屋敷を出た桐生は堤を見据える。
「この事件、お前にはショックなものになるぞ。」
「どういう事ですか？」
「犯人は遠野さんだ。」
「何故ですか？検死結果も聞いてないのにどうしてそんな事を。」
「遠野さんの行動におかしな点が一つある。それは遠野さんが嘘をついている証だ。どうしてそんな嘘をつく必要があるか？それは遠野さんが犯人だからだ。」

[暗転]
堤、時間が止まっている事を確認し一礼。
堤：「クイズ大陸の皆様、初めまして。捜査一課の堤と申します。こちらには名探偵がお揃いだという事で、皆様のお力を貸して頂きたく参上致しました。」
桐生登場。
桐生：「何やってんだ？堤。」
堤：「うわぁ！桐生さん！」
桐生、閲覧者に一礼。
桐生：「どうも皆様初めまして。捜査一課の桐生と申します。この度は出題者の駄長文に
お付き合い頂きありがとうございます。」
堤：「桐生さん、どうして遠野先生が犯人なんですか！？」
桐生：「遠野さんは嘘をついている事が明らかだ。信じたくないのはわからんでもないが、事実をよく見るんだ。」
堤：「取り敢えず検死結果と鑑識課の報告を聞いて下さいよ。考えが変わるかもしれませんし。」
桐生：「わかったわかった。聞いた所で確信が深まるだけだと思うがな。」
堤：「死亡推定時刻は昨夜２２時から２４時の間、死因は心臓を刺された事に起因する心筋梗塞です。動かされた形跡はなくあの部屋で殺されたと見て間違いないようです。心臓を刃渡り２０センチ以上の細い刃物で刺されていて、傷は被害者の右側から心臓を刺し背中まで貫通していました。投げ込まれた石や部屋の棚等は手袋をはめて触れた痕跡があったとの事です。裏庭に２人分の足跡が屋敷の塀から被害者の部屋の下まで残っていて、部屋からも靴跡が発見されています。それから、被害者の掌に何かを握った痕が残っていたそうです。何かの模様のようで「梅の花に見える」と検視官が言っていました。」
桐生：「遠野さんは梅が好きなのかな。屋敷の庭にも梅が沢山あったし、玄関や応接室にも梅が活けられていた。お前が持とうとして怒られた遠野さんの杖にも梅の花が彫られていたぞ。」
堤：「そういえばそうですね…。あと、被害者のズボンのポケットから毒物の入った袋と生命保険会社の人物の名刺が見つかりました。この会社に確認した所、被害者は自分を受取人にして遠野先生に生命保険をかけていたとの事です。袋からは被害者と遠野先生の指紋が検出されたそうです。」
桐生：「なるほどな。直接の動機はそこか。」
堤：「桐生さん…。」
桐生：「間違いない、犯人は遠野さんだ。酒井さんが協力して外部犯をでっちあげたんだろう。屋敷に戻って遠野さんに確認する。皆様、堤と出題者をよろしくお願いします。」
桐生、一礼して退場。
堤：「僕にはわかりません。わかりたくない、と言った方が正しいのかもしれませんが。皆様、どうして桐生さんは遠野さんが犯人だと断定するのか、皆様のお力を貸して下さい。」
堤、深々と一礼し退場。
[暗転]

さて、犯人は遠野で間違いありません。では何故桐生はそれを見破ったのか。桐生の言う「遠野のおかしな行動と嘘」とは何でしょうか？
解った方は堤君に囁いてあげて下さい。

