Z県I市。
数学教師が、学校で殺された。
新米刑事の俺は、またしても三田村警部補と現場に急行する。

現場となった英都高校《エイトコウコウ》で、3人の容疑者が浮かび上がった。
被害者が殺された時学校に居たのは、この3人だったと言う。

三田村「どう思う？舞草。」
舞草「‥俺に聞かれても困りますね。」

現場は、職員室の彼女のデスクだった。

三田村「殺されたのは、戸辺 空恵《トベ ソラエ》。数学教師だ。」
「事件が起きたのは、昨夜9時過ぎ。」
「パソコンに向かって作業中に、後からガツン！と‥。」
舞草「‥即死だったんですか？」
三田村「いや。数分生きていた、と解剖の結果が出てる。」
舞草「じゃあ、ダイイングメッセージ、とか‥？」
三田村「いや。残そうとしたらしいが‥犯人が近くに居て、出来なかったんだろう。」
「近くにはパソコンがあったが、スペースキーにしか血は着いていなかった。」
「スペースキーに、人差し指の後がくっきり1つだけな。」
「犯人がすぐに逃げていれば、何か遺せたのにな‥。」
舞草「ええ。そうですね‥。」
三田村「‥さて。被疑者諸君に会いに行こうか。」


三田村「どうも。Z県警の、三田村です。」
舞草「舞草です。」

俺たちが挨拶すると、3人の男女が立ち上がった。

三田村「とりあえず、お名前を‥。」

芦谷「芦谷 駆《アシタニ カケル》‥体育教師、です。」

ジャージと、体格の良さから一目で分かる。

向井「向井 夢美《ムカイ ユメミ》です。」
「‥あ、理科を、担当してます。」

‥着ている白衣を見れば、分かる。

足羽「わたくしの名前は‥足羽 輝明《アスワ テルアキ》と申します。」
「警備員をしております。」

‥‥その制服を見れば、分かる。

舞草「で、第一発見者の方は‥？」
足羽「あ、わたくしでございます。」

やや年老いた警備員が、小さく手を上げた。

足羽「その時、‥戸辺先生は、もう‥冷たくなっておりまして‥。」
三田村「なるほど‥。で、その時の、遺体の状態は‥？」
足羽「ええと‥パソコンの‥‥何て言うんですか？あの‥長いボタンは。」
舞草「これの事ですか？」

俺は、スペースキーを指差す。

足羽「ああ、それですそれです。」
「そのボタンの近くに指を置いて‥その、ぐったりと‥。」
三田村「‥なるほど。」
「‥付近に、怪しい人影などは？」
足羽「さ、さぁ‥。暗かったものですから‥。」
「その時‥わたくし‥その、驚いてしまいまして‥。」
「大声を出したら、2人の先生がすっ飛んできた訳です。」

（‥まぁ、この足羽氏が犯人かも知れないから、）
（あんまり信用はできないかもな‥。）


三田村「凶器から指紋も採れず‥。」
「目撃証言も無し‥。ダイイングメッセージも無し‥。」
舞草「どうすんですかね‥。」
「せめて、犯人が早く逃げてればね‥。」
三田村「ああ、そうだな。「む」でも「あし」でも‥。」
「一言でも、遺してくれれば‥。」

‥厳密には、警部補の言葉は正しくない。
一応、彼女は‥「　」と言うメッセージを遺している。
適当に押したのかもしれないが‥。

1度、今日聞いた情報を頭の中で整える。

被害者‥被疑者‥現場‥ダイイングメッセージ‥。
どこかに‥ヒントがあるはずだ‥。

その瞬間、俺の頭に一筋の光が走った。

舞草「あっ！」
三田村「ど、どうした！？」
舞草「‥わかりました！」
「三田村警部補！あの人を尋問して下さい！」


さて、戸部 空恵を撲殺した犯人は誰なんだろうか？