俺はある日、一人暮らしをいている女の家に忍び込んで、金品を盗もうという計画を立てていた。
そこで、住所と鍵穴の形式を説明すればその家の鍵を造ってくれる『合鍵屋』という裏業者に頼んで、その女の家の鍵を造ってもらった。
普段の俺ならば、ピッキングで簡単に家に入れるのだが、女の家の近くは人通りが多いので、なるべく不審がられずに入りたかったのだ。
そして決行の夜、俺は電柱の物陰に隠れて、女が出てくるのを待った。
数分後、女が玄関を開けて外に出てきた。俺は気づかれないように身を潜め、女が家から離れていくのをさらに待った。
しばらくして女の気配が消えたので、俺はさりげなく玄関へと向かった。
扉に近づき、合鍵屋に作ってもらった鍵を鍵穴に差し込む。鍵を回すと、がちゃりと音が鳴った。
「やっぱさすがだな、合鍵屋は」ほくそ笑みながら鍵をポケットにしまい、取っ手に手をかけて、扉を開けようとした。
しかし。
「…………あれ？」
扉は開かなかった。取っ手を引くが、動かない。もしかして押したら開くのか、と閃いて身体を押し付けたが、扉は開かなかった。
じゃあ、鍵がおかしいのか？　そう思って鍵を取り出して眺めたが、別段おかしなところは見当たらなかった。
「何でだよ、どうして開かないんだよ」
「だ、誰か！」
驚いて後ろを振り返ると、女が立っていた。慌てた俺は女を押しのけ、一目散に逃げていった。
どうして扉は開かなかったんだ？