pc ( No.13 ) |
- 日時: 2016/01/06 00:38
- 名前: 紅巾
- 「この『ロシア蛸焼の謎』解けた奴はいるか」
暫くして加藤が言った。 国名シリーズだったのかよ、と何人かが苦笑する。 「なんなら皆で相談し合ってもいいぞ」 加藤はタイトルに反応が貰えたことに満足気だ。これがやりたかっただけだろう、というツッコミもあったがそこには触れなかった。 「そういえば山村ってほとんど飲んでなかった気がするな。ジュースに毒があったんじゃないか?」 サークル員の一人が意見する。 「でもその山村のジュースは加藤に渡されてそのまま加藤に零されたんだよな。で、それに毒はないって明言された」 「でも死んだはずの加藤が明言したから毒はないって分かるけど、それがなければ山村が怪しい、で終わるよな。殺人計画っていうくらいだから、その対処もあるんだろ?そこも教えてよ」 山村はそれに応えることにした。 「ジュースに毒があったと言われたら、私はそのジュースを飲んでいたからジュースに毒は絶対に入ってない、と主張して、零れたジュースを飲んでみせたはずです。実際ありませんでしたからね」 「うーん、確かにそこまでされたらたこ焼きを疑うな。クイズの条件で加藤を意図的に殺した、つまり無差別殺人ではない、とされてるからジュースに目がいくが」 事実、山村は乾杯時もその後もジュースを飲んでいなかったが、毒入りかもしれないものを毒がないと確信して飲む、という行為は飲んでいた、と思わせるには十分だろう。 「ていうか山村のジュースに毒があったとして、加藤がハズレを引かなかったら飲ませられなかったじゃん。そこはどうするのさ」 ご尤もな意見である。加藤がハズレを引かなければジュースを飲ませる機会もなかったことになる。自分のジュースを他人に飲ませる機会などそうあるわけもない。 「そこももう分かったよ」 一人が自信満々に応える。マジか、とその他の全員が期待に溢れた目で見る。中には出し抜かれて悔しそうな者もいたが。 「冷静に考えてみると分かるんじゃないか?特定の誰かにハズレを引かせるのは無理だけど、加藤を苦しませるのは難しくない」 その発言の真意は皆にすぐに伝わった。加藤と山村は敗北を確信した。 「じゃあ、毒はここしか有り得ないな。皆で指差そうぜ。せーの!」 加藤の合図で全員がある場所を指差す。同じ場所だ。
誰かがハズレを引くことはなかった。
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