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■ pc ( No.10 )
日時: 2009/07/16 14:11
名前: nn)/

ご参加どうもありがとうございました.
ここには,皆様のご解答をみて感じたこと,補足すべきことを書きます.



(i)  元にした問題


元の問題は,0/1 と 1/1 から始めるのではなく,0/1 と 1/0 = ∞ から開始です.
すると,整数(分母が1の分数)および 分母より大きな分子をもつものを含めた
全ての正の既約分数が出てきます.試してみてください,

ここでは,本質的でない説明を省くため,0 と 1 の間の分数に限定しました.
>>9 に掲げた解答は 0/1 と 1/0 で始めた場合についても,(3) で
  (m'+n') + (m"+n") ≧ m'+n'+m+n+1  (2 を 1 に変更)
とする以外,そのまま通用するはずです.

(ii)  数学的帰納法,自然数 --- ボムボムさんの解答について


ボムボムさんの解答 (特に >>3) は,数学的帰納法を Wikipedia にもある通り,
 1. 命題 P(0) は真である.
 2. 任意の自然数 k に対し,P(k) が真であれば,P(k+1) も真である,
 よって任意の自然数 n について P(n) は真である.
の形でそのまま使ったものです.大変きちっとされていて感心しました.ただ,
REEさん (>>1) やfyhさん (>>8 の1) の解答がやけにあっさりして見えるように,
この形に限定する必要はありません.そもそも 2. は
 2'. 任意の自然数 k (k ≦ n) に対し,P(k) が真であれば,P(n+1) も真である,
でないとうまく行かない場合もあるので,Wiki も怪しいところが結構あります.
ここで「自然数」は 0 以上の整数を意味していることに注意して下さい.
その方が自然なので,だいぶ前から,多くの分野で黙っていれば 0 を含むこと
が普通になりつつあります.つまり,1以上の整数は「正の整数」「正整数」,
0 以上の整数は「非負整数」などと呼ぶ方が無難です.

帰納法とはもともと「対象を構成する個々の要素について命題 P が真であるから,
対象全体に関して P が真である」とするものです.ですから,あるルールに基づ
いて対象の全要素が作り出されるとき,
 1. 生成する源 (ここでは 0/1 と 1/1) について命題 P は真である.
 2. ある要素が作られる際,それ以前に作られている全ての要素について P が
  真であれば,その要素についても P が真である,
ことが証明できれば,任意の要素について P は真であると言えます.これを特に
構成に関する帰納法 (induction on construction) と名付ける人もいます.

(iii) 背理法・構成的証明・拡張ユークリッドの互除法 --- fyhさんの解答について


fyhさんの解答 (>>8 の 2) に対し,「背理法にしない方がよりカッコいい」とコメ
ントしました.なぜそう思うのか,書いておく責任がありそうです.

背理法は強力な証明法で,簡潔に証明できる場合も多く,また,背理法でなければ
証明困難な命題もたくさんあります.実際,(3) の証明でも背理法を用いています.
また,その強力さは入試向けにもぴったりで,背理法を用いなくても証明可能な命
題も,背理法を使うように指導するのが,受験対策というものでしょう.

ただし,背理法には欠点があります.たとえば,「ある性質 A を持つ要素が少なく
とも1つは存在する」という命題を証明するには,「A なる要素が存在しないと仮
定すれば矛盾を生じる」ことを示せば十分です.しかし,存在が証明できても,ど
うやって A という性質を持った要素を1個あるいは全部得るか,という課題解決に
は,あまり役立たないことも多いのです.つまり,対象集団に関する具体性に欠け
る傾向があるのです.

一方,「こうすれば性質 A を持つ要素が作れる」として,作る際の手続きを示せば,
存在証明を行うと同時に,本来の課題も解決されます.このような方針に基づく証
明法を構成的 (constructive) といいます.そのような要素が作れる場合か作れな
い場合かの判定についても,背理法に基づく証明からは,判定方法の設計方針にあ
まり情報が得られません.

つまり,背理法を採用しなくても(そう大変にならず)証明可能ならば,採用し
ない方がカッコいいと思うのです.fyhさんの解答では,わざわざ「2以上の公約
数で割り切れる」と仮定し,矛盾を言っています.「分母・分子の最大公約数が1」
という既約の定義をそのまま使えるのに,そこから少し離れるのは背理法への過剰
な慣れのように感じました.

(3) の証明は,背理法とはいえ,構成的といえるような要因が含まれていますので,
a + b 段目より上には a/b が現れるという情報も,証明と同時に得られています.

なお,(2) の証明にある (*) の式 m'n - mn' = 1 のように,正整数 m, n を与えたと
き, r m + s n = gcd(m,n) を満たす整数 r, s が (無数に) 存在します.そのような
整数組 (r, s) の一つを与える方法は拡張ユークリッドの互除法と呼ばれ,そのよう
な整数組の存在に対する構成的証明にもなっています.