Z県I市。
電話を終えた後。俺は、そっと写真立てに手を伸ばした。
そこには、学ラン姿の3人の男が写っている。

舞草「悟浄‥。」

10年前‥俺が、17歳の時だ。


Z県 姫衿高校、2年。成績はそこそこ。
部活は帰宅部。親友は、丹野。

丁度「その日」は、俺の誕生日だった。
丹野の家から、「誕生日おめでとう！」と書かれたファックスが送られて来た。
俺は丹野と2時に会う約束をして、近くのコンビニへと走った。

丹野「よう！舞草！」

右手を上げて、丹野 八城《ニノ ハチジョウ》はこちらに向かって微笑んだ。

舞草「よう。弟も居るのか？」
悟浄「こんちわ。」

八城よりも
丹野 悟浄《ニノ ゴジョウ》‥八城の弟だ。

舞草「親は？」
悟浄「寝てます。‥親父は。あの野郎、一杯飲んだらすぐ寝たし。」
丹野「そうか。」

丹野の父親は‥言っちゃ悪いが、相当な「呑んだくれ親父」だ。
母親は、昼夜を問わずほとんど働いているとか。

舞草「で、どうするんだ？これから。」
丹野「ここの隣に、ゲーセンがある。そこで遊ぼうぜ。」
舞草「‥誕生日にゲーセンかよ。」

腕時計を見ると、2時10分。何時まで遊ぶつもりなんだろうか。


〜数時間後


丹野「遊びきったな‥。」

時計を見ると、もう4時になる所だった。

舞草「やり尽くしたな。」
悟浄「‥そろそろ、帰りますか。」

そう言って、ゲーセンを出たその時。

丹野「おい‥何だ、あれ‥。」

丹野は、団地の最上階に住んでいた。
俺達が見たのは、丹野の団地が燃えている状況だった。
俺達は現場に駆け出すが、自転車で10分も掛かってしまった。

燃えていたのは‥紛れも無く、丹野の部屋だった。
出火元は、丹野の家のリビング。
部屋で寝ていた丹野の親父は‥‥‥死亡した。


三田村「目撃者によれば‥出火したのは3時ごろ。」
「‥恐らく、原因は父親の寝タバコだろう。」
「父親が寝ていたあたりが、一段と激しく燃えているしな。」
「近くにはロウが溶けた後があったが、関係無いだろう。」

三田村と名乗ったまだ若そうな刑事は、「一応」と言って俺らのアリバイを調べた。
全員がゲーセンで遊んでいたが、ちょくちょく席を外していた。
しかし、現場からは大急ぎで自転車に乗っても10分かかる。

丹野 八城（17）
・2時30分ごろ：トイレ（所要時間約4分）
・2時45分ごろ：ゲーセン外のゴミ箱（所要時間約3分）
・3時ごろ：コンビニ（店員の証言有。所要時間約7分）
（コンビニでは、全員の飲み物を買ったらしい。）

丹野 悟浄（16）
・2時15分ごろ：両替機（所要時間3分）
・2時50分ごろ：コンビニ（店員の証言有。所要時間5分）
・3時ごろ：トイレ（所要時間3分）
（家に、「洗濯物を取り込んでくれ」と書いたファックスを送ったらしい。）

舞草 一弥（17）
・2時30ごろ：両替機（所要時間3分）
・2時40分ごろ：コンビニ（店員の証言無。所要時間4分）
（‥丁度トイレが清掃中だから、コンビニに行ったんだよ。）
（トイレは、10分位して清掃を終えたらしい。）

その時、俺の頭に一筋の光が走った。

舞草「あっ！」
丹野「ど、どうした！？」
舞草「‥わかった。」
「‥わかっちまったよ‥。犯人‥。」

さて、丹野の父親を殺したのは誰なのか？
そして、殺害方法は？