「酒に酔った親父が一度だけポロっと洩らした。
　『敷地のどこかにお宝を埋めた。
　　その場所を知ってるのは私と吾平だけだ。』
　吾平は古くからいる庭師の爺さんだ。
　親父の死後、吾平に聞いたが知らないの一点張り。
　人を雇って敷地内の土がむき出しのところは
　全部掘ってみたけど何も見つからなかった。
　水時方玖里子さん。頼む。お宝を見つけてくれ。」

午後四時。高柳邸に到着。
でかい門の脇の呼び鈴を鳴らすが返事がない。
依頼者の言葉を思い出す。
「家にいるのは吾平だけだ。
　吾平は日中は庭仕事をしていて呼び鈴にもでないから
　午後四時以降に訪ねてくれ。
　吾平には伝えておく。」

しばらく門の外から見ていると
屋敷の裏のほうからリヤカーをひいた爺さん登場。
あれが吾平さんか。
吾平さんはリヤカーからクワを下ろすといきなり振り上げる。
えっ？あの人何をするつもり？？
屋敷から門までの間の敷地は車が通れるようにきれいに舗装されている。
ガンッ。ガンッ。ガンッ。ガンッ。
その舗装面に吾平さんは何度もクワを叩きつける。
私は依頼者の話を思い出した。
「人を雇って敷地内の『土がむき出しのところ』は全部掘ってみた。」
そういうことか。

問題　吾平さんの行動をどう思いますか？