青山の高級マンションの一室で、殺人事件が発生した。
被害者はKEITA、本名東原 慶太(28)。東原はカードを使わせれば日本では右に出るものはないというほど卓越した技術を持つ、売れっ子マジシャンだ。
アメリカのショービジネスで成功を収め、帰国してからメディアに大きく取り上げられた。
巧みな話術、流暢な英語、日本の貴公子的な風貌が人気を呼んだ。
だが、女癖が悪いことでも有名で、近づいてくる女性に対し、結婚詐欺まがいの手口で金を搾り取ることで、多くの女性から恨みを買っていた。
東原は、自室のリビングで、拳銃で頭を撃ちぬかれて、即死状態だった。
拳銃は東原がアメリカにいた頃、護身用で見につけていたもので、違法に日本に持ち込んだものだった。
彼はその頃３人の女性と交際していた。次の証言は被害者とプライベートでも親しかったマネージャーのものだ。

「荻野 理恵、27歳。鳳凰堂ホテルのバーラウンジに勤めていて、昨年全国大会で賞を総なめした実力ナンバー1の女性バーテンダーです。彼は本気で彼女に惚れていて、実際結婚してもいいと思っていました。しかし彼女には離婚歴があり、前の夫ともすっきり別れていない様子だと嘆いていました。」

「冬樹 美奈、24歳。彼女は同じプロダクションの元アイドルの女優です。彼女は自分から言い寄ってきて、東原君と結婚したがっていましたけど、彼が彼女に近づいたのは、体目当てだけです。彼女は最近演技に磨きがかかっていて、日本アカデミーの主演女優賞の候補にもなった実力者ですから。私も彼にはかかわらないほうがいいと進言したところだったんですよ。」

「栗栖 蓮香、21歳。彼女は現役の女子大生で、社長令嬢です。プロテニスプレイヤーとしても活躍していて、この間のイタリアの世界大会で、無名でいきなり優勝をさらいました。
　ウィンブルドンにも出場が期待されていて、東原君はマスコミに知られたら大変だと、慎重に交際していました。僕もよく密会の出しに使われましたよ。」

犯行現場では、被害者が愛用しているカードが散乱していた。
その中でも注目されたのが彼が死ぬ間際に握ったハートのクイーンのカード。これが犯人を示す唯一の手がかりだ。

さてこの3人。全員がクイーンと呼ばれるにふさわしい女性たちだが、ハートのクイーンは誰を示しているのだろうか。