ある一軒家で殺人が行われようとしていた。夫の俊一は会社に出勤しその家には嫁の加奈子、姑のトシ子の二人がいた。
嫁と姑の仲は最悪で嫁の加奈子はトシ子のケチなところが許せなく、姑のトシ子は加奈子の浪費癖なところが許せなかった。
今日は加奈子が料理教室へ行く日。加奈子がこの日を選んだのには理由があった。
加奈子は台所で朝食の後片付けをし、トシ子は台所の隣の居間でコタツに入りミカンを食べていた。
トシ子「加奈子さん。一緒にミカンでも食べません？あっ加奈子さんはミカンお嫌いでしたね。」
加奈子は、しらじらしいとムッとしたが人生最後のフルーツよ。味わって食べてね。と心の中で笑った。
トシ子「このミカンの皮も煮たら洗剤に使えるし、乾燥させて入浴剤や香水にも使えるのよ。加奈子さんみたいに次から次へと新しい物を…。」
加奈子は、また始まったと思った。あなたのケチの自慢話は近所でも有名なのよ。そのおかげで私はいつも無駄遣いの悪者なんだから。
加奈子は朝食の後片付けを終え引き出しから麺棒を取り出し、そっとトシ子に近づいて後頭部を殴った。即死。
そして台所から椅子を持ってきて居間の箪笥の上に積み上げてある印刷プリンタ入りの箱をとり出し放り投げた。
椅子から下りて椅子を倒し、トシ子の死体をトシ子が印刷プリンタをとろうと椅子に上りバランスを崩して落ちてテレビの角で後頭部を強打したように体制を整えた。コタツの上のゴミをゴミ箱に入れてコタツの板をフェルト側に裏返し、その上に年賀状と住所録を置いた。
トシ子が年賀状の準備をするために印刷プリンタをとろうとしたと思わせるためである。
トシ子がこういう作業をするとき必ずコタツの板をフェルト側に裏返すことは承知の上であった。
加奈子は凶器の麺棒を紙袋に入れて料理教室に出席するために家を出た。
麺棒は長く紙袋から飛び出しているが他におたまや泡たて器も飛び出しているので不自然でない。
加奈子は誰にも気づかれずに近くの川に麺棒を捨てた。
夫の俊一は家に麺棒があることさえ知らないのでなくなっていても気づかない。
事故死の完成。
加奈子はいつものように料理教室へ行った後、料理教室の友達と昼ごはんを食べ喫茶店でお茶をしカラオケで歌を歌っていた。
加奈子は腕時計を見た。午後６時。夫が家に帰ってくる時間。
そろそろ携帯電話に電話がかかってくるわ。トシ子が頭を打って死んでいる。事故だ。ってね。
案の定、携帯電話が鳴った。夫からだ。加奈子はカラオケの部屋を出て電話に出た。予期せぬ言葉が俊一の口から飛び出した。
俊一「加奈子、おまえが殺ったのか？」
俊一は半信半疑であったが、どうして加奈子は疑われたのでしょうか？

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