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■ Re: 舞踊評論家の受難 ( No.49 )
日時: 2006/04/22 13:00
名前: Yossy

では正解発表です。
「え、もう事情聴取はしなくてもいいんですか?まだ関係者は大勢いますよ。」と聞く若手刑事に
「もう、必要ないだろ。容疑者の見当はついたから。」と私。
「ん?どういうことですか?」
「一人だけ嘘をついている奴がいるということだよ。おそらくそいつが容疑者だろう。まあ、容疑者というのは適切ではないかもしれないが…。」
「嘘ですか?誰だろう?気がつきませんでしたが。」

「それじゃ、君は誰が怪しいと思う?」
「いままで事情聴取した者の中に犯人がいるとすれば…。逃げていった犯人の衣装の色は紫色だったというから、日本舞踊の日野本踊子が怪しいと思ったんですが…。草履に足袋を履いていたから足音もあまりしないだろうし。」
「でも、その他の3人の代表者は赤い衣装を着ていたぞ。6号室の前の照明は何色だった?」と私。
「あ、青色でしたね。そうか、赤い服に青い光が当たれば紫に見えますね。あれ?そうすると衣装の色では区別できないことになりますね?とするとやっぱり足音ですか?」
「うーん、やっぱりそう思うか。いや、足音じゃなくて衣装の色のことだよ。嘘をついた奴も君と同じことを考えたんだよ。」
「え、どういうことですか?」
「赤と青が混ざれば紫色になるということさ。」
「え、だってそうでしょ?」
「それが、光の場合はそうはいかないんだよ。簡単にいえば、物が赤く見えるということは、赤色の光が目に入ってくるということだろ。つまり赤い物は、赤い光は反射するがそれ以外の色の光は吸収してしまうということなんだ。厳密には光の波長の問題なんだがこの際そんなことはどうでもいい。つまり赤い衣装に青い光を当てても吸収されてしまい、反射してくる光がないので黒くみえるのさ。だから赤い衣装や帯は黒く見え、紫色の着物も紫色には見えないはずなんだ。」
「へー、そうなんですか。とすると被害者の証言には誰も当てはまらないことになりますけど…。」
「だからさ、被害者が嘘を言っていることになるんだよ。赤だけじゃなく青い光の下で紫色に見える色なんてないんだ。
それに被害者は舞踊評論家だろ。『紫色の人影をはっきり見た』ならたとえシルエットでもどんな衣装だったかくらいは判りそうなものだよ。」

「え〜、とすると…。鰐口の狂言…?」
「たぶんな、そもそも突然入ってきた犯人に一撃されたというのもおかしい。部屋は真っ暗だったはずなんだからな。それに音を気にする犯人がドアをバタンと閉めると思うか?富良野の証言が正しいとすれば、鰐口が自分でわざと音をたて、壁に頭をぶつけたりしたんじゃないかな。」
「そういえば特に争った様子もないのに壁に掛かった絵が曲がっていたのも不自然でしたね。」
「うん、額縁から鰐口の指紋がでるかもしれんな。」
「でもなんでそんなことをする必要があるんです?鰐口は落ち目だというから、騒ぎを起こして注目を浴びようとしたんでしょうか?」
「ま、その辺はこれから調べることになるんだが、他に思い当たるのは…。今日は何日だ?」
「え〜と…、4月1日ですが。あ、エイプリルフール?」
「鰐口は自分がみんなに嫌われているのに気づいていないということだから、ちょっとみんなを驚かそうと思って打った芝居が、意に反して救急車や警察の出動にまでなってしまい、引っ込みがつかなくなったのかもしれん。」
「なるほど、悪ふざけが過ぎたというわけか。病院のベッドの上で仏頂面をしてたのはそのせいかな?でも主任、事情聴取のときみんなに履き物を脱がせて足の裏をチェックしていましたがあれはなんだったんですか?」
「ああ、あれか、必要はなかったんだが、万一犯人が4人の中にいて、履き物を脱いで殴ったとすれば足の裏が汚れているはずだと思って念のため調べたのさ。でもみんなの足の裏は汚れていなかった。つまり俺の推理の“裏”をとったというわけさ。」
「うゎ、駄洒落ですか!」

というわけで事件は鰐口の狂言でした。

4月1日にちなんで「嘘」がテーマの問題で、ポイントはただ一点、見えるはずのない「紫色がハッキリ見えた」という鰐口の嘘でした。足音、足の裏はミスリードでした。だまされたみなさん、ごめんなさい。エイプリルフールに免じてお許しのほどを…。
(^^;)