「おおお！すごいぞ牧人！」
僕は広がる草原を見て思わず大声を上げてしまった。牧人は白い目で僕を見てきた。
「何を言ってるんだ伊藤。牧場なんだからこの広さは当たり前だろ。」
　自己紹介を忘れていたので、少ししておこう。僕は伊藤高広。私立探偵をしている渡辺牧人に連れられ、今日は探偵の仕事で牧場に呼ばれた。言ってみれば、僕は牧人の付き添いなのだ。僕たちはとりあえず調査のため放牧用の草原に来た。
「ほら見ろよ。山菜だって小さいけど結構あるぞ。ワラビにゼンマイにナズナにセリ、コンフリーに・・・。」
僕は山菜料理が好きなので、山菜にはちょっとばかし詳しいのだ。すると、牧人はくるりと振り向くと僕のそばに寄ってきて、コンフリーをじっくりと見た。
「・・・伊藤、これはジギタリスだ。絶対に採って食うなよ。」
「ジギタリス？」
「ああ。ジギタリスは毒性が非常に強い草だ。これをお前みたいにコンフリーと間違えて食べて死ぬやつが多いんだ。」
・・・そうだったのか。僕は牧人の知識に脱帽していた。
　「どうですか？何かわかりましたか？」
この牧場の主の川上英二さんが尋ねてきた。ここで、僕たちがここに呼ばれた理由を話そう。実は、この牧場の牛に原因不明のがんが７月ごろに毎年起こり、数匹の牛が死ぬというのだ。
「なぜか、牛だけにいろんな種類のがんが起こるんですよ。」
そう川上さんは言っていた。しかも、他の月にはほとんどがんは起こらないのだそうだ。
　「どうしてなのかな・・・？」
牧人はかなり苦悩していたが、僕はなんとなくわかった気がする。とりあえず提案してみた。
「あのジギタリスが原因じゃないのか？」
そう。７月だけに起こる原因は何なのかわからないが、毒草であるジギタリスが原因なら説明がつきそうな気がしたのだ。しかし・・・。
「ばか！」
牧人の一言で僕の意見は一蹴された。
「ジギタリスは心臓をおかしくする毒草なんだよ。その効果を利用して、微量を薬にして強心剤に利用したりする。そんな毒草はがんを引き起こさねえよ。」
「そうか。じゃあ何が原因なんだ？」
僕は悔しくて牧人に尋ねた。すると牧人は川上さんに向けてこう言った。
「安心してください。これはよくある事例なので、すぐに治すことができますよ。今は春ですので、それに向けてしなければいけないことを教えましょう。」

さて、牧人は何が牛のがんの原因になっていると推理したのだろうか・・・？読者の皆さんに推理してほしい！