クイズ大陸



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雪国の死 ≫No. 1
?永久駆動 囁き
「川端康成は嫌いなんだ。」
S氏は酔いがまわったのか饒舌だ。
「雪国ってあるだろ、新潟へ旅行した主人公が芸者と恋愛する話。
 まったく陳腐なセンチメンタリズムだよ。
 自殺した私の最初の妻が、死ぬ前の胸中を託したのがあの有名な雪国の冒頭さ。」
「『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』ですか。」
「前妻は使用人の娘でね。私が見初めた時はまだ16だった。
 私はあいつの両親にすぐ結婚を承知させた。
 あいつには反対する暇もなかったんだ。
 普通の恋愛にずっと未練があったんだろうね。
 まったくつまらん遺言もあったもんだ。
 あいつは体が弱く、子供もできなかった。
 それで親戚が私に新しい縁談をもってきた。
 子供も生めない女房などさっさと離縁しろというんだ。
 もともと親戚はみな結婚に反対だった、身分違いの学のない女だとね。
 連日のように親戚たちが私の留守中に家に来て
 実家に帰れと妻を責めたらしい。
 冬のある日、妻は誰にも告げずに新潟行きの列車に乗った。
 妻が日本海にとびこもうとしていたところに地元の6歳の女の子が通りかかった。
 妻はその子に私への遺言を頼んだんだ。
 『雪国の冒頭を朗読してくれ、それが私の最期の気持ちだ』と。
 前妻にとって私との結婚生活は、つらく長いトンネルみたいな物だった。
 やっとそれを抜けても自分が来れたのはこの寒い雪国でしたとね。
 まあそんなような意味だと思うね。4日後に妻の死体が海からあがったよ。」

「先ほどの前の奥様の話ですが。」
2軒目に寄ったスナックのカウンターで、少し酔いがさめた様子のS氏に言った。
「気になる部分があります。」

問題 S氏の話の中の気になる部分とは?
推理は囁きで
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