「文章が、相手の名を示す・・・。そう、この文章はいわゆる『字謎』でした。
秘密の恋の相手を、彼女は字謎で表していたんです。
もしもあなたが心を持たず
代わりに言葉を持っていたのなら
愛を語ってくれたのかしら
文章中の『わたし』と一緒に過ごしているとき、
彼は愛を『語』りませんでした。心を持って、言葉を持っていなかったからです。
『語』から言葉を失くして心、つまり「りっしん遍」をつけると、『悟』になります。
心をなくしてしまったあなたは
仕事に追われていましたね
仕事に追われて『わたし』と会っていない彼は、心を亡くしました。
心を亡くす、つまり『忙』しかったのです。
あなたの心は下になく
そばにあったはずなのに
わたしはあなたの心の傍らに
いつも寄り添っていたはずなのに
田の下に心で『思』のように下心ではなく、そばに。
『わたし』のそばに心があったはずでした。
『悟』の旁(つくり)は『吾』・・・『わたし』です。」
「つまり彼女は、手帳の1ページに、『悟』の一文字を記していたのです!」
「田所 悟・・・別居中か。『離婚して君と』って言ってたじゃない!なんてやつかな。」
「うーん、それはわからないけど、想像するに慎みぶかい美人だったろうになぁ、勿体無い。」
「パパ!美人は関係ないですよ!大体これは物書きであるパパの専門分野でしょう!」
「読もうとしたらお前が取り上げたんじゃないか!」
「まぁまぁ、兄さんもミモリちゃんも・・・。」
「あ、そういえばこれ取りに行ってたんだった。
はい!ミモリから保坂さんへのバレンタインのチョコレート。・・・義理じゃないよ・・・。」
「え・・・えぇ???」
「『お情けチョコ』だよ♪」
------------
3月14日(土)
紙袋を片手に玄関のチャイムを押しながら、保坂はつぶやいた。
「来年こそは・・・。」
解決編 2009/02/25 17:00
秘密の恋の相手を、彼女は字謎で表していたんです。
文章中の『わたし』と一緒に過ごしているとき、
彼は愛を『語』りませんでした。心を持って、言葉を持っていなかったからです。
『語』から言葉を失くして心、つまり「りっしん遍」をつけると、『悟』になります。
仕事に追われて『わたし』と会っていない彼は、心を亡くしました。
心を亡くす、つまり『忙』しかったのです。
田の下に心で『思』のように下心ではなく、そばに。
『わたし』のそばに心があったはずでした。
『悟』の旁(つくり)は『吾』・・・『わたし』です。」
「つまり彼女は、手帳の1ページに、『悟』の一文字を記していたのです!」
「田所 悟・・・別居中か。『離婚して君と』って言ってたじゃない!なんてやつかな。」
「うーん、それはわからないけど、想像するに慎みぶかい美人だったろうになぁ、勿体無い。」
「パパ!美人は関係ないですよ!大体これは物書きであるパパの専門分野でしょう!」
「読もうとしたらお前が取り上げたんじゃないか!」
「まぁまぁ、兄さんもミモリちゃんも・・・。」
「あ、そういえばこれ取りに行ってたんだった。
はい!ミモリから保坂さんへのバレンタインのチョコレート。・・・義理じゃないよ・・・。」
「え・・・えぇ???」
「『お情けチョコ』だよ♪」
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3月14日(土)
紙袋を片手に玄関のチャイムを押しながら、保坂はつぶやいた。
「来年こそは・・・。」