ホント、あいつなんて信じられない。「マメに連絡するよ」なんて憎らしいほどの笑顔で言っていたのに。たまに連絡が来ても、あいつの好きな星の話ばかり。それに…綾と裕輔が付き合い始めたのは綾が20歳の時。お互い一目ぼれで、ごく普通につきあい、ごく普通に楽しい季節を過ごしてきた。3年の歳月が過ぎ、綾が「お互いの将来について考えようよ」と話そうとした矢先、裕輔は自分の夢をかなえたいと言い出し、海外へと旅立った。それが1年前。「1年で帰ってくるよ」という言葉を残して。綾が最後に裕輔と話をしたのが2ヶ月前。その時に裕輔が最後に言った言葉が「大丈夫だよ」だった。約束の1年が間近に迫っているのに、何の連絡もこない。淡い期待と大きな不安。それが綾の気持ちを揺るがせていた。いつものように特に予定のない週末を迎えようとしていた夜、ラインが届いた。「織姫様へ。明日の午後5時」まったく、いつも突然なんだから。しかもベタな待ち合わせ場所。まったくバカにしないで欲しいわ…最初のデートで待ち合わせた場所でしょ。そんなことを忘れているとでも思っているの?ホント、カッコ悪くて、自分勝手なんだから。翌日、何だかんだといいながらも綾は約束の30分前にその場所にいた。「少し早かったかな?」時間を確認し、髪の乱れを気にして軽く髪をかきあげた時、綾は、憎ったらしくて、わがままで、顔も見たくなかった彼の姿を見つけた。こんな時だけ、ちゃっかりと来るんだから…綾は思わず駆け出した。
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