伊豆の踊り子殺人事件 ≫No. 1
たく
日下「また事件が増えだしましたね。」
三波「そうだなぁ。」
高木「最近は事件が巧妙になってきてるなぁ」
三波「その反面、科学技術が向上してきて検挙率も上がってきてるのだがな・・・」
高木「時間がかかるだよなぁ・・・。」
山岡「ハイテク捜査ですね。」
日下「でも…やっぱり、地道な捜査や推理が実を結ぶんですよ。」
高木「なにより、事件が起きないのが一番だ。」
プルルル・・・・。刑事課の電話が鳴った。
「ある写真館で殺人事件が起こった」との内容だった。
高木「日下、事件だ! 行くぞ」
日下「了解です」
あと、新米の山岡を連れて現場に向かった。
現場である雪月花写真館に到着した。
だが、鑑識の現場検証が終わっていなかったので、待ちぼうけを食らわされた。
山岡「この写真館は日本の原風景ともいえる花鳥風月の写真を専門に取り扱ってます。」
高木「こういう景色はやっぱりいいなぁ。」
日下「御尤もです。日本の美ですね。」
写真館には日本各地の写真が飾られていた。
高木「棚田か・・・」
山岡「大あるき小あるき?」
高木「はは、それは大歩危(ぼけ)小歩危と云って、徳島の観光地だ。」
日下「大歩危小歩危は祖谷にある峡谷で、“大股で歩くと危険”ということから来たそうですよ」
山岡「詳しいですね。」
日下「地元ですから。夏休みにはここの下流で泳いでました。」
高木「たしかこの川は・・・、吉野川だよな。」
日下「その通りです。四国では四万十の方が有名ですけど・・・ね。」
山岡「高木さんは、博学ですねぇ。私は話についていけないですよ・・・。」
高木「年の功だよ。捜査で全国飛び回ってたからな」
日下「雄大で神々しいですね。富士山は・・・。」
高木「ダイヤモンド富士か・・・。」
日下「ダイヤモンド富士っていうんですか?」
高木「そうだよ。夕日に染まった赤富士なんてのもあるぞ。」
山岡「讃岐平野にこんなにため池があるんですね。」
高木「瀬戸内は雨が少ないからな。」
山岡「木曽川の鵜飼ですね。」
日下「鵜飼は木曽川じゃなくて、長良川だよ。」
高木「懐かしいな。」
日下「この写真はどこなんですか?」
高木「浄蓮の滝に初景滝(しょけいだる)だ。」
日下「そういわれても・・・」
高木「初景滝の写真をよく見てみな。」
日下「伊豆の踊り子・・・ってことは天城ですか。」
高木「そうだ。この滝からよく滑ったもんだ。云わば天然のウォータースライダーだな。」
日下「この滝をですか?」
高木「真ん中の筋をツルっと滑るんだよ。」
山岡「さっきから気になってたんですけど、“だる”って何なんですか?」
高木「このあたりの方言で、滝のことを“だる”っていうんだよ。」
山岡「へぇ〜、方言ですかぁ」
高木「七だるともいうしな。」
山岡「なるほど。」
高木「浄蓮の滝は日本の滝百選に選ばれてるんだよ。」
日下「でも浄蓮の滝は“たき”なんですね。」
高木「そう言われればそうだな。」
山岡「詳しいですね。」
日下「いつもは寡黙な高木さんも饒舌ですねぇ。」
高木「なんせ私の郷里だからな」
日下「天城の出身だったんですか。」
高木「まあな。寝乱〜れて、隠れ〜宿、九十九折り〜浄蓮の〜滝〜♪」
三波「現場検証、終わったぞ・、随分のってたな」
高木は苦笑いしていた。
さて、本題に戻ろう。
日下「被害者は吉田源治(よしだげんじ)、57歳。この写真館の主人です。」
山岡「奥さんは2年前に他界しています。一人娘の実奈美は、今、旦那と共に宮古島に定住しているそうです。」
高木「還暦目前にして鰥夫暮らしかぁ・・・。」
日下「高木さん、」
高木「あ、すまない。今年で、妻が57でねぇ・・・。」
三波「そんな年になるんだな。で、ガイシャは灰皿でガツンと一発。」
日下「死亡推定時刻は昨夜の9時前後です。」
山岡「指紋は検出されなかったそうです。」
高木「撲殺なら、数分は生きてたはずだろ。三波、ダイイングメッセージは残ってなかったのか?」
三波「流石…、鋭いなぁ。血文字でこんなものが・・・、」
三波から見せられた写真には“☆|:|:|:|:|:|:|:”と書かれていた。
山岡「そんなのじゃ分からないですよ。ズバリ、犯人の名前を書いてくれればいいのに・・・」
日下「犯人が見てたりとか、いろいろな事情があるんだよ。」
三波「あと、言い忘れてたが、被害者は自分で体を動かしてあの(さっき高木たちが見ていた)写真の方を向いてた。」
高木「まぁ、お前にとっては初めてか・・・、今回のようなダイレクトなダイイングメッセージは。でもな、リラックスして冷静に考えなきゃならんのだよ。」
三波「俺は上に報告とかあるから、ここで。頑張れよ。」
山岡「鑑識“課長”ってのも大変なんですねぇ。」
高木「中間管理職ってのはそういうものだ。で、日下、容疑者の方はどうなってる?」
日下「別室に待機してます。」
高木「では、話を聞くとするか。」
山岡「私も同席して宜しいでしょうか?」
高木「構わんが、くれぐれもおかしなマネはするなよ。」
