聖夜の事件−美少女探偵ミモリ@ ≫No. 1
海☆ミ
2008/11/21 19:11
「あの人のことが信じられなくなったんです。」
2007年12月28日(金)
その女性は涙を拭いて・・意を決したように話し出した。
彼女は先日の25日に起きた、「インポート家具『cien』オーナー殺人事件」の容疑者だ。
警察でも彼女の犯行だと目星をつけて行方を捜していたが、昨日×本日自ら警察に出頭してきた。
これはその供述の内容である。
「私が百瀬と出会ったのは・・・去年の1月でした。
その時彼にはまだ奥さんがいて、ただ、不仲である、という事だけは聞いていました。
それが、4月の私の誕生日に花束を持って会いに来てくれて、
翌月には奥さんと別れたから・・と正式に付き合う事になりました。
私は彼との結婚を望んでいましたが・・口にはしませんでした。
彼も前の結婚で反省することが多かったみたいで、結婚という言葉が彼の口から出ることはありませんでした。
今年は・・こんなことになってしまったけれど、昨年のクリスマス・イブには
『大事な商談があるけど、イブは絶対君と過ごしたいから』って急いで帰ってきてくれて、
2人きりでホテルでのディナーを楽しみました。
「君とならこれから、最高の人生を過ごしていけるかもしれない。」って、
彼は微笑みながら言ってくれたんです。」
彼女は目を瞑り、楽しかった日々を思い出しながら話していたが、
次の言葉を切り出すには、しばしの時間を必要とした。
「別に何かあったわけではないんです。彼の仕事が忙しいのは相変わらずで、
店の家具は、彼がスペインまで買い付けにいくものですし、お客様への応対も、
彼自身が足を運ぶ事が多いんです。
それでも私と会う時間は大切にしてくれて、会っている間はいつも優しい人でした。
結婚しよう、ってその一言を待つようになってから、どうしても言ってくれない彼に、
不安を感じだしたのかもしれません。
仕事柄女性と接する機会も多い人でしたし、私も最初は客として知り合ったものですから、
女性の影がないかどうか気にするようになってしまいました。
そして今年のクリスマス、去年はあんなに熱心にイブに時間を取ってくれた彼が
今年はどうしてもイブは無理だ、クリスマスの日にレストランを予約するからって・・。
私、見てしまったんです。イブの日に、彼が女性と一緒にいるところを。
それで次の日に彼の店まで行きました。出かける前にどうしてもはっきりさせたくて。
責める私に彼は言い訳をせず、『とにかく出かけよう』って私の手を引いたから、
つい振り払ってしまったんです。すると彼がバランスを崩して・・・
倒れる時に商品に頭をぶつけて・・倒れた床に血が流れているのが見えました。
私はすぐに救急車を呼んで・・でもそこで怖くなってしまい、逃げ出しました。」
彼女が出頭したのが、それから3日後である。
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2008年1月4日(金)
「で?それがどうしたんだい?犯人が捕まったんならいいじゃないか?」
「いやいや義兄(にい)さん、ちょっと腑に落ちない事があるんだよ。」
ここは刑事である保坂の、姉夫婦の家のリビングである。
1人暮らしの保坂を心配する姉に夕食に呼ばれる機会は少なくないのだが
推理小説家である義理の兄と話していると、いつも事件の話になってしまう。
被害者:百瀬静雄(ももせ・しずお)38歳 インポート家具店「cien(シエン)」経営者
被疑者:香月睦子(かつき・むつこ)29歳 百瀬の恋人 インテリア会社勤務
「腑に落ちない点って?要するに浮気していた男と口論してかっとなって、
って事件だろ?まぁ、故意にじゃなかったにしろ。」
「いやぁ、そう言ってるんだけどね、実際のところこれっていう怪しい女の影はなさそうなんだ。
イブの女ってのもね、店のスタッフに聞いたら、皆知ってる上得意の顧客だったんだ。
ただし、無理してオーナー自らが行かないといけない状況でもなかった。
店のスタッフが代わりに行こうって申し出たら、『クリスマス・イブだから、君は楽しんでおいで』だとさ。」
「ふーん、いい店主じゃないか・・って上得意の女が浮気相手ってことじゃないか?」
