扉が開く気配はない。
無機的な倉庫内は、カビのような匂いで満ちている。もう、限界だった。
「ドラえも〜ん」
つい、いつもの決まり文句が口から出てしまう。そう、肝心のドラえもんはこの時代にはいない。昨日、定期検査だと言って未来に帰ったばっかりだ。
　もちろん、ドラえもんだって僕のことを心配しなかったわけではない。表面上は冷たく接していたが、出発の直前に一言「スペアポケットは僕の枕の下にあるよ」と言ってきた。僕は当然気が大きくなり、ジャイアンに喧嘩を売りにいった。いつもは考え付いても口に出すことができない数々の文句を繰り出したりもした。しかし、ポケットの中身を見たときは愕然とした。あの駄目ロボットのポケットに入っていたのは、なんだったと思う？

どこでもドア（故障中）ビックライト（故障中）通り抜けフープ（故障中）

意味不明だよね。何のために「スペアポケットは僕の枕の下にあるよ」と言ったんだろう？案の定、僕はギッタンギッタンにされてここに閉じ込められている。もう３時間くらいは経っただろう。
「家に帰りたいよぅ〜」思わず声が漏れた。
ギャハハ、と外で笑う声がする。畜生。絶対鼻を明かしてやる。僕は決意した。
倉庫の中には道具などは何もなく、壁にも出っ張りや凹みなどはない。真四角の部屋だ。他に部屋はない。ドアは施錠されているわけではないが、ジャイアンたちが交替しながら押さえている。もちろん、非力な僕では開けることはできない。もし、開いてもジャイアンたちに見つかるだけだ。他に出入り口はなく、壊せるような壁も存在しない。窓なども一切ない。
　僕が持っているのは、スペアポケットとスペアポケットの中に入っていた道具だけだ。バット等武器になるものは何も持っていない。
　また、この町の中には至るところにジャイアンの手下たちがいる。もし、僕が脱出できても彼らに見つからず家に帰れるとは思えない。
秘密道具たちを見ていると、僕は思いついた。そうだ、これを使えばいいんだ!!

二時間後、僕は自分の家の自分の部屋に帰還することができた。もちろん、ジャイアンやその手下たちに見つかってもいない。さあ、僕がどうやって帰ってこれたか分かるかな？
推理を囁いてください。