久々の推理クイズ投稿です。なんとか２部に纏まりました 長くて読みづらいな…見てくれる方いるのかな
問題文長いですがよろしくお願い致します。

こんにちは
私はまだ、たった一人で休日出勤中です

さっそく、問題文を出力しました（こうすればPCで目が痛くならないんです♪どこでも読めるし）

というわけで･･･先に仕事片付けます

どうでしょうか？

ヒントをサービスし過ぎているような…。
☆☆を信じてストレートに答えてみました。

とりあえず・・・^^
ちょっと囁きが長くなっちゃいました


それにしても、このような文をよく作りましたね
尊敬しますよ♪

ヒロシ「先生ぇ〜…どうよ、分かった？」

太傅「一応、囁いておきましたよ」

ヒロシ「たいふも焦ってるだろうな〜。良い長文問題を出す人が増えてきてさ〜」

ギクッ…

では、まず凶器の行方を・・・

う〜ん、『発想を逆転』ですか･･･しばらく考えてみます

月光さん新作発表おめでとうございます。Yossyさんのスレでも触れましたが、私は中学生の頃に演劇部でして、刑一と言う刑事を演じた翌年は……待て！次号！！

長文での出題お疲れ様でした。
片足が不自由でも頑張れば1人で階段上れそうだなと思ったんですがどうでしょう

月光さん、始めまして。答え，もしかしてこれかな？囁き長いですけど勘弁してください。もしよろしければ、僕の問題解いて見てください。

こんばんは

最近忙しかったので、ピークが過ぎてからの長文問題でよかったです
しかもスラスラ読めましたよ

囁きに関しては、こういう囁きも悪くはないのかなぁと思いまして…。

きました。が、全く分かりません。推理力は全くなくて・・・(
常連さんは違いますね・・。

月光さん、こんな長文の問題が作れるなんて、尊敬です。
もっとといて推理力上げないと。

こんばんわ　
久しぶりにゆっくりと来てみましたら大作を出されていたのですね。

一読させていただきましたが「おかしな行動と嘘」はこれかな？と思うものが有りましたが
その前に確認しておきたいことが・・・（問題には殆ど関係の無い所ですが）

囁きには確認したい事項を書いておきます。（もしかしたらヒントになるといけないので）
問題の性質上御回答は無くてもかまいません。

それではもう一度ゆっくり読ませていただきます。

遠まわしに解答を囁く癖が付きそうです (もう遅いかな)

素敵な長文、読んでいてドキドキしましたー！
うちの子達と違ってカッコイイよくて…

囁いてみましたが、見当違いなことのような…。
ご指摘宜しくお願いします！！

囁きに対し御回答有難うございます。

では長々と囁いておきます。（殆どは関係無い事ですが）
ただこういった問題で矛盾点などが出ないように作るのはなかなか難しいと思います。
（私も作った文章の１０倍以上は調べたりして苦労していますがそれでも・・・）
長文問題を作られるかたのご苦労はよく判ります。

