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|  怪盗スモークの挑戦***解答編 ( No.25 ) |  | 日時: 2006/03/28 14:43名前: S
 
さて、レスがないことにショックを受けつつ、解答編に入りたいと思います。長くなりますが、我慢して読んで頂けたら幸いです。
 
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 謎解き
 
 警部は、考えることを放棄して、宿毛が帰ってくるのを待っていた。
 宿毛が出て行きちょうど一時間たったころ、部屋のドアが開いた。
 「宿毛くん、降参だ。答えを教えてくれ」
 「仕方ないですね。じゃあ今から謎解きを始めましょう」宿毛は大きく息を吐くと、喋り始めた。
 「まず、簡単な方からやっつけましょう。『月の死んだ夜』という文章です」宿毛は、予告状を指し示す。
 「『月の死んだ夜』これはすぐにわかりました。月が死ぬ、つまり、月が出てこない新月を表していたのです」
 警部の頬から汗が流れる。
 「次に、『天地を〜』の部分です。天地をひっくり返すつまり、上下を逆にすればいいんです」
 「つまり、狙われているのは…女乙」警部が静かに呟く。
 「警部、馬鹿ですか?そんな人いないじゃないですか。」心底あきれた感じの宿毛。
 「いいですか、これをそのままひっくり返しても駄目なんです」ここで一息つき、警部を見据えていった。
 「ローマ字に変換してひっくり返すんです」
 警部の顔に驚きの表情が浮かぶ。
 「ということは…『otome』を逆にして『emoto』…江本が狙われているのか!?」狭い部屋で叫ぶ警部。
 「はい、そういうことです」宿毛が頷く。
 「よし、今度の新月が楽しみだ」
 
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 某月某日 午後7:00 江本邸
 
 ―いったい何時になったらくるんだ?
 現場には緊張した空気が流れている。
 と、前方に人影が見える。
 「山村警部、確保しますか?」新入りの刑事が尋ねる。
 「いや、その必要はない。どうやら私の知り合いのようだ」
 前方の人影―娘の幼なじみで小5の霧野幽介だ。
 男の子に見えないほどの白い肌を、真っ黒い服に、真っ黒なコートに包んでいる。黒い服を着ていなかったら、姿が見えないんじゃないかと思わせる程に、白い肌だ。
 「いったいどうしたんだね、幽介くん」
 「いや、さっき宿毛という人に、これを刑事さんに渡してくれ、と頼まれまして…」幽介が持っていたのは、あの『新聞の切り抜きで作った手紙』だった。
 警部の顔から、サッと血の気が引く。
 「どうしたんですか?警部」幽介が訊ねてくる。
 放心状態の警部は、今日までの事件のあらましを全て幽介に話した。
 話が終わると、幽介は少し考えて、
 「今すぐ友恵の家に言ってください!」と怒鳴った。
 警部には、その声も届かず、ただ呆然とするだけであった。
 
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 同月同日 午後6:00 岡本邸 真実
 
 家のものがすべて出かけたはずの家の中で、一つの影が動いていた。
 その影は音も立てずに宝物庫へ行くと、予告どおり「深緑のルビー」を盗み出した。
 その影は、まぬけな警察たちのことを考えていた。
 (まったく、あいつら駄目だよな。天地を二度ってちゃんと書いてたのに引っかかるんだからさ)
 影から笑い声がもれてくる。
 (せっかく江本まで教えてやったのにもう一回ひっくり返さないと。『えもと→ともえ』こんなことにも気づかないんだもんな)
 影は、深くため息をつく。
 (気づかないといえば、『すくもとうかい→かいとうすもく→怪盗スモーク』こんな簡単なアナグラムにも気づかないし)
 影は、思いついたというように部屋を見回すと、新聞紙を持ってきた。
 (そうだ、折角だからこのことを警察の連中にも教えてやろう)
 影―スモークは鋏で、新聞の文字を切り抜き、便箋に貼り付け始めた。
 
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 同月同日 午後6:30ごろ 某公園
 
 スモークは完成した手紙を持って、公園に来ていた。警察に届けてもらう人を探すためだ。
 (よし、あいつにしよう)
 スモークは少年とも少女ともわからない人物に、手紙をたくした。もちろん変装した姿で。
 (それでは、警察の皆さん。また会う日まで…)
 スモークは、手紙を読んだ警察の顔を想像し、つい、笑ってしまった。
 
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 いかがだったでしょう?
 この掲示板に、今回の作品の感想など書き込んでいただけたら幸いです。
 
 次回作には、少しだけ登場した、霧野幽介を探偵役にした作品を書きたいと思っております。
 スモークは、次回作以降にまた頑張ってもらうつもりです。
 最後に、長文失礼しました。
 
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