それでは、ロックすることにいたします。
ご参加下さった皆様、本当に有り難うございました
心より御礼申し上げます
この後は、この物語の後日談になりますので、ご興味のある方に読んでいただければ幸いでございます
***
その日、私(深山紅)が残業を片付けて帰宅したのは午後10時を過ぎていた。
香りのよい碧螺春を淹れてゆっくりと味わい、一息ついてからパソコンを立ち上げメールを確認する。
(珍しいな、富井君からだ……えっ、連続放火事件!?)
メールには先ごろ山峰市で起こった連続放火事件の顛末が記されていたのだけど、その中に思いがけない名前を見出して、私は驚かずにはいられなかった。
(天上君!……山峰に戻っていたんだ……)
目を閉じて、高校時代の天上の姿を記憶の中から取り出す。
同じクラスではなかったが、図書館で何度か彼を見かけていて、委員だった私は貸し出しの手続きの際に言葉を交わしたこともあった。
(富井君は「釈然としない」から私に顛末を書いてよこしたわけで、彼の感覚は無視できないな。
もしかしたら今回の事件が、より大きな災いの「プレリュード」なのかもしれない。でも、そうだとしたら……)
その時、ある光景がフラッシュバックした。
(あの時の天上君には鬼気迫るものがあった。あんな彼を見たのは、後にも先にもあの一度きり……
どうして覚えていなかったんだろう?……いや、意図的に忘れようとしたんだ、それくらい……)
封印していた記憶が甦り、不吉な予感が心に兆す。
取りあえず気持ちを静めるため、何か聴こうとCDラックに手を伸ばした。
一瞬「フーガの技法」に目が行くが、思い直しヘンデルの「水上の音楽」を取り出す。
(バッハは止めておこう。天上君をこれ以上想い出したくはない……)
<了>
シーラ
ご参加下さった皆様、本当に有り難うございました
心より御礼申し上げます
この後は、この物語の後日談になりますので、ご興味のある方に読んでいただければ幸いでございます
***
その日、私(深山紅)が残業を片付けて帰宅したのは午後10時を過ぎていた。
香りのよい碧螺春を淹れてゆっくりと味わい、一息ついてからパソコンを立ち上げメールを確認する。
(珍しいな、富井君からだ……えっ、連続放火事件!?)
メールには先ごろ山峰市で起こった連続放火事件の顛末が記されていたのだけど、その中に思いがけない名前を見出して、私は驚かずにはいられなかった。
(天上君!……山峰に戻っていたんだ……)
目を閉じて、高校時代の天上の姿を記憶の中から取り出す。
同じクラスではなかったが、図書館で何度か彼を見かけていて、委員だった私は貸し出しの手続きの際に言葉を交わしたこともあった。
(富井君は「釈然としない」から私に顛末を書いてよこしたわけで、彼の感覚は無視できないな。
もしかしたら今回の事件が、より大きな災いの「プレリュード」なのかもしれない。でも、そうだとしたら……)
その時、ある光景がフラッシュバックした。
(あの時の天上君には鬼気迫るものがあった。あんな彼を見たのは、後にも先にもあの一度きり……
どうして覚えていなかったんだろう?……いや、意図的に忘れようとしたんだ、それくらい……)
封印していた記憶が甦り、不吉な予感が心に兆す。
取りあえず気持ちを静めるため、何か聴こうとCDラックに手を伸ばした。
一瞬「フーガの技法」に目が行くが、思い直しヘンデルの「水上の音楽」を取り出す。
(バッハは止めておこう。天上君をこれ以上想い出したくはない……)
<了>