Re: 疑惑 **疑わしいが不起訴 ( No.56 ) |
- 日時: 2005/03/06 12:10
- 名前: Yossy
- **正解発表**
一度は犯人の逮捕を諦めかけたのだが、更なる疑惑に基づき容疑者を追求した結果、自供を得、逮捕することができたのでその経過を述べてみよう。
事件から3日後、大きく膨らんだ他殺の疑惑は私の頭から離れななかった。 「もし他殺だとすれば、犯人はどのように行動したのか? もう一度考え直してみるか。」 緩いコーヒーを傍らに置き、私は手帳を取り出した。
****** 推理 ******
以下に現場の状況・事実に基づいて私が推理した過程を述べる。
1.泳子はパジャマを着ていた。 泳子は寝ているところを襲われたのではないか。 2.部屋の灯りが消えていた 灯りがついていて誰かが訪ねて来たりすると面倒だと思ったか、 あるいは窓に人影が映るのを恐れたのではないか。 3.睡眠薬が混入された缶ビールが残っていた。 自殺するのにビールに睡眠薬を混入して飲むことはしないだろう。 泳子に睡眠薬を飲ませるために、犯人が用意したものではないか。 4.ビールの缶に泳子の指紋しかなかった。 カッターナイフは浴槽内で使ったため、素手で扱ったと思われるが、 ビールの缶はハンカチや手袋を使用すれば指紋を付けないようにすることができた はずなのに、犯人はなぜ缶の指紋を拭き取らねばならなかったのか。 →残っていたビールは犯人が持ち込んだもので、缶に犯人の指紋が付いていたため ではなかろうか?
以上の推測をつなぎ合わせると次のような光景が見えてくる。
不眠症に悩まされていた泳子は、就寝前に常用の睡眠薬をビールと共に服用した。これは睡眠薬の即効性を高めるためである。 この習慣を知っていた犯人は、泳子が寝た頃を見計らって合い鍵で部屋に侵入した。 部屋の灯りは消えているが、窓に人影が映るのを恐れて部屋の灯りはつけない。 これからの「作業」にはペンライトのような小さな懐中電灯が一個あれば用は足りる。 持参した缶ビールに机の上の睡眠薬を混入し、泳子を揺り起こした。 すでに睡眠薬をのんで寝ていた泳子はボーとしているうちに、睡眠薬入りのビールをさらに飲まされた。 犯人はビールの缶には付いている自分の指紋を拭き取り、泳子の指紋を付けた。 泳子が買って飲んだビールの缶はつぶしてポケットにでもしまえばすり替え完了。 意識朦朧となった泳子を浴室まで運び、浴槽内で手首を切った。カッターナイフの指紋を拭き取り泳子の右手に握らせた。
これで犯行が行われるまでの犯人の行動については一応の説明はつく。
最後に残るのは遺書の問題である。 普通、自殺か否かを判断する場合、まず遺書があるかどうかを調べるだろう。だから犯人はどうしても遺書を残したかったのだ。 しかし、紙に書いたものでは筆跡が残るから、パソコンを利用したと考えればとりあえず辻褄が合う。
ここまで考えてハッと思いついたことがあった。 通報を受けて我々が泳子の部屋に駆けつけたとき、ノートパソコンの電源は入っており、デスクトップに遺書が表示されていた。 そして鑑識がそのパソコンを持ち去るまでずっと遺書は表示されていた。 また、遺書が残されていたノートパソコンは私が使っているものと同じで、かなり旧式のものであった。 問題はここなのだ。私のパソコンの場合バッテリがへたっていて3時間と持たない。旧型のノートパソコンは新品のバッテリでも4時間くらいしかもたないのだ。 したがって、泳子自身が遺書を作成したのだとすれば、死亡推定時刻から見て、それは少なくとも2月11日午前零時以前であろうから、それが朝の10時過ぎまで表示されていたとは考えられないのである。 とすれば、パソコンの電源は我々が駆けつける4時間以内に入れられたことになる。
登は最初に「部屋の中のものには手を触れていない。」と述べている。 そうであれば、誰がパソコンの電源をいれたのか?
登は「朝訪ねてきたとき、ドアには鍵がかかっていて部屋の灯りは消えていた。合い鍵を使って入った。」とも述べている。 登以外の者が犯人だとしてもドアに鍵をかけて逃走することはできない。なぜならドアの鍵を持っているのは泳子と登だけなのだから。 やはり登の言っていることは嘘なのだ。
「遺書は偽造だ。そして犯人は登だ。」と私は確信した。
おそらく登は、犯行後朝まで部屋に潜んでいて第一発見者を装い、警察に通報する直前に遺書を作成したのだ。 (実は偽装にはもっといい方法があったのだが、登はそれに気付かなかったのだ。)
犯行後帰宅し、朝再びやってきて第一発見者を装うこともできたはずだが、犯行後の心理というやつで、おそらく深夜に帰宅する途中で誰かに目撃されることを恐れたのだろう。
******* 逮捕 *******
「この推理が正しいとすれば、それを裏付ける証拠は・・・・・」 「ビールの缶。泳子が買ったというコンビニで販売されたものか、あるいは他で販売されたものか調べる必要があるな。」 「パソコンのバッテリ、それに遺書の作成日と時間だな。普通は気にしていないが、パソコンで作成したファイルには必ず作成日と時間が記録されているのだから。」
「いずれにしても、遺書は偽造で、それを作成できるのは登しかいないのだから、容疑者として取り調べはできるな。」
こうして登を呼んで取り調べを行ったところ、登はあっさりと自供したのである。 あれこれ画策した割りには、偽装が穴だらけだったことが致命的だったのだ。 遺書などに拘らず、さっさと逃走していれば我々の捜査はもっと難航していただろうに。。。
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