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解決編
2008/12/03 12:07
「もちろんです!事件を解決する糸口はここにあ〜る!」
2人は美少女探偵の指差す方向を見つめる。そこにあるのは・・・
「「カレンダー?」」
小さな探偵はコクリ、と頷いた。
「前の年にはクリスマスイブ・つまり24日に無理やり時間をとった男が、
今年は『時間がとれない』なんて嘘をついてまで、25日にプロポーズをしようとしたのです。
男にとっての《特別な日》が一昨年と去年で1日変わってしまったのです。
そのカレンダーにあるのが、その原因です。
わかりますか?今年、ちょうどそこに2月の分まで載っています。
去年にはなかった、「1日」がそこに見えませんか?」
「2月29日・・・そうか今年は閏年(うるうどし)か。」
「はい。今年2008年は閏年です。今年はいつもより1年が「1日」だけ多いんです。
今年には2月29日、閏日があります。そのせいで男の《特別な日》は1日遅れてしまったのです。」
2人の男達が顔を見合わせる。見合わせた顔が一旦上を向き・・・左右対称に傾いた。
「うーん?なんで今年の日付が去年に影響してくるんだ?」
「それは、男が数えていたからです。『クリスマスから2月をまたいだ日付までの日数』を。
その場合に限って、閏日が前年に影響します。つまり、3月以降の日付です。
供述をみると、4月の彼女の誕生日、それと5月に正式に付き合いだした日。
叔父さん、百瀬のお店の名前、なんでしたっけ。」
「「cienシエン」だよ。」
「そのつづり、英語ですか?」
「さぁ、どうだろう・・・?関係があるのかい?」
「百瀬はスペインまで家具を買い付けに行っていました。
スペイン家具の店の名前をスペイン語でつける、極めて自然です。
パパ、取材にかこつけて、前に旅行に行きましたよね、
そして私にコインのお土産をくれました。」
「・・・数字の100だ。スペイン語でcienは。」
「そう、百瀬の家具店の名前は、「百」です。名字の「百」からとったのでしょう。
彼ががもし、数字にこだわるとしたらそれは「百」のはずです。
試しに数えてみて下さい。2007年の12月25日から、100日を。閏日を忘れないで。」
「6日+31日+29日+31日で97日・・4月だ。4月3日。
保坂くん・・・彼女の誕生日は?」
「ちょ・・ちょっと待ってくれ・・・ビンゴ!」
探偵はニッコリと微笑んだ。
「そう、キリストの誕生日を祝うクリスマス。世間の恋人達が2人で過ごすのは
その前日、クリスマスイブ。百瀬が一昨年、そして去年と祝っていたのは、
キリストの誕生日ではなく、睦子の誕生日の「百」日前だったのです!!」
「クリスマスが睦子の誕生日の100日前だった。それはもちろん偶然です。
ただ、百瀬はその偶然を喜びました。だから一昨年も無理やり時間をとりましたし、
プロポーズをするならこの日しかあり得ない!と考えました。
だって、百瀬のこだわったこの100日という日数、それはクリスマスだけに
適用されたわけではないのだから。
この12月から4月まで、という期間、他にも似たような間隔がありますよね?」
小さな探偵の言葉をまだ完全に呑み込みきれない2人だが、
とりあえず保坂がその疑問に答えた。
「1月と・・・5月、か?」
「そうです、おそらく2人の出会った日、その100日後です。
百瀬が正式に離婚し、睦子と付き合い出したのは。」
「うーん、そうかもしれないが・・・・。」
「その日付がわかるかもしれません。」
「え?」
「最初のクリスマスと、二回目のクリスマス。ホテルのディナーとプロポーズ。
睦子の年齢も一因にはあるかもしれませんが、なぜ、今回に限って百瀬が
プロポーズを決意したのか、そう思わせる何かが2007年12月25日にあったとしたら?
