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逃げた恋人たち
難易度:★★★
永久駆動 2008/10/17 20:55 拘置所仮眠室で寝ていた所長代理の私は、深夜に叩き起こされた。
「なんだこんな夜中に。君は夜間当直の看守か。 制帽くらい脱ぎなさい。」 「所長代理。申し訳ありません。 101房の収容者たちが騒いでいまして。 ホモカップルと同じ房はイヤだと。」 「101房?・・・オースギンとピーポか!」 オースギンとピーポの2人は熱烈な恋人同士。 いつもお互いの手を握っていて一瞬でも絶対に離さない。 風呂やトイレも、寝ている間も、 着替えも左右の手をつなぎ換えながら行う徹底ぶりだ。 しかしこの2人はマフィアの幹部でもある。 今日の昼間アドリアーノ所長の立会いで当拘置所が収容し 所長はそのまま緊急の要件で外国に出張。 その後別拘置所から急遽呼ばれた私が留守をまかされている。 101房の収容者はオースギンとピーポを含めて現在5名。 オースギンとピーポ以外の3人が騒いでいるという。 「収容者3名を現在未使用の102房に移せ。」 「102房は扉の鍵が壊れています。施錠できません。」 「3名とも罪は軽く明日には保釈される小物だ。 オースギンとピーポにさえ逃げられなければいい。」 まず私が首から下げた鍵で101房の扉を開錠する。 房の鍵を持つのは所長と所長代理の私だけだ。 私は廊下すべてが見渡せる位置に立つ。 「今夜の当直は君1人か。よし。 3名を移すんだ。1人づつだぞ。」 ┌───┐ │102房│ 他の房 ├─扉─┴─扉───扉───扉───扉───────────┐出 │ 私 ├─扉─┬─扉───扉───扉───扉───────────┘口 │101房│ 他の房 └───┘ 看守が101房に入ると収容者たちの騒ぎが大きくなる。 「なんだてめぇ。」「こら、離せよ。」 中の看守が訴える。 「所長代理。警棒で多少体罰を加えてよろしいですか。」 「しかたないな。私は関知しない。私の見えないとこでやってくれ。」 「了解しました。」バキッ。ゴン。ビシッ。 「痛ぇ。」「ぎゃぁぁ。」「やめてくれ。」 やがて101房から抵抗する1人をひっぱって看守は102房へ。 「なんだこのかび臭い房は。さっきの房に戻してくれ。」 バキッ。ゴン。ビシッ。「ぐわぁ。痛ぇ。」 看守は1人で101房へ戻る。 「こら、離せよ。」バキッ。ゴン。ビシッ。「ぐおぉぉ。痛ぇ。」 また1人がひっぱられて102房へ。 「この房はいやだ。違う房にしろ。」バキッ。ゴン。ビシッ。「ぎゃあぁ。痛ぇ。」 そして最後。 「掴むな。俺は動きたくない。」バキッ。ゴン。ビシッ。「やめろ。ぐふぅ。痛ぇ。」 看守が最後の1人をひきずって102房へ。 「この房寒いじゃねえか。替えてくれ。」バキッ。ゴン。ビシッ。「うぎゃぁ。痛ぇ。」 看守は102房から1人で出てくると私の前へ来て敬礼した。 「完了しました。」 こうして3名の房移動が完了した。 私は101房の中を覗く。 中には2人だけ。こちらに背をむけてピッタリくっついている。 噂どおりの熱愛ぶりだ。 私は101房の扉をしっかり施錠し、看守の肩をたたく。 「よしご苦労。私は寝るからあとはまかせるぞ。」 「はい。所長代理、お手数をおかけしました。」 次の日私は愕然とする。 オースギンとピーポが深夜のうちに逃げたのだ。 101房の鍵は私と所長が持つ鍵でなければ絶対に開かない。 複製も合鍵も絶対に無い。 昨日からずっと外国にいる所長は自分の鍵を首から下げている。 私も自分の鍵は常に肌身離さず持っていた。 もちろん房内で壁が壊されたり床が掘られた等は一切なく 鍵や扉、鉄格子を含めて101房に全く異常な点はなかった。 オースギンとピーポがお互いに握った手を離すことは絶対にない。 たとえ眠ったり気絶したりしている時でも その手が一瞬離れただけで 2人は即座に覚醒し大絶叫して死に物狂いに暴れまわる。 そうなると看守が20人いても抑えるのは難しい。 昨晩2人の手が離れなかったのは間違いない。 房移動の間、私は人数を注意深く監視していた。 看守が1人をひぎずっていく時 別の1人がその陰に隠れて移動していたなんて事は 絶対になかった。 問題 オースギンとピーポはどうやって逃げたのでしょう?
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