みなさんに、夫を殺した恐ろしくも美しい女の話をいたしましょう。
　殺されたのは彫刻家でした。男は自分の住むビルから落下。首に細く長いロープを巻かれて絞殺されておりました。
　殺される少し前まで男がいたはずのアトリエに行って状況を調べてみようとしたのですが、アトリエはカギがかかっていました。カギは男しか持っておりません。
　窓は開いておりましたが、他の窓に飛び移ることもできない。まさに密室だったのです。
　一方、男の倒れている場所とはビルをはさんで反対側に、男の作ったビーナスの彫像が落ちていました。彫像の首には、男の首にあったのと同じロープが巻きついておりました。
　もとは男のアトリエのすぐ上の、屋上に置かれていたものらしいのですが、男の死体が発見された朝、なぜかこれも少々地面に食い込んだ形で発見されたのです。誰かが屋上のフェンスに穴をあけて彫像を突き落としたようです。
　世間には秘密でしたが、男は自分の作ったビーナス像に異常なまでの愛情を持っており、妻はとても悩んでおりました。何度か離婚を言い出したのですが、世間体を重んじた男はまるで聞いてくれません。
　やがて男の愛する彫像が屋上に飾られるようになった時、妻の頭には世にも恐ろしい殺人計画が浮かんだのです。
　妻はどうやって密室にいたはずの男を殺害したのでしょうか。

あ、これ知ってる人がいるかもしれません