No. 38≫ No.39 ≫No. 40
pekoe
●●● 翌日 嵐山家にて ●●●
午後7時。誰もいない家に帰宅した楓は、パチパチと次々に電気をつけ、リビングに入った。心なしか早足になっている。
あの後、自分が書き出した情報を元に、何とか「誰が誰を殺したのか」を突き止めることはできた。しかし、なぜ殺したのか、どうやって殺したのか、依然疑問は残ったまま。モヤモヤした気分のまま、楓は一日を過ごさなければならなかった。
そのため、仕事を終えるとまっすぐ家に帰り、今日の分の「ノイのり」を見ようと真っ先にテレビの前へ向かったのだった。
(……? なんで?)
録画した映像を見るうち、楓はかえって混乱してきた。
殺人犯であるはずのカオルが、特に変わった様子もなく出ている。さらには、殺されたはずのジュンも、引き続きドラマに出ているのだ。回想シーンというわけでもなさそうだ。
困惑していると、家の電話が鳴った。実家からだ。
「あ、お姉ちゃん? 桜ちゃん、今夜カブトムシ捕まえるんだってきかないんだけど…そっちに帰らせた方が良いよね? 明日プールなんでしょ?」
「んー…じゃあ明日の朝そっちに車で迎えに行くからいいよー。……全然関係ないんだけどさ、椿、『ノイのり』って見てる?」
「見てないよ」
その答えを聞き、楓が意気消沈したところに椿は続ける。
「このところ毎日のように真珠美がストーリーを教えてくれるから大体は知ってるけど…何?」
「ちょっと見逃したんだけど、昨日『ノイのり』で殺人が起こったよね? アレってどうなったの?」
椿が知ってるかもしれない、と勢いこんで訊いてみるが返答は実にあっさりしていた。
「殺人なんて起こってないんじゃない?」
「え……?」
楓が戸惑っているところに椿はさらに続ける。
「それってカオルとジュンのことでしょ? カオルがジュンのことを何か恨んでて、殺意を持ったとかナイフを突きつけたとか言ってたけど、それだけでしょ? 実際に殺人は起こってないんじゃないかな」
「……………」
つまり、楓は「殺意」「殺してやる」などの言葉から、勝手に『殺人事件が起こった』と錯覚していたのだ。
何となく「トホホ」な気分で、椿に礼を言って楓は受話器を置いた。
●●●●●●●●●●●●●●●●●
pekoe
午後7時。誰もいない家に帰宅した楓は、パチパチと次々に電気をつけ、リビングに入った。心なしか早足になっている。
あの後、自分が書き出した情報を元に、何とか「誰が誰を殺したのか」を突き止めることはできた。しかし、なぜ殺したのか、どうやって殺したのか、依然疑問は残ったまま。モヤモヤした気分のまま、楓は一日を過ごさなければならなかった。
そのため、仕事を終えるとまっすぐ家に帰り、今日の分の「ノイのり」を見ようと真っ先にテレビの前へ向かったのだった。
(……? なんで?)
録画した映像を見るうち、楓はかえって混乱してきた。
殺人犯であるはずのカオルが、特に変わった様子もなく出ている。さらには、殺されたはずのジュンも、引き続きドラマに出ているのだ。回想シーンというわけでもなさそうだ。
困惑していると、家の電話が鳴った。実家からだ。
「あ、お姉ちゃん? 桜ちゃん、今夜カブトムシ捕まえるんだってきかないんだけど…そっちに帰らせた方が良いよね? 明日プールなんでしょ?」
「んー…じゃあ明日の朝そっちに車で迎えに行くからいいよー。……全然関係ないんだけどさ、椿、『ノイのり』って見てる?」
「見てないよ」
その答えを聞き、楓が意気消沈したところに椿は続ける。
「このところ毎日のように真珠美がストーリーを教えてくれるから大体は知ってるけど…何?」
「ちょっと見逃したんだけど、昨日『ノイのり』で殺人が起こったよね? アレってどうなったの?」
椿が知ってるかもしれない、と勢いこんで訊いてみるが返答は実にあっさりしていた。
「殺人なんて起こってないんじゃない?」
「え……?」
楓が戸惑っているところに椿はさらに続ける。
「それってカオルとジュンのことでしょ? カオルがジュンのことを何か恨んでて、殺意を持ったとかナイフを突きつけたとか言ってたけど、それだけでしょ? 実際に殺人は起こってないんじゃないかな」
「……………」
つまり、楓は「殺意」「殺してやる」などの言葉から、勝手に『殺人事件が起こった』と錯覚していたのだ。
何となく「トホホ」な気分で、椿に礼を言って楓は受話器を置いた。
●●●●●●●●●●●●●●●●●