童話ミステリー、「〜○○売りの少女〜」の続編です。http://quiz-tairiku.com/q.cgi?mode=view&no=12327波間に、歌声が響いていた。
岩がちな入り江の、小さな岩の上で、少女が歌っている。
少女の姿は、上半分は裸。下半分は… 魚のそれだった。
少し離れた岩場の上では、一人の少年が彼女の歌に聞き惚れていた。
「本当に、綺麗な歌声だなぁ…。ねぇ、近くに行ってもいい?」
「…ありがとう。でも、だめよ。人魚と人間は近付いちゃいけないの。本当は、こうやって会う事も禁じられてるんだから…」
「そんなの、いいじゃない。ね、そっちへ行くよ?」
「ダメ!それ以上近寄ったら、もう二度と会わないから!」
「…ゴメン。でも、近くで聞きたくて…」
「ううん、私の方こそ、大きい声だしてごめんなさい」
「…ねぇ、かわりに一つお願い聞いてくれる?ボクの母さんのことだけど…もう、あまり長くないみたいなんだ。
死ぬ前に一度、キミの歌声を聴かせてあげたくって。よかったら明日、入り江の奥の浅瀬まで来てくれないかな?」
「前に言ってた、病気のお母さんね?特効薬が見つかったって聞いたけど…」
「今のままじゃ、それも間に合わなさそうなんだ。お願いだよ!」
「… 考えさせて。人魚が人里に行くなんて、許されないことだもの…」
「でも、あなたのことは、好きよ。あなたが、本当に私を愛してくれれば…」 そう言って、少女は岩場から海に飛び込んだ。
「待って!…キミのこと、好きだよ!愛してる!」 少年の声は、届いたのか。少女は、そのまま海の中へ潜っていった。
少女が向かったのは、海の底の、人魚の国。 …少女が帰りつくと、姉たちが待ち構えていた。
「あなた、また人間のところに行ってたのね!もう庇いきれないわよ!」
「それどころか、人間に捕まって、見世物にされちゃうわよ!」
「人間、おお、恐ろしい!とって食われちゃうわよ!」
「彼は、そんなんじゃないわ!母親思いの、優しい子よ…!」
「あっ、待ちなさい!今度人間にあったら、掟破りで殺されるわよ!」
「わかってるわ!…人魚と人間が会うのがいけないんでしょ!?」 (岬に住む、海の魔女なら、きっと私の願いを叶えてくれる…)
次に少女が向かったのは、岬の下の、海底洞窟。
そこは、魔女の家へと繋がっていた。洞窟内に作られた部屋は赤い蝋燭で照らされ、影が幽鬼のように揺れている。
少女の来訪を知っていたのか、入口で魔女が待ち構えていた。
不思議な力により、齢百年を超える老人と噂されている魔女…少女を見て、何を考えているのか。フードを深く被っており、その表情は見えない。
「おお。姫君かえ。お前の美しい歌声のうわさは、聞いておるよ」
「魔女様、お願いがあるの。…私を、人間にして!」
「ほう?人間になぞ、なりたいとな。
不可能ではないが…なって、どうする?」
「…好きな人がいるの。その人と、一緒になりたい…」
「ハッ!人間なぞ、信用できぬというのに。物好きな娘よ…」
「そうだね、その願い、かなえてやろう。だが、代価として、お前の美しい歌声をもらおうか。」
「えっ…! それは…」
「何も、
おまえの肉声すべてを奪おうってわけじゃない。歌の能力だけ、私にくれれば結構さ」
(彼のお母さんに、歌を聞かせたかったのに…。
…ううん、それより、彼のそばにいるべきだわ。歌えなくても、精一杯お母様の看病してあげるべきよ)
「…わかった。歌声だけでいいのね?」
「代価はね。もう一つ、注意すべきことがある。人間になったら、
海に帰ってきちゃいけない。
海に沈んだら、泡になって死んでしまうからね」
「…それでもいい。私、人間になりたい」
… そして彼女は、人間になる薬を手に入れた。 あとは、彼の言った入り江の近くで薬を飲めば…
日が沈みかけ、一番星が瞬くころ、彼女は薬を飲んで陸へ上がった。
(あの子、待ってるかな…お母さんも一緒かしら?少し緊張してきたなぁ)
少年は、入り江の近くに立っていた。少女を見て、驚きの表情を見せる。
「キミ…!ええっ!どうしたの!その足…!?」
「人間になったの。代わりに歌う事はできなくなっちゃったけど…
でも、ずっと一緒にいるから!お母さんのお世話もするから!ね?」
「そんな…そんな!それじゃ、意味がないよ!元に戻ってよ!」
(えっ…?どうして?歌がないとだめなの?)