さて後は解説を期待して潜行させていただきます。（何時再浮上するか判りませんが）

素直に間違ってましたが、これであっているのかの自信もないところです（汗）
最初の挙げたおかしな行動なんですが、うちの身内はそうなものなんで（謎）

長文の推理を破綻することなく書くとなると・・・。尊敬いたしますです。

＞同じように書いた方
ひょっとしてＪＫさんでしょうか？
実は、私の知人からもそう聞いたことが・・・

もしかして……実は私の演じた人物もこう言う要素がありまして。

私以外にも同じような解答の方がいるのですね…。
でも、意図されたおかしな行動の方が目立ちますし！
私の云った事は、これはこれで一つの可能性ということで

解答編も楽しみにしてます！！

推理問題でのアホ回答がだんだん露見しつつあることに焦りを感じています
１つだけ囁いてみますけど、また迷走していないか不安…

・・・やっと>>2で打ち出したモノを読み終えました！！・・・遅すぎ！！！

・・・まぁ、私の洞察力は、こんなものです･･･

桐生：「何か舞台裏が騒がしいな。」
堤：「この間から出題者が解決編の原稿読み返しながら慌ててるんですよ。」
桐生：「全く、大丈夫かよ…。」
月光、堤を手招き。
堤：「はい？何ですか？」
月光：「…（かくかくしかじかヒソヒソ）…。」
堤：「分かりました、伝えておきます。」
月光、脱兎のごとく退場。
桐生：「あいつ何だって？」
堤：「はい、『ミスやらかしてるけど謎解きのメインとなってる部分だし、回答に合わせて解決編を後から書き直すのも何だからこのまま上演する』との事です。」
桐生：「『ミスを修正出来ない』って素直に言やぁいいのに。まぁ、これはこれで説得力はなくはないか…ミスが何なのかを知らなければな。」
堤：「そうですね…。出題者の意図と同じ回答をしてらっしゃる方もいらっしゃいますし、大丈夫だといいんですが。」
桐生：「やれやれ。下調べは抜かりなく、だな。」
堤：「そうですね。」
堤、閲覧者に向き直る。
堤：「さて、見苦しい所をお見せしてしまって申し訳ないです。解決編上演までにはまだ時間がございます。気になった事だけでも、囁いてみて下さい。」

東野圭吾さんの「どちらかが彼女を殺した」（だったかな？）を思い出しました。

文章もお上手であやかりたいものです。

長編はネタが一個あるのですがどうもうまく形になりません。
月光さんのように上手くまとめて出題したいものです。


＞酒場ねこさん
根気の無い私は速攻で袋綴じ破いてました。（爆）
一回もちゃんと考えられた事無いんですよねえ・・・
読む前は「絶対当ててやる！」とか思うんですが、100ページ位でもう雲散霧消。（ｵｲ

件の小説ですが、両方ともフェアに書こう書こうとしてて、東野さんのストーリーテラーとしての良さがちょっと薄れたかな？という所が少し残念でした。
それでもその辺の物よりよっぽど面白いんですけどね。

＞東野圭吾さんの「どちらかが彼女を殺した」（だったかな？）を思い出しました。

妹を殺したのが、容疑者二人のどちらか回答を示さない（ヒントで暗示はしている）作品で、同じく結末を示さない「私が彼を殺した」と並んで面白かったですね。

おぉ
東野圭吾さん、日本のミステリ作家で私が最も敬愛する作家さんです
「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」どちらも速攻で袋とじを破いてしまいました
「ある閉ざされた雪の山荘で」「仮面山荘殺人事件」辺りが好きです

結構ミステリ談義をしても盛り上がりそうですね。
私はベタですが、綾辻行人さんと有栖川有栖さんが好きです。
二階堂黎人さんと京極夏彦さんも好きですねえ。


今は歌野晶午さんの話題作「葉桜の季節に君を想うということ」が文庫で出たので買ってみました。
デビュー作の「長い家の殺人」とだいぶ作風が変わってる事に驚きつつ、のんびり読んでいます。

東野さん、歌野さん、綾辻さん、我孫子さん、森博さん、高田崇史さん…現代ミステリは好きです私…でも、読むだけな奴です
（あ・でも、「どちらかが…」「私が彼を…」の犯人はサスガに･･･ ）

しかし、読みはこの程度

↓歌野さん･･･私的には読みやすかったですが なかなか新世界にチャレンジ出来ない今の私･･･

綾辻さん、有栖川さん、我孫子さん、森さん…大好きな作家さんの名前が沢山
京極さんは中学生くらいの時に読んで難しくて挫折した記憶があります 再チャレンジしたいですね

二階堂さん、歌野さん、高田さんは「読んでみたい」と思いつつどれから読もうか思案中です。お勧めはどれですか？

後は柄刀一さんも好きです

綾辻さん、有栖川さんというと、テレビの安楽椅子探偵シリーズが・・・。深夜でしたし、細かいところに伏線（というか決定的なヒントも）が張ってあるので、眠い目をこすりながら見てました。

