やあ、皆さん、元気でいるかな？
警察はなかなか私を捕まえてはくれないのでね。
暇つぶしといってはなんだが、君たちに一つ事件を提供しよう。挑戦状ということだ。
おっと失礼。自己紹介が遅れたね。ハジメマシテ、ということになるかな？
怪盗シャンク、そういえば聡明な皆さんならわかるだろう。
私は美しき芸術とともに人の影の部分を覗くのが好きなのだ。
もちろん私はただの傍観者だが。
さて前もっていっておこう。
この事件、共犯者の存在は無く、犯人は一人であるという事を。
では事件について語ろう。

今から二年前の２月１７日。
東京都内にあるマンション「サンラインズクロウ」312号室のリビングで、一人の男がピストルで左胸を撃たれて殺害されているのが発見された。
その男の名前は掛川 裕也（２１）。
いたって普通の大学生だ。
現場の状況から、死因は明らかに他殺である事が分かっている。
偽装自殺の可能性は全く無い。
また、状況から考えて、この場所で殺された事に間違いは無い。
彼の部屋の玄関ドアには鍵が掛かっていたが、チェーンは掛けられていなかった。
ちなみにこの部屋の鍵は被害者のポケットの中に入っていた。
窓もしっかり内側から施錠されている。
この部屋は３階にあるため、窓からの出入りは不可能といえる。
死亡推定時刻は前日１６日の午後８時〜９時までの間の１時間。
この時刻は鑑識の入念な調査によるものなので間違いは無い。

関係者の聞き込みにより、目立った動機のあったのは次の３名。
犯人は、間違いなく次の中にいる。

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・白川 このみ（１９）
被害者と同じ大学に通う女子大生。
被害者にしつこく交際を迫られていた。付きまとわれ、普段から腹を立てていた。
事件当夜のアリバイは、親友の皆川 葉子という女性からの電話を受け、午後７時から９時以降まで他愛の無い長電話をしていた。
アリバイは葉子が証明していて、同居している両親も「娘のこのみはずっとウチにいた」と証言している。
ちなみにこのみの自宅から被害者のマンションまでは自動車で２０分の距離にあるという事を言っておこう。
誓って言うが、葉子や白川家の者の証言に嘘は無いし、共犯でも無い。
これらに偽りは無い。

・矢田 良（２１）
被害者が通っていた大学のサークル仲間。
良は事件当日、ふとしたことで被害者と口論になり「殺してやる」と何度もつぶやいていた。
事件当夜は中学時代の同窓会があり、二次会のまっ最中だったと言う。
友達数人と居酒屋「黒木屋」で午後７時頃から午後１１時過ぎにかけて飲んでいたらしい。
その会に出席した者全員が良のアリバイを証明している。
誓って言うが、この同窓会に出席した者全員の証言に嘘は無いし、二次会が開かれた店の者も、全員一度も席を外さなかったと証言している。
ちなみにこの飲み会の行われた店から被害者のマンションまでは自動車で１５分の距離にあると言っておこう。
これらに偽りは無い。

・品川 弘樹（２０歳）
被害者の友人で、フリーター。
被害者に１０万円ほど貸していたが、一向に返す気配は無いので返済を頼んだ所、彼にトボケられた。
事件当夜は札幌に一人で出かけていた。
念のために言っておくがこの「札幌」とは、店の名前などでなく、北海道･札幌市である。
先月商店街の福引で札幌旅行が当選し、その旅行中だった。
事件当夜午後８時〜９時の間は、札幌観光からホテルに帰る途中のバスの中だったと言う。
そのバスの中でツアー参加者らが撮影した写真の中に弘樹が写っていた。
比較的はっきりと写っていて、弘樹本人である事は間違い無い。
双子だということも他人の空似ということも無く、トリック写真では無い事も言っておこう。
これらに偽りは無い。

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地道な捜査の結果、警察はある人物のアリバイを崩し、逮捕状を請求した。

さて皆さん。これが事件の概要だ。
もう一度言うが、犯人は間違いなくこの中に居る。
そして犯人は一人、つまり単独犯である。
ちなみに凶器に使われたピストルは、誰でも簡単に手に入ったものと考えること。
ピストルの出所から犯人をつき止めるような事は今回は考えなくて良い。
さあ犯人は誰だろうか。見事わかるだろうか。