牧田は枝葉　透子とのデートの場所で頭を悩ませていた。
そっちの方はまるっきりダメな牧田は”そっちは任せろ”の先輩・福山にすがってみた。

「夜景だろ？一番いいのは出糸湖の脇の遊歩道だな。なんだお前知らないのかよ。
　湖の真南に沿ってはしる歩道がレンガで舗装されてて広くて、いい雰囲気なんだぜ。
　夜は向こう岸のビルの明かりが一望できるし、何よりそれが水面に映って最高だね。
　ベンチもあるし恋人同士にはピッタリだ。
　しかも、道の突き当たりある”遠無州神社”はカップルで参拝に行くと必ず結ばれるって、
　女の子達の間では有名だぜ。」

ふむふむ・・・と熱心に手帳にメモする牧田を見て、福山は笑った。

「誰が相手か知らねーけど、ま、頑張れよ。牧田ちゃん」


後日、牧田が下見のつもりで出糸湖に行くと、なんと遠無州神社で殺人事件が起きていた。
興味を持った牧田は現場にいた警官に話を聞いた。
担当刑事はとても親切で、手帳を見ながら牧田に事件の概容を語ってくれた。

出糸署刑事　橋本談
　　被害者は本日未明に神主により本殿裏で刺殺体で発見されました。
　　死亡推定時刻は昨日23時頃です。
　　神社は夜間も敷地内は開放されていて建物のみ夕方に閉まります。
　　神社への道は出糸湖遊歩道だけなので、
　　ここで焼き鳥の屋台を出しているオヤジに聞き込みをしたところ、
　　被害者が通ったかどうかは気づかなかったそうですが、
　　昨夜のその時間に男女のカップル２組と30代前半位の男性が通ったのを憶えているそうです。
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　　Ａ　最初に通ったカップルは神社に一番近いベンチに座っていたが、少しの間姿が見えなくなり、
　　　　20分後位に、屋台の前を素通りして帰っていったとの事です。
　　　　オヤジが声をかけても振り向きもしなかったそうです。

　　Ｂ　次に通ったカップルは神社に入って行ったがすぐ戻り、屋台に寄って焼き鳥を買ったそうです。
　　　　その時、女性の方が夜景を見ようと男性を誘って、二人で暫くベンチで時間を過ごしていたようです。
　　　　昨夜は天気がよく湖面に月が映っていい眺めだったとか。

　　Ｃ　最後に通った男性は、湖側に沿って歩いていたので、歩道の反対側に店を出してるオヤジとは、
　　　　特に接触はなく、そのまま神社まで行き、暫くしてからまた一人で同じように帰って行ったとの事です。
　　　　夜遅くに縁結びの神社に男性一人で向かうのもオカシナもんだとオヤジが言ってました。

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　　最初のカップルは神社に入ったか確かではありませんが可能性は高いと思います。
　　この三組を見た者が他にも居ないか近隣住民にあたっているところです。

牧田刑事はその話を聞いてすぐ、誰が怪しいかピンときた。
さて、皆さんにはもうお解りでしょうか？