パパ、100日の次の単位はなんでしょう?200日?1000日?それがカレンダーの場合は、
1週間単位・1ヶ月単位・1年単位です。2人は出会いから約2年。
試しに数えてみませんか?12月25日から・・・100週間前。」
「面倒だ。」
「パ〜パ〜。」
「まぁまぁ僕が数えるよ。」
「2006年1月24日の火曜日、・・・になるね、百瀬が正確に数えていたとすると。」
「2人が出会った2006年の1月になるのです。
つまり、これをもとに男の行動を最初からなぞってみると、
2006年1月24日に睦子と出会い、その100日後の5月4日に正式に付き合い初め、
出逢って100週間後の2008年12月25日にプロポーズ。しかも、それは百瀬の
考える、「睦子のバースデー・イブ」という超『特別な日』だったのです!」
「睦子が百瀬の浮気を疑ったことでこの悲劇は起こりました。
無事にクリスマスを2人で過ごすことが出来ていたら・・・。」
「これはたしかに・・・悲劇、だな。」
「睦子に伝えるべきなのか、どうなのか・・・」
悲劇を語り終えた名探偵は、炬燵に入り込んだ。
「あとね、これ、完全に蛇足なんだけど、『静雄と睦子』って多分、
四十雄と六十子と読めて合わせて「百」だぁ・・なんて喜んでたと思うよ。この男。
一応、前の結婚のこと反省してさ、すぐに再婚を決めずにしばらく付き合ってから、
とか考えたんだろうけどね。
結局離婚の理由って夫婦間のコミュニケーション不足だったんじゃないの〜?
パパも『言わなくても通じ合ってる』とか甘い考えは捨ててね!
そして保坂さんは彼女との記念日は判りやすく祝うんですよ〜♪
あ、今年彼女が出来たら、の話!」
--------------------------------------
2008年12月
イルミネーションを見上げながら、事件を思い返していた保坂は、
今夜も姉夫婦の住む一軒家へと足を向けるのであった。
「今日はモツ鍋って言ってたな。」
2人は美少女探偵の指差す方向を見つめる。そこにあるのは・・・
「「カレンダー?」」
小さな探偵はコクリ、と頷いた。
「前の年にはクリスマスイブ・つまり24日に無理やり時間をとった男が、
今年は『時間がとれない』なんて嘘をついてまで、25日にプロポーズをしようとしたのです。
男にとっての《特別な日》が一昨年と去年で1日変わってしまったのです。
そのカレンダーにあるのが、その原因です。
わかりますか?今年、ちょうどそこに2月の分まで載っています。
去年にはなかった、「1日」がそこに見えませんか?」
「2月29日・・・そうか今年は閏年(うるうどし)か。」
「はい。今年2008年は閏年です。今年はいつもより1年が「1日」だけ多いんです。
今年には2月29日、閏日があります。そのせいで男の《特別な日》は1日遅れてしまったのです。」
2人の男達が顔を見合わせる。見合わせた顔が一旦上を向き・・・左右対称に傾いた。
「うーん?なんで今年の日付が去年に影響してくるんだ?」
「それは、男が数えていたからです。『クリスマスから2月をまたいだ日付までの日数』を。
その場合に限って、閏日が前年に影響します。つまり、3月以降の日付です。
供述をみると、4月の彼女の誕生日、それと5月に正式に付き合いだした日。
叔父さん、百瀬のお店の名前、なんでしたっけ。」
「「cienシエン」だよ。」
「そのつづり、英語ですか?」
「さぁ、どうだろう・・・?関係があるのかい?」
「百瀬はスペインまで家具を買い付けに行っていました。
スペイン家具の店の名前をスペイン語でつける、極めて自然です。
パパ、取材にかこつけて、前に旅行に行きましたよね、
そして私にコインのお土産をくれました。」
「・・・数字の100だ。スペイン語でcienは。」
