コンビニ泥棒を追え! ≫No. 1
kaito
2005/02/08 19:43
ある日曜日の夕方、予備校の授業が終わった後、親友の穂陸奥沙緒子とコンビニで雑誌を立ち読みしていると、不意にレジの方から
「泥棒ー!」
という女の子の高い声が響いた。
見ると、帽子にマスク、黒いコート姿の男(?)が店を飛び出して行くところだった。
レジではバイトの女の子がその男を指差してまた「泥棒ー!」と叫んでいる。
私は雑誌を素早く棚に戻し、男の後を追って店の外へ駆け出した。
男は通りの向こう側へ道を横切り、停めてあった自転車にサッと跨った。
「園子! ちょっとどいて!」
後ろから声がして、反射的に少し翻ると、私の横をオレンジ色の何かがひゅっと飛んで過ぎ、自転車のチェーンカバーに当たって割れた。チェーンカバーにはオレンジのインクがべっとりと付いた。
振り返ると沙緒子がニコッと笑っている。
「追いかけるよ!」
言われてまた通りの方を見ると、自転車は構わずスタートを切り、すでにだいぶ先を走っていた。
私と沙緒子は並んで追いかけた。
足にはわりと自信はあったが、さすがに自転車には敵わない。泥棒はどんどん遠ざかっていく。
「もうだめだ」と諦めようとした瞬間、自転車は急にスピードを落として曲がり角を左折した。
私たちはともかくその角まで走った。
息を切らしながら角を左に入ると、そこにはもう自転車は見えなかった。
私たちは立ち尽くしてしまった。
ふと見ると、そこに一人の男の人が文庫本を片手に、誰かを待つような雰囲気で立っていた。
「すみません。今ここを自転車が通りませんでしたか?」
私は聞いてみた。
「え? ああ、自転車は普通に通るからなあ」
今度は沙緒子が聞いた。
「チェーンカバーが派手なオレンジ色に汚れている自転車なので、すぐに分かると思うんですけど」
「ああ、それなら僕の前をすごい速さで通り過ぎて、あの辺りで左に入ったよ」
男の人は少し先の交差点を指差してそう答えた。
「本当ですか!? どうもありがとうございます!」
私はまた気分が高揚して、その交差点に向かって走り出・・・そうとして、沙緒子にグイと袖を掴まれ、阻まれた。
「何? 早く追いかけなきゃ!」
そういう私に、沙緒子は言った。
「園子、騙されちゃダメよ」
沙緒子は何を不審に思ったのでしょうか?
「泥棒ー!」
という女の子の高い声が響いた。
見ると、帽子にマスク、黒いコート姿の男(?)が店を飛び出して行くところだった。
レジではバイトの女の子がその男を指差してまた「泥棒ー!」と叫んでいる。
私は雑誌を素早く棚に戻し、男の後を追って店の外へ駆け出した。
男は通りの向こう側へ道を横切り、停めてあった自転車にサッと跨った。
「園子! ちょっとどいて!」
後ろから声がして、反射的に少し翻ると、私の横をオレンジ色の何かがひゅっと飛んで過ぎ、自転車のチェーンカバーに当たって割れた。チェーンカバーにはオレンジのインクがべっとりと付いた。
振り返ると沙緒子がニコッと笑っている。
「追いかけるよ!」
言われてまた通りの方を見ると、自転車は構わずスタートを切り、すでにだいぶ先を走っていた。
私と沙緒子は並んで追いかけた。
足にはわりと自信はあったが、さすがに自転車には敵わない。泥棒はどんどん遠ざかっていく。
「もうだめだ」と諦めようとした瞬間、自転車は急にスピードを落として曲がり角を左折した。
私たちはともかくその角まで走った。
息を切らしながら角を左に入ると、そこにはもう自転車は見えなかった。
私たちは立ち尽くしてしまった。
ふと見ると、そこに一人の男の人が文庫本を片手に、誰かを待つような雰囲気で立っていた。
「すみません。今ここを自転車が通りませんでしたか?」
私は聞いてみた。
「え? ああ、自転車は普通に通るからなあ」
今度は沙緒子が聞いた。
「チェーンカバーが派手なオレンジ色に汚れている自転車なので、すぐに分かると思うんですけど」
「ああ、それなら僕の前をすごい速さで通り過ぎて、あの辺りで左に入ったよ」
男の人は少し先の交差点を指差してそう答えた。
「本当ですか!? どうもありがとうございます!」
私はまた気分が高揚して、その交差点に向かって走り出・・・そうとして、沙緒子にグイと袖を掴まれ、阻まれた。
「何? 早く追いかけなきゃ!」
そういう私に、沙緒子は言った。
「園子、騙されちゃダメよ」
沙緒子は何を不審に思ったのでしょうか?