刑事課に入った一本の電話を取ったのは、今年配属されたばかりの友坂刑事だった。

「・・・ええ？殺しですか？あ、じゃあ他の方に代わりましょうか？・・・あ、はい。ええ。被害者は田中愛ですか。
　・・・はい。ホシがセイ？・・・では、凶器が・・・はぁ、珍しいっすね。なるほど、わかりました。
　・・・あ、そうなんですか！はい、ではこれから向かいます。」

”殺し”と聞いて、牧田と野上（薫子・女性刑事）が彼の電話に聞き耳を立てていた。
他の刑事達は皆出払っており、課内にいるのは牧田と野上、電話に出た友坂の三人だけだった。
受話器を置いた友坂にすぐさま野上が訊いた。
「殺しなの？状況は？」
友坂がメモを見ながら答える。
「はい、○○町のアパートの３階の一室で27歳の独身女性が撲殺されたようです」
「発見者は？」
「訪ねてきた被害者の友人とアパートの管理人です。マスターキーで部屋に入ったそうです。」
牧田が身を乗り出して尋ねる。
「なに？鍵がかかっていたのか！って事は密室殺人か！？」
「そんな物騒な・・・鍵のかかった部屋で殺人が起きたんですよ」
友坂は他に誰もいないのを確認するように課内を見回して少し小声になって話を続けた。
「どうやら死体を発見した被害者の友人というのが課長の知り合いらしいんですよ！
　僕は休暇中の課長の御宅まで迎えにいって、現場へお連れします」
牧田がジャケットを手にとり出陣体制を取ったのを見て、友坂が軽く手で制した。
「あ、牧田さん、大丈夫です。福山主任は僕だけ来ればいいと言ってましたから。
　まだまだ、緊張しますけど、これも勉強です！後を宜しくお願いします」
「え？」牧田は野上と顔を見合わせたが、友坂は「では、急ぎますので！」と言って二人を置いて行ってしまった。

残された牧田・野上の両刑事。
「死因は打撲、凶器は現場に残されていたってことか？しかも密室・・・」牧田は立ったまま考え込んだ。
野上も然り。
「でも、なんだか腑に落ちないですよね・・・
　主任が先に課長に連絡していたみたいなのはいいとして、友坂君はただ課長を迎えに行くみたいだわ・・・
　でも、いくらお休みの課長だって知人が関係してる殺人事件だったら、
　すぐにご自分の足で現場に向かわれるんじゃないかしら」
「そうなんですよね、第一発見者といったら容疑者の一人とも考えられるし、
　うん、課長が出張るのも当然なんだろうけど、確かに不自然だなあ、・・・あ〜あ、僕達が待機組みなのか・・・」と、置いてけぼりを食らって諦めきれない風の牧田刑事。
「それに、ホシが”セイ”って何の事だろう？野上さんにも”セイ”って聞こえましたよね？
　あれだけの会話じゃ、訳がわからないよ」
「ええ、セイって聞こえたわ。それにホシのアクセントが変だったのよね」
一瞬、野上刑事が彼の顔を見つめ、ハッと閃いて呟いた。
「・・・あ！ホシってそういうことなのね・・・じゃあ、きっとこれ、密室殺人でもなんでもないんだわ」
彼女は一人で納得して自分の机に戻った。
「え？ホシはホシでしょう？」牧田がポカーンとして訊いたが、野上はフフっと笑って「そうですよ、ただ、アクセントが・・・」と答えただけだった。

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さて、野上刑事の中で出た結論とは何でしょうか？解っていないのは牧田刑事だけのようです。。。


＊ある方の問題からヒント（パク。。笑）を頂きまして・・状況も似た小説が存在してたりして・・（ありゃりゃ）