「80歳なんだ。その上得意は。」
「何でそれを浮気相手と見間違うんだよ・・・。」
「遠くからみたら半分くらいの年齢に見える格好なんだな。」
「うーん?なんだそれ、男の浮気は勘違いだったってことか?」
「そう、しかも出てきちゃったんだよ、男の死体から。」
「何が?」
「指輪だよ。でっかいダイヤの。こりゃプロポーズ用だろ?って感じの。
逃げた女はそれを見てないのさ。」
「ふーん、イブにさえデートしてりゃあ今頃はってやつか。」
「なぁ、なんか腑に落ちないだろ?なんで敢えて疑われるような事態を招いたんだ。」
炬燵に入って2人して唸っていると、後ろから声がした。
「美少女探偵ミモリにおまかせ!どんなもつれた愛憎劇も、ミモリにかかればスッキリ解決!」
保坂は義兄と顔を見合わせると、どちらともなくため息をついた。
「中学生の聞く話じゃありません。しかも解決されたくありません。そしてその格好はやめなさいといつも・・・。」
「パパはゲンダイの中学生をナメちゃだめです!そしてコレは美少女探偵のコスチュームですので。」
自称美少女探偵はレースたっぷりのワンピースの裾を引っ張るとニッコリ笑った。
しかしふと顔を伏せると、静かに語り出した・・・。
「なぜ男はクリスマス・イブを敢えて外して、クリスマスの日にプロポーズを決めたのか・・。
世間ではクリスマスよりもイブの夜こそ恋人たちが過ごす時間なのに。
女がそれを知っていたら、きっとこの悲しい事件は起らなかったはずなのに・・・。」
「えーと、『ミモリ』さんにはわかるのかい?」
保坂は恐る恐る合いの手を入れてみた。
「もちろんです!事件を解決する糸口はここにあ〜る!」
ビシっ、ロリータファッションに身を包んだ探偵は空中に指を突きつけて宣言したのであった・・・。
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今年もクリスマスがやってくる。
12月に入りイルミネーションが輝き出すのを見た保坂は、去年起きた
クリスマスの悲しい事件を思いだしていた。
・・・・美少女探偵のあざやかな推理ショーと共に・・。
海☆ミ 2008/11/21 19:11
2007年12月28日(金)
その女性は涙を拭いて・・意を決したように話し出した。
彼女は先日の25日に起きた、「インポート家具『cien』オーナー殺人事件」の容疑者だ。
警察でも彼女の犯行だと目星をつけて行方を捜していたが、
昨日×本日自ら警察に出頭してきた。これはその供述の内容である。
「私が百瀬と出会ったのは・・・去年の1月でした。
その時彼にはまだ奥さんがいて、ただ、不仲である、という事だけは聞いていました。
それが、4月の私の誕生日に花束を持って会いに来てくれて、
翌月には奥さんと別れたから・・と正式に付き合う事になりました。
私は彼との結婚を望んでいましたが・・口にはしませんでした。
彼も前の結婚で反省することが多かったみたいで、結婚という言葉が彼の口から出ることはありませんでした。
今年は・・こんなことになってしまったけれど、昨年のクリスマス・イブには
『大事な商談があるけど、イブは絶対君と過ごしたいから』って急いで帰ってきてくれて、
2人きりでホテルでのディナーを楽しみました。
「君とならこれから、最高の人生を過ごしていけるかもしれない。」って、
彼は微笑みながら言ってくれたんです。」
彼女は目を瞑り、楽しかった日々を思い出しながら話していたが、
次の言葉を切り出すには、しばしの時間を必要とした。
「別に何かあったわけではないんです。彼の仕事が忙しいのは相変わらずで、
店の家具は、彼がスペインまで買い付けにいくものですし、お客様への応対も、
彼自身が足を運ぶ事が多いんです。
それでも私と会う時間は大切にしてくれて、会っている間はいつも優しい人でした。
結婚しよう、ってその一言を待つようになってから、どうしても言ってくれない彼に、
不安を感じだしたのかもしれません。
仕事柄女性と接する機会も多い人でしたし、私も最初は客として知り合ったものですから、
女性の影がないかどうか気にするようになってしまいました。
そして今年のクリスマス、去年はあんなに熱心にイブに時間を取ってくれた彼が