私は、現代では東野さんと森さんですかね。東野さんはほぼ制覇しましたので、現在森さんに着手しております。

＞oimさん
歌野さん読みやすいですか。今度チャレンジしてみます
私もなかなか新しい世界には手を出せないですねぇ。

＞酒場ねこさん
私も東野さんはほぼ読みました。ミステリ、というか事件物？でないやつ（「秘密」など）はまだですが。
森さん最近読み始めました。「全てがＦになる」を読んで理系音痴な私はただただ「凄い 」の連発でした
安楽椅子探偵シリーズ見た事あります 謎と睡魔との戦いでしたね〜。

僕も有栖川さんと綾辻さん、大ファンです。（火村シリーズ＆館シリーズ）安楽イス探偵シリーズはまだ見てないんだけど深夜にやってるんだ。

館シリーズは国内ミステリファンとしては外せないですね
「黒猫館の殺人」が一番好きでした。
火村シリーズもいいですね〜。
火村とアリスのやりとりが絶妙です

安楽椅子探偵シリーズはこのお２人がシナリオを手掛けた推理ドラマで、
問題編と解決編に分けて放送された視聴者参加型ドラマです
年１回位のペースで放送されてたのかな？
今はやってないようですが過去の放送がDVD化されているみたいです

私は少し皆さんとは違うかも
乙一さんの｢GOTH リストカット事件｣等…乙一さんの作品は殆ど読みましたが、推理物では無いものが多数。

あとは恩田陸さんが多いですかね？推理物ではありませんが｢Q&A｣等…。

外国のメジャーな推理小説は読んでいますが、国内の推理小説はまだですね〜。

本問から脱線してすいません。

むう。遠ざかってますか。

「役者失格」ということは「左利きのふりをしている」か「右足を怪我しているふりをしている」のどちらかが不自然になっている、という事ですよね。

左利きになったつもりや右足を怪我しているつもりで我が家の段差を上がってみたりしてますが、（…傍から見ると変人ですね。 ）イマイチイメージが湧かない・・・


歌野さんの書籍では「放浪探偵と七つの殺人」がおすすめです。
本格短編推理クイズになっています。難易度も比較的易しめ（といっても私には難しいですが。）ですし。

安楽椅子探偵のDVD買いたいけど…高い。 ←「〜の聖夜」の問題編だけ見て解答編を見てない人。
でも買ってしまおうかなあ・・・（悩）

＞ダウディさん
脱線大歓迎ですよ
解決編上演までの休憩時間を皆様でお楽しみ頂けたらと思ってます
乙一さんも読んでみたい作家さんリストに入ってます
恩田睦さんは「夜のピクニック」読みました。惹き込まれましたね〜。
海外ミステリではクリスティ、クイーン、辺りが外せないでしょうか。
読みたいリストにはディスクン・カーが入っています。

＞ひでぽんさん
お勧め作品挙げて頂きありがとうございます
「放浪探偵と七つの殺人」ですね。メモメモ
「安楽椅子探偵」のDVD、私も買おうかどうしようか悩み中です。
…買う方に傾いてますが

堤：「さて、開演から10日が過ぎましたが、まだお考え中の方はいらっしゃるでしょうか？或いは「早く解決編を！」という方はいらっしゃいますか？解決編上演日程をそろそろ決めさせて頂きますのでよろしくお願い致します。」

