「犬谷先輩、ちょっといいですか？」
部室で読書をしている時に、後輩の猫宮がいそいそとやって来た。
「なんだ、猫宮。また手研（手品研究会）のやつらのギャンブルに負けたのか？」
「違いますよお。ちょっと別の相談がありまして……」
「相談？」
「実は今夜、僕を入れての六人で合コンをやることになっているんですけど……。ちょっとこれを見てくれますか？（図１）
「つくえ」と書かれているのが「机」で、数字の部分は「椅子」なんですけど、
ちょっと問題がありまして……」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜図１＞
「どんな？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１　２　３
「みんながそれぞれの要望がありまして、『この椅子に座れなければ、　　　　　　　　　　　つくえ　つくえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
合コンに参加しない！』ってことになりかけてるんです」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　４　５　６
「別に良いじゃないか、合同コンパなんか開かなくたって」
「そっ、そんな！　それは無いですよ、先輩！　合コンは僕の唯一の楽しみなんです。そんな唯一が無くなったら、僕はどうしたらいいんですか！」
「分かった分かった」犬谷は溜め息を吐いて、「とにかく、六人全員の要望を叶えてやれば、良いんだな？」
「はい」
犬谷はもう一度溜め息を吐いて、どうすれば全員の要望を叶えられるか、考えた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　各人の要望

Ａ男「せっかくの合コンなんだから、俺の横と真正面全部に必ず女の子がいるようにしてくれ！」

Ｂ男「そうだな、俺はＥ子さんの真正面か横が良いな」

Ｃ子「ええと、私は、真ん中の席はちょっとやだな……。あと、Ｅ子の隣にいたいな」

Ｄ子「私、タバコを吸うから、窓が近い４、５、６の椅子にしてもらえない？」

Ｅ子「猫宮の隣は勘弁してくれます？　なんか私、彼のこと苦手なんだよね」

猫宮「４の椅子に座りたいですね。直ぐに席を立てるから。それと、Ｄ子さんの横は嫌です。タバコが嫌いなので」