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叔父の死を知らせてくれたのは「松尾まどか」と名乗る女からだった。
実は叔父の名前が「山崎 生(すすむ)」ということ以外、叔父の生活のことは全く知らない。
長い闘病の末、先週なくなったと彼女は言った。
葬儀は既に済んでいるが遺産相続について相談があるので週末に来るように依頼された。

次の文章は週末に松尾まどかと会ったときのことを述べたものである。
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新幹線と電車を乗り継ぎ電話で聞いた住所にタクシーで行くと、松尾まどかが出迎えてくれた。
彼女とは初対面のはずだが、彼女のことは昔から知っているような気がした。

線香をあげ手を合わせているとチャイムが来客を告げた。
客は「並河清太郎」という名で叔父の友人だと言った。

「山崎の希望で葬式はごく近しいものだけで済ませたんです」
と並河は言ってわざわざ来てもらったことを詫びた上で本題に入った。

並河の話した内容をかいつまんで説明すると次の通りだ。
●病気になってから叔父は内縁の妻である松尾まどかと相談の上、公証人に遺言を書いてもらった。
●土地、家、銀行預金などの遺産は松尾まどかが相続する。
●二人には子供がなかったので今後のことを考え、ある権利を唯一の親族である美濃部盛夫に贈る。
 (ちなみに、美濃部盛夫とは語り手である私のことだ)
●遺産相続にともなう相続税は必要ないだろう。
●叔父の死により、その権利は小額ながら金銭的価値を生む可能性がある。
●その権利は半世紀くらいは保証される。
●事務的な手続きは並河の方で進めるので遺産を受け取って欲しい。


特に断る理由もなく受け取りを了解すると、松尾まどかは隠しクローゼットの奥にある金庫を開けた。
金庫の中は、A4サイズ程度の大きさで厚さ2〜3cmほどの郵便物が20通ほどあった。
「金庫の中身はあなたのものです。でも封筒は勝手に開封しないで下さい」と彼女は言った。

手にとって見たが、どの封筒も開封された様子はない。
郵便局のスタンプから、郵送されたものだと分かる。
宛先は叔父の名前になっていた。
封筒の裏に書かれた、差出人の住所氏名も宛先と同じであった。
差出人住所氏名欄の下には、横書きでなにやら意味不明な文章や言葉が書いてあった。
「『昔ちょっとしたトラブルがあって、それ以来こうしている』と山崎は言っていたわ」と彼女は説明した。



その日はどうせ帰れないので叔父が住んでいた家に泊まり、彼らと酒を酌み交わした。
叔父について語ることもない私はもっぱら聞き役に回ったが、飲むほどに松尾まどかは饒舌になった。
しかし、疲れと酔いのせいか私は朦朧としてしまい、彼女の言葉の断片しか覚えていない。
「・・・松尾バナナと言ってた頃なの...
 ...そしたら死体が動いて...
 ...セーラー服を着せられて...
 ...意味もなく歌ったり山崎の話は支離滅裂だったわ...
 ...話が違うと大喧嘩して...
 ...泥棒呼ばわりされてからよ...」

いつ寝たのか分からないが、翌朝目がさめたときは布団の中にいた。
朝食をいただき別れを告げ私は帰宅の途についた。
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問題 金庫の中にあった未開封の郵便物は何でしょう。
  郵便物の中身と未開封のまま金庫に保管していた理由を説明願います。


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