待って〜、といいたい所ですが、迷宮に入ってしまったようですし、ヒントも出しにくそうな問題でしょうから、先に進んでくださいませ…

堤：「ひでぽんさん、ありがとうございます。では明日の夜、解決編を上演致します。それまでごゆるりとお寛ぎ下さい。」

こんばんはっ ・・今日は何とか、午前様は免れた〜〜

折角の良問、あまり参加できずにゴメンなさい
解答編、楽しみにしてます

[解決編･開幕]
桐生は屋敷に戻ると酒井に声をかけた。
「お伺いしたい事が出てきたんですが、遠野さんはどちらにいらっしゃいますか？」
「先生でしたら書斎にいらっしゃいます。こちらです。」
酒井の案内で桐生達は遠野の書斎へ向かう。
「度々申し訳ありません、またお伺いしたい事が出てきまして。」
「何ですかな？」
「圭介さんが生命保険会社の人物と会っていた事がわかりました。それと毒物の入った袋を所持していたんです。ご存知でしたか？」
「さぁ、知りませんな。借金が返せなくて死のうとでも考えたのではないですかね。」
「…失礼ですがお話を聞く限り圭介さんはそのような手段を取る方とは思えません。それに保険金は圭介さんでなく遠野さん、あなたにかけられていました。受取人はもちろん圭介さんです。」
「何が言いたいんですかな？」
桐生は険しい表情の遠野を見据える。
「毒物を入手した圭介さんは遠野さんを殺害して保険金を得ようとしたのではないでしょうか？遠野さんは圭介さんを問い詰め口論になり、揉み合う内に殺害してしまった。」
「憶測でものを言うのは止めてくれないかね。｣
「袋からは遠野さんの指紋も検出されています。本当にご存知ないのですか？」
「何だかわからずに触ったものをあいつがまた持っていたのだろう。そんな事で犯人にされてはたまらんな。」
「もちろんこれでは証拠になりません。」
桐生は落ち着いた表情で言葉を続ける。
「圭介さんを殺害してしまったあなたは裏庭から窓を割り侵入者の犯行に見せかけようとした。」
「桐生さん、足跡は2人分ありましたが…。」
「ここには2人の人物がいる。酒井さんも協力したんだろう。」
遠野に視線を戻し桐生は言葉を続ける。
「部屋を荒らして金品を隠し外部犯の犯行に見せかけた後は酒井さんが発見したとして通報すればいい。自分は事故で足が悪いと言えば捜査の目は外部犯に向くと考えられたのでしょう。」
「憶測に過ぎん。私は2階へ上がるのに人の手を借りねばならん。そんな人間がどうやって2階にいた圭介を殺せると言うんだ。」
「私です！私がやったんです！」
それまで黙っていた酒井が涙を滲ませ叫ぶ。
「仰る通り、圭介さんは先生を殺して保険金を得ようとしていたんです。これまでにもお金をせびって断られては先生に暴言を吐いて…怖い人達は押しかけて来るし許せなかったんです！」
ハンカチを取り出し、涙を拭う酒井に桐生はゆっくり首を振った。
「庇いたいお気持ちはわかりますが、酒井さんは犯人ではありません。検死の結果、圭介さんの傷は右側から心臓を貫いている事がわかりました。犯人は左利きの可能性が高い。酒井さんは右利きですね。」
ハンカチを握る酒井の右手を指し桐生は言葉を続ける。
「それに現場を見て頂いた時、あなたは遠野さんを支えて階段を上がるのに苦労されていました。そんな酒井さんに大柄な圭介さんと格闘した末に刺し殺す事は難しいでしょう。」
「ここには犯人はおらん。早く捜査にかかった方がいいのでは？」
桐生はポケットから1枚の写真を取り出す。被害者の掌の写真をFAXさせたものだ。
「これは圭介さんの手です。強く何かを握ってその模様が痕に残ってしまったものです。この模様、遠野さんの杖の梅の花の彫刻とそっくりなんです。何故、遠野さんの杖の模様が圭介さんの掌に残っているのでしょう？」