「そう、百瀬の家具店の名前は、「百」です。名字の「百」からとったのでしょう。
彼ががもし、数字にこだわるとしたらそれは「百」のはずです。
試しに数えてみて下さい。2007年の12月25日から、100日を。閏日を忘れないで。」
「6日+31日+29日+31日で97日・・4月だ。4月3日。
保坂くん・・・彼女の誕生日は?」
「ちょ・・ちょっと待ってくれ・・・ビンゴ!」
探偵はニッコリと微笑んだ。
「そう、キリストの誕生日を祝うクリスマス。世間の恋人達が2人で過ごすのは
その前日、クリスマスイブ。百瀬が一昨年、そして去年と祝っていたのは、
キリストの誕生日ではなく、睦子の誕生日の「百」日前だったのです!!」
「クリスマスが睦子の誕生日の100日前だった。それはもちろん偶然です。
ただ、百瀬はその偶然を喜びました。だから一昨年も無理やり時間をとりましたし、
プロポーズをするならこの日しかあり得ない!と考えました。
だって、百瀬のこだわったこの100日という日数、それはクリスマスだけに
適用されたわけではないのだから。
この12月から4月まで、という期間、他にも似たような間隔がありますよね?」
小さな探偵の言葉をまだ完全に呑み込みきれない2人だが、
とりあえず保坂がその疑問に答えた。
「1月と・・・5月、か?」
「そうです、おそらく2人の出会った日、その100日後です。
百瀬が正式に離婚し、睦子と付き合い出したのは。」
「うーん、そうかもしれないが・・・・。」
「その日付がわかるかもしれません。」
「え?」
「最初のクリスマスと、二回目のクリスマス。ホテルのディナーとプロポーズ。
睦子の年齢も一因にはあるかもしれませんが、なぜ、今回に限って百瀬が
プロポーズを決意したのか、そう思わせる何かが2007年12月25日にあったとしたら?
パパ、100日の次の単位はなんでしょう?200日?1000日?それがカレンダーの場合は、
1週間単位・1ヶ月単位・1年単位です。2人は出会いから約2年。
試しに数えてみませんか?12月25日から・・・100週間前。」
「面倒だ。」
「パ〜パ〜。」
「まぁまぁ僕が数えるよ。」
「2006年1月24日の火曜日、・・・になるね、百瀬が正確に数えていたとすると。」
「2人が出会った2006年の1月になるのです。
つまり、これをもとに男の行動を最初からなぞってみると、
2006年1月24日に睦子と出会い、その100日後の5月4日に正式に付き合い初め、
出逢って100週間後の2008年12月25日にプロポーズ。しかも、それは百瀬の
考える、「睦子のバースデー・イブ」という超『特別な日』だったのです!」
「睦子が百瀬の浮気を疑ったことでこの悲劇は起こりました。
無事にクリスマスを2人で過ごすことが出来ていたら・・・。」
「これはたしかに・・・悲劇、だな。」
「睦子に伝えるべきなのか、どうなのか・・・」
悲劇を語り終えた名探偵は、炬燵に入り込んだ。
「あとね、これ、完全に蛇足なんだけど、『静雄と睦子』って多分、
四十雄と六十子と読めて合わせて「百」だぁ・・なんて喜んでたと思うよ。この男。
一応、前の結婚のこと反省してさ、すぐに再婚を決めずにしばらく付き合ってから、
とか考えたんだろうけどね。
結局離婚の理由って夫婦間のコミュニケーション不足だったんじゃないの〜?
パパも『言わなくても通じ合ってる』とか甘い考えは捨ててね!
そして保坂さんは彼女との記念日は判りやすく祝うんですよ〜♪
あ、今年彼女が出来たら、の話!」
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2008年12月
イルミネーションを見上げながら、事件を思い返していた保坂は、
今夜も姉夫婦の住む一軒家へと足を向けるのであった。
「今日はモツ鍋って言ってたな。」