あるビル荒らし事件のお話です。

被害に遭ったKビルは昭和40年頃に建てられた地下1階・地上5階の古い雑居ビルで
1階と地下はこのKビルを所有する会社が自家使用、2階から5階まではテナントさんがいらっしゃいます。

このKビルは、警備と清掃全般に関して某警備会社と契約していました。
清掃は通いの清掃人による毎日の早朝清掃と月1回の占用室定期清掃。
警備はいわゆる無人の遠隔機械警備システムで、各占用室の出入口ドアには通常の錠の他に警備錠が設置されており、ドアを施錠することはできませんが、その占用室の警備スイッチになっています。
つまり問題なくドアを開けるには、まず警備錠キーで警備を解除してから通常のキーでドアの鍵を開けるという、ふたつの作業が必要になります。
機械警備は、警備状態でドアが開いたり占用室内のセンサーがネズミ大以上の動作を感知すると発報し
警備会社コントロールセンターの警備員が緊急出動するというものでした。

ところがある祝日に、完璧と思われたこのビルが荒らしに遭い、現金小切手や手形など根こそぎ盗まれてしまいました。

犯行に使用されたのは地下清掃用具室に備え付けてあったスペアキーでした。

なんとその警備会社は清掃人のために地下清掃用具室に全てのスペアキーを隠していて、占用室のキーを持たない通いの清掃人が防犯センサーに感知されることなく作業にかかれるように配慮されていたのです。

廊下を含む共用部分と清掃用具室には防犯センサーが設置されていませんでしたし、1階占用室内の階段を使わなければ降りれないはずの地下清掃用具室には、普段は停止しないエレベーターを専用キーで地下に停止させることでアプローチできるようになっていたのです。
犯行グループはこの抜け道を利用しました。
エレベータ内のスイッチボックスの錠を壊すだけでKビル全てに侵入できたのです。

さて、Kビルの所有会社は警備会社に対し損害賠償を求めて裁判（調停）をおこしました。
当然として警備会社内部、または在籍したことのある人間が関与していると考えられましたし、警備会社の管理責任は厳しく追及されました。

ところが、ある一点について警備会社は反論したのです。

【スペアキーが利用されたのではなく巧妙なピッキングによる犯行である】

下記は警備会社から証拠として提出されたコントロールセンターの記録です。
※警備錠の状態は24時間監視されています

7：15　5F　解錠
7：19　5F　施錠
7：20　4F　解錠
7：23　4F　施錠
7：24　3F　解錠
7：25　3F　施錠
7：25　2F　解錠
7：27　2F　施錠
7：29　1F　解錠
7：33　1F　施錠
7：33　5F　解錠
8：20　5F　施錠
8：35　4F　解錠
9：16　4F　施錠
9：17　3F　解錠
10：11　3F　施錠
10：11　2F　解錠
10：58　2F　施錠
11：02　1F　解錠
11：29　1F　施錠

翌朝出勤してきた4Fテナント会社社員が事件の第一発見者なのですが、実はその場の警察の捜査で、清掃用具室のスペアキーが5Fの占用室内のゴミ箱の中から発見されたのです。

警備会社の指摘はつまりこうです。
『 8：20に5F占用室が施錠された後に行われた解錠は彼のキーであろうはずはなく、高度なピッキング技術によるものである。
だからキーの管理に問題はあったにせよ、盗難事件に直接の因果関係はないはずだ。 』

裁判（調停）ではこの指摘が重要視されました。
そして裁判官から理にかなった反論を求められ、K ビル所有者は応えに窮してしまいました。

しかし K ビル所有者も各テナントさんから損害賠償を求められており、ここで引き下がる訳にはいかないのです。

どなたか K ビル所有者の代わりにうまく反論してあげてください。(^з^)-☆チュッ！