ｸｲｽﾞ大陸

「てんとうさんの記憶は戻らないままか。
　矢崎巡査。すまんね、預けっぱなしで。」
「いえ。私は逆に助かっています。」
「部長。こいつ家事まったくダメでしょ。
　てんとうさんと同居して、
　掃除洗濯料理全部やってもらってるんですよ。」
「ちょっと！そんなこと・・・・あるけど。」
「いや、てんとうさんにはできるだけ家事をやらせてほしい。
　毎日やっていた家事をすることが記憶回復に役立つはずだ。
　そのため医師のアドバイスもあり病院には入院させず、
　矢崎巡査のマンションに預けたんだ。」
「そうなのよ、わかった？　
　でも、てんとうさんはホンとに家事の達人ですよ。
　ありあわせの食材だけで、あっという間にごちそうを作るし、
　掃除も洗濯もすごく手際がいいんです。
　毎日勉強になります。」
「ははぁ。矢崎もこんなところで花嫁修業か。」
「それにしても家事は完璧にできるのに、
　それ以外の記憶がさっぱりとはな。」
「外出する用事、たとえばスーパーでの買い物や
　銀行でお金をおろすとかは頼んでも怖がってしてくれません。」
「町のようすなどは住んでいた場所と違うからな。」
「でも矢崎の部屋にだけはすぐなじんだよな。」
「てんとうさんが住んでいたのもマンションで
　間取りなんかがよく似ていたんじゃないか？」
「それにやっぱり家の中の仕事は体が覚えてるみたいですよ。」

２週間前、東京駅の階段の下で“転倒”していた初老の女性。
それがてんとうさんだ。
彼女は自分の名前もどこに住んでいるかも言えなかったため
警察に保護された。
盗まれたのか財布など身の回りの物がいっさい無い。
該当する失踪届もなく、ニュースで顔が報道されても
身元に関する情報は集まらなかった。

「住んでいた町、せめて県ぐらいでも特定できれば
　写真入りの立て看板をだすとかビラを駅前で配るとかできるんだがな。」
「はい、矢崎いい考えがあります。」
「言ってみろ。」
「料理の作り方でどこの人間かわかります。
　薄味なら関西。とんかつに味噌をぬったら名古屋。
　おでんに黒はんぺんを入れたら静岡です。」
「それなら、お雑煮を作らせてみろ。
　あれは地方ごとに特色があるぞ。」
しかし部長は首をふる。
「わかるのは現住所ではなく出身地だな。
　それについては言語学者から報告が来ている。
　岩手出身で１０年以上関東に在住していると推測できるそうだ。」
「なんだ、出身はわかってたんだ。」
「関東といっても広いですね。」
「外出させるのが難しいなら
　いろんな街をビデオで撮って見せましょうか。」
「漠然としすぎてるよ。
　よほど自宅の近くでも映らない限り反応しないだろう。」
「各県のローカルなテレビ番組を見せてみるとか。」
「埼玉の人に『こんにちは埼玉』を見せると
　特別なリアクションがあるのか？」
「そうだ、サッカーの試合を見せましょう。
　ＦＣ東京とアントラーズとジェフ・・・・
　どこを応援するかで決まりです。」
「てんとうさんサッカーに興味あるとは思えないですよ。」
そこで石田刑事が手を挙げる。
「部長。思いつきなのでうまくいくかはわかりませんが、
　ダメモトで試してみたい事があります。」

次の日
「○○県の○○市と○○市が一番可能性が高いと思います。」
「そうか、よくやった。」

問題　石田刑事が試した事は何でしょうか？