遠野は答えない。
「遠野さん、堤が杖に触れようとした時激しく拒絶されましたね。そして圭介さんの掌に残った痕…恐らくその杖が凶器なのではないですか？」
「杖が凶器って、どういう事ですか？」
「その杖、仕込み杖なのではないでしょうか？」
「仕込み杖？」
「そう、刀を仕込んである杖だ。それを持って圭介さんの部屋へ行き、そして…」
遠野は険しい顔で桐生の言葉を遮る。
「私は足が不自由だと言ったばかりだが？」
「それは演技です。遠野さんはずっと左手に杖を持って歩いていました。応接室でも椅子の左に杖を置いていましたね。事故で負傷されたのは右足です。これは交通課の記録にも残っています。」
「先生は左利きです。桐生さんも聞いたじゃないですか。」
桐生はその言葉が終わるや否や堤の左足を思いっ切り踏みつけた。
「痛っ！何するんですか！？」
「堤は右利きだよな？左足を痛めた時お前はどっちの手に杖を持つ？」
「えっ？あっ…」
遠野は黙って2人のやり取りを聞いている。
「右足は何ともないから習性で左手に杖を持ってしまったのでしょう。堤へサインをお願いしたのは遠野さんの利き手を確認する為でした。」
遠野は黙って桐生の言葉を聞いている。
「遠野さん、足の悪い演技をしている左利きの人物、犯人はあなたです。」
桐生の言葉に遠野は諦めたような笑みを浮かべた。
「悪あがきは止めた方が良さそうですね。」
杖を手に取りそっと引き抜く。鈍く光る刀身が姿をあらわした。
「洗い流してしまいましたが調べればこれがあいつの命を奪った物だとわかるでしょう。」
丁重な手つきで桐生は杖を受け取る。
「先日、酒井さんが圭介の部屋で生命保険会社の人間の名刺を見つけましてな。その後その袋を拾ったのです。嫌な予感がして知り合いの医者に調べてもらうと中身は毒物だとわかりました。保険会社に問い合わせたらあいつが私に保険をかけている事がわかりました。知らぬ間にかけられた生命保険と毒物…。あいつの考えを知った私は昨夜、帰ってきたあいつの部屋に行ったんです。この家から出て行かせよう、もう甘い顔をしてはならんと。」
悲痛な表情で遠野は言葉を続ける。
「その時、息子に命を狙われていると頭に血が上った私は、身を守るべくその仕込み杖を手にしていたのです。冷静になればこんな物を持っていけばどうなるかわかったでしょうに。そしてあいつを問い詰めると私が死ねば保険金と遺産が入ってくると言って襲い掛かってきたのです。そして揉み合う内にそれであいつを刺していました。」
遠野は小さく首を振った。
「愚かな奴です。しかし、私はもっと愚かだ。」
傍らですすり泣く酒井にすまないと告げると、遠野は書斎に活けられた梅の花に目を移す。
「梅は死んだ妻が好きだった花です。この花の彫刻があいつの手に残るとは…空から妻が愚かな事は止めろと言っていたのでしょう。」
遠野は緊張が解けたのか落ち着いた表情で言葉を続ける。
「演技と言うのは難しいですな。事故に遭った事を利用して足の悪い振りを演じれば私に疑いの目が向く事はないだろうと考えましたが、そんな不自然な演技をしていたとは。私は役者としては失格ですな。」
「息子さんを殺害してしまった後です。それが普通ですよ。現実世界で演技などそうそうできるものじゃありません。」
「遠野先生は沢山の人を惹き付ける偉大な作家です。何があってもこの事実は変わりません。」
「先生、お帰りをお待ちしています。」
「ありがとう。」
遠野は桐生に視線を移す。
「さて、では行きましょう。」
ゆっくりと遠野は立ち上がる。差し出された堤の手をそっと辞し、しっかりとした足取りで部屋を後にした。

