「どなた〜？」

「警視庁の姫野です。こちらにお住まいの内藤市吾さんからの
　通報で参りました。貴女こそ、どなたですか？」

「うふふ、アタシは、イッちゃんのカノジョでーす。」

見れば、女の手と服は血まみれである。間違いなく事件だ。
細く開けられたドアの隙間から、わたしは室内へ呼びかけた。

「内藤さん！　警察です！　ご在宅でしょう？！
　内藤市吾さん、ご無事ですか？！！
　ちょっと貴女、このドアチェーンを外しなさい！」

「そんなに怒鳴ってもダメですよーだ。
　そうねぇ、じゃぁ、土下座して〜。ひれ伏しなさ〜い。
　うふふ、茄子の御漬物は〜、綺麗な紫色でーす。」

この女にまともな反応は期待できないということか。
ならば強行突入しか無さそうだ。
わたしは部下に、ドアチェーンを壊すよう指示する。

「イッちゃんはねぇ、はじめて会ったときねー、
　アタシの綺麗なネイルに見蕩れてしまったんですって。
　じーっと見てた。うふふ。それでー、約束してもらったの。
　ほかの女には、そんなふうに見蕩れないって。
　どんなことがあっても。絶対に。絶対に絶〜っ対に。
　何度も念を押したのよ・・・。それなのにー。

　最初はねー、イッちゃんの使用済みのストローを
　こっそり集めて、おまじないの人形を作ろうと思ったけどー、
　やっぱり、イッちゃん本人じゃなきゃ、イヤなの〜。
　でも、そんなに心配しないでぇ。イッちゃんはー、
　はじめて会ったときと同じになっただけよぉ。」

「突入！　内藤さん？！」

優秀な部下は、喋り続ける女を素早く取り押さえた。
わたしは室内の捜索を開始し、すぐに内藤市吾を発見した。

奥の部屋で、彼は無残な姿となっていた。
そして不覚にも、わたしも彼と同じ状態に陥ったのである。



問題
　内藤と姫野が陥った状態とは？　判定は手動です。


おまけ
　物語文中および本解から連想される、派生キーワードをお答えください。
　答えは複数ありますが、かってに君には
　そのうちの、ひらがな４文字のものを設定してあります。