探偵Ｑは仲間のＭと共に、Ｘという男を尾行していました。
Ｘはある重要情報を握っています。
そして今日この日、それをある人物に渡すという情報を、Ｑは得ていました。

Ｘはその日、彼の住んでいるところから遠く離れた街にいました。
もちろん、情報の受け渡しのためです。
前日の夜９時にホテルへとチェックイン、翌朝７時には一旦チェックアウトします。
探偵Ｑは、Ｘの部屋が見える真向かいのホテルの部屋を借り、見張っていました。
そして、Ｍとのコンビにより、Ｘがホテル滞在中に誰とも会わなかったことを確認します。

チェックアウト後、二人はＸの尾行を開始しました。

******************************

午前８時
　喫茶店に入り、朝食をとる。
　Ｍも私（Ｑ）も、当然同じ店に入り、やや離れた座席から様子をうかがう。
　怪しいそぶりは無い。彼へ近づく人物も無し。
　Ｍが店員に調査を試みる。Ｘとは初対面のようだ。

午前10時
　書店に立ち寄る。雑誌コーナーをうろつき、観光情報誌を２・３手に取り、眺める。
　時折、周囲を見廻すそぶりを見せる以外は、何も無い。
　結局、ここでは何も買わずに店を出る。

午後０時
　そば屋で昼食。朝食時と同様にして見張る。
　Ｘへと近づく人物は、ここでも無し。
　Ｍの調査の結果、やはり店員も関係がないようだ。

午後３時
　Ｘは公園のベンチに腰掛けている。
　もう一時間になろうともいうのだが、その場から動く気配は無い。
　落ち着かない様子でひざを揺らし、辺りを見廻す。
　私は、ここが正念場だと思い、Ｍと共に注意深くＸを見張る。
　Ｘの前を通り過ぎてゆく人影はいくつかあるが、
立ち止まる様子は無い。
　Ｘもまた、その場合は視線をそらし、地面を見つめている。
　結局、彼へと近づく人物は無かった。
　やがて小雨が降り始め、ため息と共に彼は立ち去った。

午後６時
　レストランにて夕食。やはり私とＭも同じ店で食事をとる。
　窓際の席で、外を眺めながら食事をしている。
　Ｘに近づく人物なし。店員も関係なし。

午後８時
　ホテルの部屋へと戻る。
　Ｍがその様子を廊下で見届け、私は窓越しにその様子を見張る。
　
結局のところ、彼は終始誰とも会わなかった。
今日情報を受け渡すというのは、ウソだったのだろうか。

******************************

次の日、Ｘは早々にホテルをチェックアウトします。
ＱとＭはその後もしばらくＸを尾行しましたが、
やはり誰とも会うことはありませんでした。

探偵Ｑは「Ｘは情報を渡すのを諦めた」と結論し、調査を終了しました。

……しかし後日、Ｘは情報を渡すことに成功していて、
しかもそれは、探偵Ｑが一日中見張っていたその日だったことが判明しました。

いったい、どういうことなのでしょうか？