[劇終]

さて…お気づきの方もいらっしゃると思いますが、舞台裏で私が慌てていた「ミス」とは、桐生が堤の左足を踏んづけて堤に納得させ遠野の嘘を暴くシーンです。
「右足を庇うべきなのに左手に杖を持っている」私が意図した不自然な行動はこれでした。
が、お寄せいただいた情報によりますとこれは間違いだったのです。
「庇う方の足と逆の手に杖を持つ」というのが正しい杖の持ち方だそうです。解決編の修正を試みたのですが、修正すると矛盾が出てしまい、問題文の修正もしなくてはならなくなり、タイトル『役者失格』にも繋げられなくなり…と収拾がつかなくなってしまったので潔く（？）そのまま上演する事に致しました。下調べはしっかりと（反省）

さてもう一つ、被害者の傷についてですが、「左利きの人間が刺したと思われる傷」というのをどう表記したらよいか試行錯誤しましたが上手く行かず…。意図としては「酒井実行犯説」を否定するものでしたがかえって混乱を招いてしまったようです。

さて、ご意見ご感想、「あそこもおかしいぞ！」といったツッコミ等などお聞かせ下さいませ。

お疲れ様でした。
杖を持つ手については
歩き回る時……右手、現場を離れる時……左手（右手に荷物がある）
と表現されていますから、足が悪いのは演技だと読み取る事は可能だと思います。

さて刑一刑事の続きを……
演劇部だった私は、刑事役の翌年、足を怪我した少女の役を演じたのです。
実際は足が悪くないのに悪いと思い込んでワガママ放題の少女でした。
その時は松葉杖を使いましたが、やはり【悪い方と逆側に杖をつく】事をその時知りました。
しばらく忘れていたのですが、皆さんのやりとりを見て
焦点はこの事かな……と思いました。

お疲れ様です
読みやすい文章で楽しめました

私も･･･（むか〜したいふさんのスレにて言った事ありましたが）推理モノ作成・・・・・・・憧れます （向いていませんが）

万一、”その節”があれば、どうか、どうかお付合い下さいませ

これを言うのは三人目ですがお疲れ様です。

長文作成…これからの参考にさせていただきます
遠野は役者失格の前に人間失格ですね…どっかで聞いた様な言葉ですね

パチパチパチ……
桐生警部と堤刑事…シリーズ化されることを期待致します。


若刑事「桐生警部のような方がうちの署にいらっしゃれば…」

太傅「私は飯の食い上げ…とは言いませんが、出番がなくなりますねぇ…君は…クビかな？」

若刑事「や、やめて下さいよ…左遷くらいで留めて置いて下さいよ〜」

ヒロシ「それも大概だぞ…」

アキラ「は、ははは…まぁ…事件が解決してよかったね」

長文、お疲れ様でした！！
舞台裏でもご苦労をおかけしてしまいまして。
私の身内は両足に痛みを伴うので、其の日痛い方によって杖を持ち替えてたりしますが、時と場合。
今回の問題には、演技と見破らせるだけの布石もありますし！
それよりになにより…。

「天石、桐生警部殿にご教授頂いてこい」
「ぼ、僕もですけど、寧ろJKの方を月光さんのところに弟子入りさせるべきかと」
「なら二人ともだな」
「警部もですよ！！」

なんて、うちの子達共々修行したい所存です！今後も楽しみにしております！

＞SUEさん
ありがとうございます〜！
いやはや、思い込みは禁物ですね
堤:「僕は足を踏まれなくても遠野先生の嘘を暴けたんですね」（ジト目）
月光：「あはは… 」
その少女のお話、結末はどうなったんでしょう？

＞oimさん
読みやすかったですか？ありがとうございます♪
oimさんの推理物…是非読んでみたいです

＞ダウディさん
ありがとうございます♪
殺意にまで発展してしまった親子関係…悲しいものです。

＞たいふさん
ありがとうございます シリーズ化出来るよう頑張ります♪
桐生：「俺にも太傅探偵のような相方がほしい…」
堤：「桐生さん、どういう意味ですか？」
桐生：「そのままだ。」
堤：「ひそひそ（…この出題者じゃ太傅探偵のような優れた方は描けませんよ）」
桐生：「それは言えるな。」
月光：「… 」

＞JKさん
弟子入りだなんて…もったいないお言葉ありがとうございます
JKさんの次回作も楽しみにしてます
桐生：「天石刑事は優秀そうだな…。今後の活躍が楽しみだ。」
堤：「桐生さ〜ん…僕は…？」
桐生：「まぁ、頑張れよ。お前のモデルは今泉巡査らしいぞ。」
堤：「そんなぁ…。」