「海に入れば戻るの?ねぇ?ねぇ!」
少年の剣幕に、少女は恐れを感じた。歩きなれない足元がふらつく。 二人はもつれ合い、海に落ちた。
「ダメ!海に入ったら私、溶けてなくなっちゃうの!あぁ、何か絡みついてる…お願い、助けて!」
「なんだって…!?わかった、じゃあ、今すぐ…!」
少女を助けようとしてか、少年は懐から何かを取りだした。
だが、もつれ合ううちに、少女の足が溶け始めた。恐怖を感じた彼女は、必死になってもがく。
その時。何かのはずみか。少年が持っていた物が、少年の胸に突き刺さった。 「あっ…?」
それは短剣だった。少女の足に絡みついた物を切ろうとしていたのだろうか…。
海の水が、赤く染まる。少女は、もう半ば溶けてしまっていた。
(どうしてこうなったんだろう。好きだったのは、私の事じゃなくて、私の…?)
(それはそれで、嬉しいけど…やっぱり、ちょっと寂しいな…)
悲しげな少女の顔。
少年はそれを見て、泣きそうな、済まさそうな顔をする。
そして、消えようとする彼女の唇に、そっと、キスをした。… 結局、少年は、少女の何が欲しかったのでしょうか。 漢字一文字で答えて下さい。
また、それは結局どうなったでしょうか? それを端的に表す言葉を、漢字かな交りで5文字で答えて下さい。
岬の上に、魔女が立っていた。 「…愚かな。人間など信じるから、そういう事になる」
言葉は厳しいが、その中にも憐れむような響きがあったのは、
夢破れた自分の境遇と重ね合せたせいであろうか。夕暮れ時… 家へ戻る漁師の船や、港を目指す帆船が沖に見える。
岬の周りは風が吹き荒び、暗礁ひしめく船の難所だ。
風にフードが煽られ、魔女の顔があらわになった。 若い女の顔だった。百年以上生きているようには見えない。
「人間に捕まったら見世物にされる。とって食われる。すべて真実よ…人間と人魚が、交われようはずがない」
魔女は岬の上に赤い蝋燭を立てる。人間の漁師に拾われ、育てられ、そして裏切られた証の蝋燭を。
岬の上から、魔女は朗々と歌い上げる。
その歌声は、少女が持っていた美しい歌声そのものだった…。
こぎゆく舟びと歌に憧れ 岩根もみやらず仰げばやがて
浪間に沈むるひとも舟も くすしき魔力に魂も迷う
近くを通りかかった漁師の船。遠くに見えた、大型帆船。すべて、歌の魔力に引き寄せられ、岬へと向かってくる。
海流が渦巻き、暗礁のひしめく海の墓場へと…。
夕暮れ時…それはまさに、逢魔が時であった。魔女は、なぜ少女の歌声を奪ったのでしょうか?
人魚の伝説、男を魅了する歌、海の岬、船…それらを総合して導き出される言葉を、漢字2文字でお答えください。
なお、答えに使う言葉は、文章から1文字ずつ、そのままの形で抜出し可能です。例:答えが「心」「灰燼と化す」「復讐」なら、「心」「灰」「燼」「と」「化」「す」「復」「讐」が文中にバラバラに隠れており、
それを組み合わせて答えを作る、という感じです。
☆1: 少年のほしかったもの (漢字1文字)
☆2: ほしかったものがどうなったか (漢字かな混じり5文字)
☆3: ☆1によってもたらされるはずだったこと (漢字4文字)
☆4: 魔女の目的 (漢字2文字)
☆5:おまけ 少年が最後に取った行動を5文字で表すと?
知識問題です。お暇があったら挑戦下さい。 解A: 岬の魔女は、伝説では人魚の姿のほか、ある生き物の姿を持っていると伝えられています。その生き物とは?
解B: 魔女の名前を、伝説から予想してお答え下さい。
(複数回答が予想されますが、かってに君はフランス語っぽい名前で登録。あるアニメに出てきます)
解C: 泡へと消えた人魚姫。逆に、泡から生まれた神は?(カタカナ7文字)
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