クイズ大陸



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?Submarin 2009/01/05 12:23
[解決編]
「ふらふら歩いて…ねぇ」
自分は式は半ばそっちのけで暗号文と取り組んでいた。
そうは言ってもなかなか妙案など浮かばないもので、いつの間にやら
先の紙ナプキンに変な落書きをしてしまっている。
「ふらふら歩いて…」
そうつぶやきながらぎざぎざの波線を書いて…
「分かった!!」
「しっ!!」
式中というのを忘れて大きな声を出していた。幸い拍手の最中だったから
大差なかったけれど、所長に怒られた。
「いきなり大声出すことないでしょうが。」
「すみません。」
「で、答えはわかったのね。」
「ええ。ふらふら歩くというのは上下に一字ずつ拾えってことでしょう?」
自分はさっきの続きにこう書いた。

えいりっくあいもののんれんろくっにのんれのちげじ
あらざいくいしんふよわれはさぼのとばわめいひもき

えらりいくいいんのよんれんさくのにばんめのひげき
あいざっくあしもふのわれはろぼっとのわれのいちじ


「そのとおり。この手の暗号でもっと複雑なのは昔使ってたって話だからね、
それで使ってみる気になったんじゃないの。」
「それで、一文目はエラリィ・クイーンの四連作…」
「『Xの悲劇』・『Yの悲劇』・『Zの悲劇』・『ドルリー・レーン最後の事件』でしょ」
「知ってます。その二番目というんだから、"Y"でしょう。クイーン作では一番有名ですから。」
「で、二文目。アイザック・アシモフの『我はロボット』だけど…」
「原題で"I, Robot"でしょう。確かウィルスミスあたり主演で映画化してた。だから"I"。最後のその二つが交わるというのはイニシャルだってことでしょう。YIとかIYなんて単語はないですから。」
「つまり…」
折りしも、壇上には『あしながおじさん』…猪瀬雪弥が上っていて、花束を受け取るところだった。

式後。
帰りの車の中で。
「ところで所長。今回の暗号、解けた後の文章が文学的すぎませんか。」
「甘いわ。この暗号は作家としてやっていこうとしている人間に向けて書かれたものなのよ。
なによりこの暗号は相手が解けないといけない暗号だったんだから。その範囲で解けというなら文学の素養が一番要るってことを明言してるようなものね。
猪瀬さんもその点では甘い人なのかも。」
そういう所長の顔には、意地悪な色はなかった。正直、花嫁の幸せを喜んでいたんだろう。

追伸。
自分は結局何も言わなかったのだけど、所長が自分が解いたということにしてしまったらしく、後日二人の天使が手を取り合うペンダントが送られてきた。
ただどう見ても女性持ちのもので(所長に送るつもりで注文したものなんだろう)、困ってしまった。所長はこの話を持ち出しても笑って受け取らない。
仕方がないので、自分に彼女ができたときには、このエピソードとともにその彼女に送ろうと思っている。
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