山岡「了解です。」
NO.1へ続く
三波「そうだなぁ。」
高木「最近は事件が巧妙になってきてるなぁ」
三波「その反面、科学技術が向上してきて検挙率も上がってきてるのだがな・・・」
高木「時間がかかるだよなぁ・・・。」
山岡「ハイテク捜査ですね。」
日下「でも…やっぱり、地道な捜査や推理が実を結ぶんですよ。」
高木「なにより、事件が起きないのが一番だ。」
プルルル・・・・。刑事課の電話が鳴った。
「ある写真館で殺人事件が起こった」との内容だった。
高木「日下、事件だ! 行くぞ」
日下「了解です」
あと、新米の山岡を連れて現場に向かった。
現場である雪月花写真館に到着した。
だが、鑑識の現場検証が終わっていなかったので、待ちぼうけを食らわされた。
山岡「この写真館は日本の原風景ともいえる花鳥風月の写真を専門に取り扱ってます。」
高木「こういう景色はやっぱりいいなぁ。」
日下「御尤もです。日本の美ですね。」
写真館には日本各地の写真が飾られていた。
高木「棚田か・・・」
山岡「大あるき小あるき?」
高木「はは、それは大歩危(ぼけ)小歩危と云って、徳島の観光地だ。」
日下「大歩危小歩危は祖谷にある峡谷で、“大股で歩くと危険”ということから来たそうですよ」
山岡「詳しいですね。」
日下「地元ですから。夏休みにはここの下流で泳いでました。」
高木「たしかこの川は・・・、吉野川だよな。」
日下「その通りです。四国では四万十の方が有名ですけど・・・ね。」
山岡「高木さんは、博学ですねぇ。私は話についていけないですよ・・・。」
高木「年の功だよ。捜査で全国飛び回ってたからな」
日下「雄大で神々しいですね。富士山は・・・。」
高木「ダイヤモンド富士か・・・。」
日下「ダイヤモンド富士っていうんですか?」
高木「そうだよ。夕日に染まった赤富士なんてのもあるぞ。」
山岡「讃岐平野にこんなにため池があるんですね。」
高木「瀬戸内は雨が少ないからな。」
山岡「木曽川の鵜飼ですね。」
日下「鵜飼は木曽川じゃなくて、長良川だよ。」
高木「懐かしいな。」
日下「この写真はどこなんですか?」
高木「浄蓮の滝に初景滝(しょけいだる)だ。」
日下「そういわれても・・・」
高木「初景滝の写真をよく見てみな。」
日下「伊豆の踊り子・・・ってことは天城ですか。」
高木「そうだ。この滝からよく滑ったもんだ。云わば天然のウォータースライダーだな。」
日下「この滝をですか?」
高木「真ん中の筋をツルっと滑るんだよ。」
山岡「さっきから気になってたんですけど、“だる”って何なんですか?」
高木「このあたりの方言で、滝のことを“だる”っていうんだよ。」
山岡「へぇ〜、方言ですかぁ」
高木「七だるともいうしな。」
山岡「なるほど。」
高木「浄蓮の滝は日本の滝百選に選ばれてるんだよ。」
日下「でも浄蓮の滝は“たき”なんですね。」
高木「そう言われればそうだな。」
山岡「詳しいですね。」
日下「いつもは寡黙な高木さんも饒舌ですねぇ。」
高木「なんせ私の郷里だからな」
日下「天城の出身だったんですか。」
高木「まあな。寝乱〜れて、隠れ〜宿、九十九折り〜浄蓮の〜滝〜♪」
三波「現場検証、終わったぞ・、随分のってたな」
高木は苦笑いしていた。
さて、本題に戻ろう。
日下「被害者は吉田源治(よしだげんじ)、57歳。この写真館の主人です。」
山岡「奥さんは2年前に他界しています。一人娘の実奈美は、今、旦那と共に宮古島に定住しているそうです。」
高木「還暦目前にして鰥夫暮らしかぁ・・・。」
日下「高木さん、」
高木「あ、すまない。今年で、妻が57でねぇ・・・。」
三波「そんな年になるんだな。で、ガイシャは灰皿でガツンと一発。」
日下「死亡推定時刻は昨夜の9時前後です。」
山岡「指紋は検出されなかったそうです。」
高木「撲殺なら、数分は生きてたはずだろ。三波、ダイイングメッセージは残ってなかったのか?」
三波「流石…、鋭いなぁ。血文字でこんなものが・・・、」
三波から見せられた写真には“☆|:|:|:|:|:|:|:”と書かれていた。
山岡「そんなのじゃ分からないですよ。ズバリ、犯人の名前を書いてくれればいいのに・・・」
日下「犯人が見てたりとか、いろいろな事情があるんだよ。」
三波「あと、言い忘れてたが、被害者は自分で体を動かしてあの(さっき高木たちが見ていた)写真の方を向いてた。」
高木「まぁ、お前にとっては初めてか・・・、今回のようなダイレクトなダイイングメッセージは。でもな、リラックスして冷静に考えなきゃならんのだよ。」
三波「俺は上に報告とかあるから、ここで。頑張れよ。」
山岡「鑑識“課長”ってのも大変なんですねぇ。」
高木「中間管理職ってのはそういうものだ。で、日下、容疑者の方はどうなってる?」
日下「別室に待機してます。」
高木「では、話を聞くとするか。」
山岡「私も同席して宜しいでしょうか?」
高木「構わんが、くれぐれもおかしなマネはするなよ。」
山岡「了解です。」
NO.1へ続く