今年はどうしてもイブは無理だ、クリスマスの日にレストランを予約するからって・・。
私、見てしまったんです。イブの日に、彼が女性と一緒にいるところを。
それで次の日に彼の店まで行きました。出かける前にどうしてもはっきりさせたくて。
責める私に彼は言い訳をせず、『とにかく出かけよう』って私の手を引いたから、
つい振り払ってしまったんです。すると彼がバランスを崩して・・・
倒れる時に商品に頭をぶつけて・・倒れた床に血が流れているのが見えました。
私はすぐに救急車を呼んで・・でもそこで怖くなってしまい、逃げ出しました。」
彼女が出頭したのが、それから3日後である。
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2008年1月4日(金)
「で?それがどうしたんだい?犯人が捕まったんならいいじゃないか?」
「いやいや義兄(にい)さん、ちょっと腑に落ちない事があるんだよ。」
ここは刑事である保坂の、姉夫婦の家のリビングである。
1人暮らしの保坂を心配する姉に夕食に呼ばれる機会は少なくないのだが
推理小説家である義理の兄と話していると、いつも事件の話になってしまう。
被害者:百瀬静雄(ももせ・しずお)38歳 インポート家具店「cien(シエン)」経営者
被疑者:香月睦子(かつき・むつこ)29歳 百瀬の恋人 インテリア会社勤務
「腑に落ちない点って?要するに浮気していた男と口論してかっとなって、
って事件だろ?まぁ、故意にじゃなかったにしろ。」
「いやぁ、そう言ってるんだけどね、実際のところこれっていう怪しい女の影はなさそうなんだ。
イブの女ってのもね、店のスタッフに聞いたら、皆知ってる上得意の顧客だったんだ。
ただし、無理してオーナー自らが行かないといけない状況でもなかった。
店のスタッフが代わりに行こうって申し出たら、『クリスマス・イブだから、君は楽しんでおいで』だとさ。」
「ふーん、いい店主じゃないか・・って上得意の女が浮気相手ってことじゃないか?」
「80歳なんだ。その上得意は。」
「何でそれを浮気相手と見間違うんだよ・・・。」
「遠くからみたら半分くらいの年齢に見える格好なんだな。」
「うーん?なんだそれ、男の浮気は勘違いだったってことか?」
「そう、しかも出てきちゃったんだよ、男の死体から。」
「何が?」
「指輪だよ。でっかいダイヤの。こりゃプロポーズ用だろ?って感じの。
逃げた女はそれを見てないのさ。」
「ふーん、イブにさえデートしてりゃあ今頃はってやつか。」
「なぁ、なんか腑に落ちないだろ?なんで敢えて疑われるような事態を招いたんだ。」
炬燵に入って2人して唸っていると、後ろから声がした。
「美少女探偵ミモリにおまかせ!どんなもつれた愛憎劇も、ミモリにかかればスッキリ解決!」
保坂は義兄と顔を見合わせると、どちらともなくため息をついた。
「中学生の聞く話じゃありません。しかも解決されたくありません。そしてその格好はやめなさいといつも・・・。」
「パパはゲンダイの中学生をナメちゃだめです!そしてコレは美少女探偵のコスチュームですので。」
自称美少女探偵はレースたっぷりのワンピースの裾を引っ張るとニッコリ笑った。
しかしふと顔を伏せると、静かに語り出した・・・。
「なぜ男はクリスマス・イブを敢えて外して、クリスマスの日にプロポーズを決めたのか・・。
世間ではクリスマスよりもイブの夜こそ恋人たちが過ごす時間なのに。
女がそれを知っていたら、きっとこの悲しい事件は起らなかったはずなのに・・・。」
「えーと、『ミモリ』さんにはわかるのかい?」
保坂は恐る恐る合いの手を入れてみた。
「もちろんです!事件を解決する糸口はここにあ〜る!」
ビシっ、ロリータファッションに身を包んだ探偵は空中に指を突きつけて宣言したのであった・・・。
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今年もクリスマスがやってくる。
12月に入りイルミネーションが輝き出すのを見た保坂は、去年起きた
クリスマスの悲しい事件を思いだしていた。
・・・・美少女探偵のあざやかな推理ショーと共に・・。