登場人物：　朱美（アケミ）　／　由利（ユリ）　／　琴乃（コトノ）


青森県の弘前市、ゴールデンウィークになっても桜がみられる祭は人で賑わっていた。
朱美と由利と琴乃の３人は桜と名物を楽しんだ夜、市内の民宿で寝る準備をしていた。

「今までベッドがほとんどだったから、布団だと修学旅行を思い出すなー」
３人で最低年１回は旅行をしている。朱美がそう言いながら高校時代を思い出した。３人は現在職がバラバラだが、高校からの親友である。
「修学旅行といえばあの事件よね」
由利の言葉に朱美はハッとした。どうやら思い出したくない過去を掘り起こしてしまったみたいだ。
「え、私の出番？」
呼ばれてもいない確信犯・琴乃が口を出す。
要は、ホテルで寝るときに琴乃の怖い話で朱美は寝られなくなり、担任の見回りに驚いて朱美が叫んでしまった。その後は部屋のメンバー全員が起こされ、怒られ、反省文を書かされの大変な目にあったのだ。
「いやいや、あんた呼んでないから」
「えーとね、これは作り話じゃないからね。実際に起こる話だから……」
制止する朱美をよそに琴乃が話し出す。

◆　　　　　　　　　　◆　　　　　　　　　　◆

現在の時刻：２３時３０分。
そうね…今からにしようかな。私たちのレンタカーでこれから海に行きたいと思います。
市内を通る国道から（国道の）終わりまで北上して、さらに一般道で近くの海を目指します。
途中、お腹が鳴ったのでパンを買いにコンビニへ寄りました。
次に、腹痛のために薬局へ寄って薬を買いました。
さらに走って、喉が渇いたので別のコンビニへ寄ってコーヒーを買いました。
そしてそのままずっと国道沿いに北上して終点の海を目指します。
これは仮にだけど、海まで１００ｋｍの道だとして、平均時速４０ｋｍで走ったとする。途中のコンビニ、薬局へ寄ってそれぞれ１０分ずつロスしたとしたらどれくらいで目的地の海につくと思う？
はい、朱美。……２時間半＋３０分で合計『３時間』？
えーとね、不正解。

◆　　　　　　　　　　◆　　　　　　　　　　◆

それを聞いた朱美はブーイングだ。
「何でよ！どう考えたって計算したら３時間になるじゃない！」
「馬鹿ね、朱美は。こんな単純な問題出すわけがないじゃない。答えは…朝方。だって、こんな田舎でこんな夜中に薬局がやっているわけないでしょ。だから店の開店まで待った。違う？」
自信満々の由利。しかし琴乃の答えは「違います」だった。
「じゃあ、平均時速ってのがミソね。きっとどこかで速度オーバーで警察に捕まったとかでしょ？」
続けての由利の答えに琴乃は「違います」と言うのだった。
「ちなみにね、答えは『永遠に到着しない』です」
琴乃のゆっくりと話す正解に朱美はちょっと声が震える。
「ちょ、ちょっと。永遠ってそれ変でしょ。道さえ繋がっていればいつか着くはずなんだから。まさか途中で車が…とか変な答えじゃないでしょうね！？」
「さっき言った通り、車は確かに海を目指したの。だけど途中で残念な事が起きたの。それは…明日になったらわかるよ。ウフフ…じゃあね、お休み」

ちょっと待ってほしい。
『レンタカーの運転手は琴乃』『永遠に到着しない』『残念な事が起きた』『明日になったらわかる』
これは明日もしかすると……朱美から引きつった笑顔が消えた。


【問題】
翌日、結果的に３人は新聞に載ることなく無事に（！？）海へ行くことができた。
しかし、前日琴乃の話は間違いでもなかった。何故か？
（説明が難しければ、『永遠に到着しない、理由だけ』でも結構です）


※『１０』へヒントを掲載しました。