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ビン・ボウ警部補の事件録・23『悪の始動』
難易度:★
空蝉 2013/03/31 01:09 「カ、カ、カ、カ、カ、カ、カ、カ、カ、カ、カルテル君!カルテル君!カルテルくーん!!」
ウラブレー・マズシー氏の、あたかも世界の終りに直面した人が発するかのような、沈痛な叫び声に、ダイニングにて午後のひと時をくつろいでいたグレッグ・カルテルは、いったい何事かと訝りながら、ニ階にある氏の書斎へと向かった。 「どうしたんですか?ネズミでも出ましたか?」 「なにがネズミだ!これを見たまえこれを!」充血した眼でカルテルを睨みつけながら差し出されたウラブレーの手には、スルメの入った袋が掲げられていた。「これは何だね!?え!?カルテル君!」 「何って・・・・・・、先ほど頼まれたお使いの品ですけど」 「違う!」目玉がはち切れんばかりに、カルテル氏の双眸はさらに赤みを増した。 「私は君に『あたりめ』を買って来いと言っておいたはずだぞ!それが何だ、これは」ウラブレーの持っているスルメの袋には、縦書きで大きく『ソフトさきいか』と書かれていた。「誰がいつ、『ソフトさきいか』を買って来いと言ったんだ!」 「え?・・・・・・あ、ほんとだ、間違えてますね。なんせ、おつまみコーナーの商品名が、全部日本語で書かれていたものですから・・・・・・。日本語にまったく通じない私としては、適当に選ぶしかなかったのです」 「・・・・・・あのなあ、そんなことは、あらかじめ言っておいてくれたら、字の見本を渡したのに・・・・・・」 「でも、いいじゃないですか。『あたりめ』だろうが『ソフトさきいか』だろうが、同じ『するめ』じゃないですか」 「まったく、これだから素人は!」『ソフトさきいか』の入った袋を地面に叩きつけると、ウラブレーは、吸っていた葉巻の煙を、カルテルの顔面に思い切り吐きつけた。「いいかね、君。一口にスルメと言ってもいろいろある。『あたりめ』『さきいか』をはじめ、『いかくん』『いかげそ』『いかソーメン』『いかフライ』『いか天』等等等!原材料は同じでも、その精製・加工の手法は、多岐に渡るのだ!そして、手法が違えば、当然、性質も異なる。つまり、同じスルメでありながら、全く異なった次元の製品と言っても、決して過言ではない!」 「・・・・・・つまり、あなたは『ソフトさきいか』ではなく『あたりめ』の方が良かったんですね」 「良いとか悪いとかそういう価値基準は、私の中ではとうに超えている。要するにだ、かたい『あたりめ』と違って、やわらかい『ソフトさきいか』では満腹中枢を刺激できんのだよ!」 「わりあい裕福な生活を送る私には、到底理解できない問題ですね」 「いいからさっさと買いなおして来い!」 「え、面倒くさいなあ・・・・・・。まあいいでしょう。間違えたのは私だし、経済的底辺に属するあなたに対する同情もありますしね」 「何か言ったか?」 「いえ。では、行ってくるので、お金を」 「何言ってるんだ!君が出して当然だろう!ミスしたのは君なんだから!」 「わかりましたよ、まったくもう。じゃあ、『あたりめ』の字の見本を下さい。今度は間違えませんよ」 10分後、再びウラブレーの元に現れたカルテルの手には、今度こそ間違いなく、『あたりめ』の袋があった。 「御苦労、正しく買えたようだな。ところで――」ウラブレーは、意味深な視線をカルテルに向けて、言った。「さっき、君は、まったく日本語に通じていないとか言っていたが、実はそれは嘘なんじゃないか?」 「え!?・・・・・・な、なに言ってるんですか。それじゃあまるで、私が最初のお使いの時に、わざと違う商品を買ったみたいじゃないですか!」 「そう思っているよ。・・・・・・かわいい悪戯のつもりだったのかね?」 「くそっ!何を根拠に!」 「つまりね――」 ウラブレー氏の推理の根拠とは? 「なるほど、そんなところから嘘がばれるとは・・・・・・おっしゃるとおり、私は日本語を使えますよ。しかし、さすがですね。外見は貧相でも中身は豊かな人だ」 「当たり前だ。そうでなくては、奴に・・・・・・ビン・ボウに対抗できんからな・・・・・・。で、計画のほうはどうなっている?」 「はい、お待たせしました。明日から実行に移します」 「やっと、念願の復讐が叶う時が来たか」 「ええ。先ほど部下たちから連絡がありました。明朝、七時より、まず一人が動きます」 「喜劇の幕開けというわけだな。もちろん、警察や世の中にとっては、惨劇なわけだが」 「そういうことです・・・・・・。あ、ところでこの『あたりめ』、賞味期限過ぎてますね」 「なんだとおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 ※なお、二人の会話部分については、彼らの住む国の言葉を日訳したもので、彼らとしては、日本語ではなく自国の言語で話しているものとお考えください。
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