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密室の如き盗むもの
難易度:★★★  
?紅巾 2016/03/24 16:04
「……いよいよだな」
「そうだね」
 静まり返っていた室内に二人の話し声が響く。何やら企んでいるのか、異様に楽しそうだ。
「しかし、唯一の問題はあいつの目があることだな」
 楽しそうだった声が打って変わって真剣なものになった。
「そこはしっかり盗んでよ」
「だが、一体どうやって」
「そうだなあ」
 盗みをどうやって成功させるかを話し合う二人。暫くの間、二人は悩んでいる様子だったが、一人がパッと何かを閃いたようにすると饒舌に語り出した。
 その内容に納得したのか相手は、
「そうか。ということは簡単に持っていけるな」
「そうそう。だから大丈夫」
 二人は安堵して胸を撫で下ろした。
「よし、これで大丈夫だな。計画の決行は12時でいいんだよな?」
「もちろん。むしろそうでないと」
「分かった。絶対に気付かれないようにして存分に驚かせてやろう」
 その後も二人は会話を続け、保険まで掛けた計画を立てたところで満足して別れたのだった。

 ――その会話が交わされた日の翌日、11時半頃。
 計画のことなど露ほども知らない轟啓太は、友人宅から帰路に就いていた。
「まったく、ついてないなあ」
 帰路にはついてるけど、というしょうもないことを思いながら、啓太は溜息を吐く。これでつくものがさらに一つ増えた。
 今日、啓太は友人である森隆司の自宅で対戦ゲームをして遊んでいたのだが、隆司に外せない急用ができたということで遊び足りないまま解散の流れになったのだ。晩御飯の時間までは目一杯遊ぼうと意気込んでいて母親にもそう伝えていた啓太は、隆司は悪くないと分かっていながらも裏切られたような気持ちになった。
「仕方ない。家でゲームをして遊ぼう」
 いつの間にか自宅の目の前まで来ていた啓太は気を取り直して玄関を潜る。
「ただいま」
 家の奥に向かって挨拶をする。母親がスリッパの音を立てながら近付いてきた。啓太は友人に急用ができたから予定より早く帰ったことを告げる。
 そのとき、玄関の扉が開き父親が姿を見せた。どうやら父親も帰ってきたようだ。
「あれ?それは何?」
 啓太は父親が紙袋を持っていることに気付き、中を覗き込んだ。中には綺麗にラッピングされた箱が入っていた。どう見てもそれはプレゼント用だった。
「もしかして、俺への誕生日プレゼント?」
 啓太は誕生日を翌日に控えており、誕生日プレゼントを父親にリクエストしていた。啓太がリクエストしたプレゼントは、好きなアニメに登場するロボットだ。そのロボットは小さいながらも、パーツの着脱が可能で様々な変形や合体が楽しめることが醍醐味である。
「そうだ。お前の欲しがってたロボットだぞ」
 父親はさも得意気に啓太のリクエスト通りのロボットが入った箱を掲げてみせた。
「だが、誕生日はまだだからこれは物置にしまっておくぞ」
 そう言いながら、父親は物置へと足を運ぶ。啓太は不満を申し立てるために父親についていった。
 しかし、啓太の思いは届かなかったのか、父親は物置にプレゼントを持ったまま入り込むと扉を閉めて内側から鍵を掛けてしまった。啓太が扉についているガラスから中を覗き込むと、父親がプレゼントを置く姿が見えた。
 啓太は物置に入るために父親が扉から出るのを待ち伏せしていたが、啓太の目的に気付いた父親は時間が経過しても出てこようとしなかった。
 仕方なく啓太が物置から距離を置くと、やはり父親は扉を開け出てきた。そして啓太が物置に入らないようにガードしながら扉に南京錠を掛けると、勝利に酔いしれるように笑った。
「まさか南京錠なんてものを用意していたとは……」
 啓太は父親の方が一枚上手だったことに気付き項垂れた。物置内にはラッピングをされたプレゼントが変わりなく置かれている。
 プレゼントは明日までおあずけだ、という勝利台詞を吐いた父親は南京錠の鍵を啓太に見せびらかしてズボンのポケットに突っ込むと、玄関に向かって歩き出す。啓太は鍵をどうにかして奪おうと、やはり父親の後をついていった。

「いつまでにらめっこしているつもりだ?」
 父親が冗談交じりに言う。
 啓太はそれには返答せず、じっと父親を睨み続けた。
「……」
「……」
 それからさらに時間が経過し、遂に痺れを切らしたのか、
「分かった。プレゼントを出してあげよう」
「本当!?」
 啓太は飛び上がって喜んだ。物置に向かう父親の後を、今度は満足げについていく。
 しかし、物置の中を覗き込んだ父親の表情が強張った。
「プレゼントが……なくなっている?」
「そんな!」
 啓太も続いて物置の中を覗き込む。物置に置いてあったプレゼントはラッピングが解かれ、箱が開いており、ロボットは影も形もなくなっていた。
 二人は扉に掛けられているはずの南京錠を確認する。南京錠はしっかりと掛かっており、そのままでは扉は絶対に開かない。
 父親がズボンのポケットに入れていた鍵を取り出して南京錠に差し込むと、小気味好い音がして南京錠は外れた。南京錠が壊れているわけでは決してなく、父親が取り出した鍵は確かにあのときポケットにしまっていた鍵だった。同じ鍵が二つあるわけでもない。
 二人は雪崩れ込むようにして物置に入り、プレゼントの行方を探したが、物置のどこを探してもプレゼントどころか怪しいものは何一つ発見できなかった。
「扉がダメ、物置の中もダメ。ということは……」
 啓太は物置の扉と正反対の位置に開いている窓を見た。しかし、窓には鉄格子が嵌っていて人間は間違いなく通れない。ロボットも丸ごとは通れない程度の隙間しかない。
 啓太は窓に近づいて外を見てみた。すると、その窓の向こうからこちらを見ている目があった。隣の家に住んでいる友人、早乙女晶のものだった。
 啓太は晶に何か怪しいものを見ていないか尋ねることにした。

「晶、お前この物置ずっと見ていたか?怪しい人影を見ていないか?」
「見ていたわけではないけど、部屋にはずっといたし鉄格子の外側で何かが動いていたら気付くよ。少なくともこちら側に怪しい人はいなかったと思う。中に誰かがいたかどうかまではよく分からないね」
「そうか……」
 晶の証言の通り、晶の部屋からは物置の中まではほとんど分からない上、ここ数時間の間で晶が鉄格子の外側に人影を見ることはなかった。晶の見逃しということもない。
「まさか、密室だと……?」
 啓太はショックでその場に頽れた。
 鉄格子が無理だとすると南京錠にトリックがあるのだろうか。しかし、南京錠に何らかのトリックがあるとすると、父親はほぼ犯人ということになる。啓太には、そこまでしてプレゼントを消す理由があるとは思えなかった。
「一体、どういうことなんだ?」

 問題
 この話の真相は?
Answer>>32参照。
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