*** 二葉家にて ***
その日、椿が大学から帰宅してポストを見ると、一通の封書が入っていた。いかにも質の良さそうなクリーム色の封筒だった。
『二葉椿様』とワープロ打ちされているが、差出人の名前はない。切手もなく封もされていない。元から封がされていないように見える。
少々気味が悪い気もしないではなかったが、中に何があるのだろうという好奇心には勝てず、椿は封筒から手紙を取り出した。
封筒と同じクリーム色の便箋には、これまた封筒と同じくワープロ打ちでこのように書かれていた。
ご機嫌麗しゅう存じます。
早速ですけれど私、橙市立美術館に特別展示中の宝石をひとつ頂戴したいんです。
でも盗みに躊躇いますので貴女に私を止めて頂きたくターゲットを暗号にしましたの。
貴女が明日の正午までに解くことができれば橙市立美術館に盗みに入りませんわ。
どのように解いても結構ですが基本を大切になさって。近くに答えがあるかもですし。
わかりましたら、下記のメールアドレスに、そのターゲットを送信してくださいませね。
取り急ぎ要件のみにて失礼。あらあらかしこ
怪盗ブラックパール
名前の後にはフリーメールのメールアドレスと、凝ったサインらしきものがあった。
(……何よ? コレ)
1枚便箋をめくると、そこには案の定というか何と言うか、暗号が記されている。
bar=大さじ2
トランペット:大さじ3・小さじ1
オーボエダモーレ:小さじ1
テナーサックス:小さじ1
コントラバス(solo):大さじ3・小さじ2
ピッコロ:小さじ1
バスクラリネット:大さじ4
(2/19一部修正)
(ふむふむ…でもさすがにコレだけじゃ、ね)
知的好奇心を刺激されたのか、椿はいつの間にか暗号を解く気でいる。
インターネットで橙市立美術館のHPにアクセスすると『特別展示:宝石展〜きらめく石の世界〜』の文字が大きく出ていたので、クリックして進んでみる。
「えーっと…『大地の星(ダイヤモンド)』『戦乙女の血(ルビー)』『天使の瞳(エメラルド)』『聖母の心(サファイア)』『月のしずく(アメジスト)』『女神のため息(ローズクォーツ)』…って有名なものばかりじゃない。私も普通に見に行こうかな…」
次第に楽しくなってきたのか、椿は鼻歌まじりにインターネットで何事かを調べている。
(それにしても大さじ・小さじとはね。でも言いたいことはわかるんだけど、ちょっと間違ってるのよね…あんまり細かいことは気にするなってことかしら?)
などと思いつつ、返信用のメールを作成する。
その日、椿が大学から帰宅してポストを見ると、一通の封書が入っていた。いかにも質の良さそうなクリーム色の封筒だった。
『二葉椿様』とワープロ打ちされているが、差出人の名前はない。切手もなく封もされていない。元から封がされていないように見える。
少々気味が悪い気もしないではなかったが、中に何があるのだろうという好奇心には勝てず、椿は封筒から手紙を取り出した。
封筒と同じクリーム色の便箋には、これまた封筒と同じくワープロ打ちでこのように書かれていた。
名前の後にはフリーメールのメールアドレスと、凝ったサインらしきものがあった。
(……何よ? コレ)
1枚便箋をめくると、そこには案の定というか何と言うか、暗号が記されている。
(ふむふむ…でもさすがにコレだけじゃ、ね)
知的好奇心を刺激されたのか、椿はいつの間にか暗号を解く気でいる。
インターネットで橙市立美術館のHPにアクセスすると『特別展示:宝石展〜きらめく石の世界〜』の文字が大きく出ていたので、クリックして進んでみる。
「えーっと…『大地の星(ダイヤモンド)』『戦乙女の血(ルビー)』『天使の瞳(エメラルド)』『聖母の心(サファイア)』『月のしずく(アメジスト)』『女神のため息(ローズクォーツ)』…って有名なものばかりじゃない。私も普通に見に行こうかな…」
次第に楽しくなってきたのか、椿は鼻歌まじりにインターネットで何事かを調べている。
(それにしても大さじ・小さじとはね。でも言いたいことはわかるんだけど、ちょっと間違ってるのよね…あんまり細かいことは気にするなってことかしら?)
などと思いつつ、返信用のメールを作成する。