３人と個室に入りよった。
　大量のパケの分配のようやから今から３０分はかかるやろ。
　トイレ個室とはほんま臭い取引やな。
　今すぐ来れば間違いなく押さえられるで。
　じゃあ、わしはこれでここから離れますさかい
　金はいつものように頼んます。」
タレこみ屋の政はいつものように
一方的に早口で囁くと通話を切った。

携帯を閉じるとちょうど矢崎がお茶を持ってきた。
「石田さん。お茶です････えっ･･･ちょっと放して。
　お茶が、お茶が･･････ど、ど、どこ行くんですかぁぁぁ！」
「おまえでいいか。時間がない。とにかく来い。」
署から覆面パトカーを飛ばして１０分で宮前中央公園に着いた。

噴水西側の公衆トイレの前に立つ。
右が男性入り口、左が女性入り口。
声をひそめて矢崎に指示をする。
「おまえは女子用の個室を調べろ。
　静かにゆっくりと音をたてずに
　誰かが入っていないか確認するだけでいい。
　掃除用具入れとかも全部開けるんだ。」
「は、はい。矢崎巡査、これより女子トイレを確認します。」

俺は男子トイレにゆっくり入る。
個室は全部空いているようだ。
各ドアを開いて確認していく。
掃除用具入れも開く。
男子トイレには誰もいなかった。

「石田刑事。女子トイレには誰もいませんでした。
　ドアも全部開けて確認しました。間違いありません。」
そんな馬鹿な。
政が嘘をつくはずがない。
政のタレこみは絶対に正確で間違いがない。
『宮前中央公園』『噴水西側の公衆トイレ』、
聞き違えはありえない、同名の場所はない。
宮前中央公園に噴水は１つだけ。
噴水西側の公衆トイレとは絶対にここのはずだ。

「これはいったい？？･･････そうか！」


問題　運び屋と売り子たちはどこに消えたのでしょう？