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ビン・ボウ警部補の事件録・25『見抜かれたつながり』
難易度:★★★  
?空蝉 2013/05/26 01:58
 裏路地にひっそりと構えられた小さなレストラン『チップ』。
 そこに一人の男が入ってきた。ハンチング帽を目深に被り、夏だというのにロングコートを着込んでいる。
 一通り店内を見回してから、男はカウンターのスツールに腰掛けた。
「いらっしゃいませ」注文を取りに来たウェイター(店内の様子から察するに、今日、この店は彼が一人で切り盛りしているらしかった)に、男はビールとピーナッツを頼んだ。
 客は、男の他には一人もおらず、店内は、まるでその男の貸し切りであるかのような雰囲気に満ちている。だが、それは単に店が繁盛していないことを示しているに過ぎなかった。
 しばらく時間が経った。ジョッキはすでに空になっていた。
男はウェイターを呼び、ビールのおかわりを注文した。そこに、男の携帯電話が、胸ポケットの中で軽やかなメロディと共に震え出した。男はポケットをまさぐり、それを取り出すと、耳に当てた。
 <カルテルだ>電話の主は言った。<まもなくそちらにターゲットが現れる。殺害後は、すみやかにレストランを離れてくれ>
 「了解した」男は厨房の方を伺いつつ、静かに答えた。「しかし、なぜ直接ターゲットの家に出向いてはいけないんだ?こんな回りくどいことをする必要があるのか?」
 <ゴウ・ヨクボー氏の邸宅には、コソ泥対策の罠が縦横無尽に張り巡らされている。それもとびきりハイテクなやつだ。加えて、あのじいさん、滅多に家の外には出んそうだ。一財産出来てしまっているせいか、警戒心が強いらしい。少なくとも、邸宅内で殺害することは不可能だ。それどころか、こっそりと邸宅に忍びこむことすら難しい。だから、そこまで呼び出す必要があったのさ>
 「そうか。しかし、警戒心の強いターゲットをよく呼び出せたな。それも一人で」
 <人を遣って調べさせたんだ。あのじいさん、ひと昔前まで、いろいろと悪いことをしていたらしい。昨夜電話を入れたよ。電話口で震えあがっていた。過去の罪を暴露しないことと引き換えに、金を要求した。100万ドルをキャッシュで持ってくるはずだが、口止めはあくまでもそこに来てもらうための名目だ。真の目的は、あくまでもじいさんの殺害。金は荷物になるから放っておけ。いいな>
 「迷子は放っておいても、金は放っておかない。それが、俺だ」
 <放っておくんだ。分かったな?>
 「分かったよ・・・・・・。では、ウラブレーさんによろしくな」そう言って、男は電話を切った。

 しばらくしてから、店内に来客を知らせるベルが鳴り響いた。入ってきたのは、スーツケースを片手に、上等な衣類に身を包んだヨクボー氏だった。不安げな表情で、狭い店内を眺めたのもつかの間、ヨクボー氏はすぐに男に気が付いた。
 ヨクボー氏はゆっくりと男に近づき、隣に腰かけた。
 「遅かったじゃないか」男はヨクボー氏に言った。
 「初めての所だ。道に迷うのも無理はなかろう」緊張と不安のためか、ヨクボー氏の眼はせわしなく小刻みに揺れている。「あんたの要求通り、誰にも言わずにここへ来た。もちろん、昨日の電話のことも誰にも言っていない」
 「いい心がけだ」
 「金は持ってきた。この通り――」
 ヨクボー氏がスーツケースを開けようとしたのを男は制した。厨房の方からウェイターがやって来たのだ。
 先ほど注文したビールのおかわりが、男の前に置かれた。
 ウェイターが去ったところで、男はヨクボー氏に続きを促した。ヨクボー氏は再びスーツケースを開けようとする、が、何を思ったのか、男は再びヨクボー氏を制した。
 不思議な表情で男を見つめるヨクボー氏を、男は、ハンチング帽の下から睨み据えた。「あんたは嘘つきだ」
 男は素早く懐に手を滑り込ませると、拳銃を取り出し、ヨクボー氏の眉間に素早く一発撃ち込んだ。
 銃声を聞きつけたのか、ウェイターが飛んできた。床に倒れ込んだヨクボー氏を見て蒼褪めている。
 「あんたもだ」男はウェイターに言った。「このじいさんと、何を企んでいたんだ?」銃が再び火を吹いた。

 「すまん、カルテルさん。ターゲットに加え、もう一人余分に殺した」店を出た男は、携帯電話を片手に小走りで路地を行っていた。
 <何故だ?余計な殺しはするなと・・・・・・>
 「いや、あのじいさん、電話のことを漏らしていた可能性がある。誰にも言っていないと言っておきながら、な」

 なぜ男はウェイターも殺したのだろう?
Answer「あのウェイター、俺の時と違って、店に入ってきたヨクボー氏には一切接客をしなかった。おかしいじゃないか。客に対して『いらっしゃいませ』もなければ注文も取らないのは・・・・・・。だから俺はピンと来たんだ。ひょっとすると、ヨクボー氏とウェイターには、なんらかの示し合わせがあったんじゃないかってな。だから一応、ウェイター君にも死んでもらったんだよ」
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