皆様ご参加＆温かいお言葉、本当にありがとうございます

私が右足を捻挫したときは、右手に杖をついていましたよ。右足がほとんどつけない時はこれしかありません。
悪い方の足と反対側に杖をつくのは、悪い方の足が体重のかなりの部分を支える力がある場合でしょう。
よって、「庇う方の足と逆の手に杖を持つ」というのが正しい杖の持ち方と決めつけるのは間違いです。

まあ、そんなことよりも見事な上演に拍手をおくります。お疲れ様〜。

＞Yossyさん
拍手ありがとうございます
＞「庇う方の足と逆の手に杖を持つ」というのが正しい杖の持ち方と決めつけるのは間違いです。
そうなんですか…って事は今回のような「事故で怪我をしてから５年、杖があれば平面は歩ける」状態を装う場合は…う〜ん？？

無事解決されおめでとうございます。
当初から杖を持つ手は気にしていましたが足の状況、癖などから左手で杖を持っても
違和感が無いと思い除外しておりました。
私的には>17　に書きました事が一番の違和感になっております。（解決編を読んでも）
別にこれに関しての説明（特に後半部分）は一切不要ですがこんな事を考えたやつも
居るといった程度で思って頂ければ幸いです。

さて、私も前作に区切りをつけましたので次作の構想でも練ろうかと・・・

おつかれさまでした。無事、解決できておめでとうございます。動機については、やっぱり月光さんの言う通り詰めが甘かったです。我ながら自分が恥ずかしい（笑） それと、長文作成については大変参考になりました。これからも、ぜひ桐生＆堤シリーズ出してくださいね。では、また


p.s…僕の問題は、今ヒント作成中ですので、見てくださいね。

＞SHISHI1さん
ありがとうございます
やはりあの表記では「左利きの人物が刺したと思われる傷」とするには無理がありますね
獅子探偵の活躍も楽しみにしています

＞マサアキさん
参考になりましたでしょうか、嬉しいお言葉ありがとうございます
シリーズ化目指して頑張ります
マサアキさんの問題、ずっと考えてるんですが難しいですね
ヒントを参考に考えてみます

結局どちらで杖をつけばいいのかわからないままでした。
そっかー。怪我自体が嘘でしたか。
怪我はまだあるもの、と思い込んだのが失敗でしたね。完敗に乾杯です。

是非リベンジの機会を！！
（訳：また、面白い問題を見てみたいです。これからもよろしくです。）

＞ひでぽんさん
そうなんです、怪我自体が嘘だったんです
どうも上手いヒントが出せません

是非リベンジお願い致します！！
（訳：また問題作り頑張ります。こちらこそよろしくお願いします！）

キャストもゲストも退場し静まり返った劇場に一人佇む女性の姿。
月光：「ふむ…大入り満員には程遠いけど、予想以上に集まって頂けて良かったぁ。
ミステリ談議も楽しめたし、『シリーズ化を』なんて声も頂けちゃったし、頑張ろっと♪
さて、私もそろそろ行きますか。」
鍵を手に女性はそっと立ち上がると劇場を後にした。

[推理劇場・閉幕]

　　　貼り紙

当演目は無事に全ての公演を終了致しました。
ご参加下さった皆様、ご観覧下さった皆様、本当にありがとうございました。
次回公演は未定となっておりますが、必ず新しい演目を皆様にお披露目致します。
尚、後から当演目をご覧になられた方がいらっしゃいましたら、
ご意見ご感想等こちらにお寄せ頂ければ幸いでございます。
こちらのパスワードは「theater」となっております。

それでは、皆様本当にありがとうございました。

2007.6.15　月光

こんばんは。キチンと参加できずにごめんなさいね 　6.15 oim

＞oimさん
とんでもないです
お忙しい中、顔を出して頂けて嬉しいです 　月光

まだこの頃上陸すらしていなかった者です。
今更ですが全部読みました。大変読みやすかったですよ
今後推理モノを出題する際、参考にさせて頂きます… 　2008.1.20　カノン（元KK）