クイズ大陸



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?シーラ
予定より遅れてしまいましたが、それでは正解発表を行います。

***

「それはね、……『徳の日和』と『誰の円利』の仮名を並べ替えると、『比翼の鳥・連理の枝』っていう、夫婦や恋人同士の仲睦まじさを表現する言葉になるの。白楽天の<長恨歌>が出典なのだけど、聞いた記憶ないかしら?」
「あっ、そうか。そういえば昔漢文で習ったわね。……紅ちゃん、有り難う!これでスッキリしたわ。」
「いえいえ、どういたしまして。」

優しい労いの言葉の後、従姉はふっと黙り込み、それから思い切ったように言葉を継いだ。
「……ふふ、本当はね、紅ちゃんの声が聞きたかったの。」
(やっぱり……暗号は口実だったんだ……)
でも一体何と言葉を掛ければいいのだろう?……ほんのちょっとした迷い、なのだろうか?
取りあえず呼吸を整え、ゆっくりと、落ち着いた声を出すように務める。
「そう思ってもらえて嬉しいわ。……これからは、良きパートナーが傍にいるのだから、私の出番はないかもしれないけど……」

受話器の向こうから、かすかな溜息が耳に伝わってきた。
「彼はもちろん良い人だけど、でもいざとなるとね、何だか急に……」
「それはそうよ、結婚だって何だって、新しい生活に踏み出す時は、不安がつきもの……でも、大抵の人は適応力があるから、何とかしてしまえるのよね。勿論、姉さんだって。」
「どうかなあ?……紅ちゃんこそ昔から何でも一人で考えて決めて、それを貫き通してきたからね……それでも、進学するんで上京した時不安はあったんだ?」
「今だから言うけど、多少はあったわ……でも姉さんの場合は、一人じゃない、でしょ?」
「まあ、そうね。二人で頑張るって決めたのだから、今更どうこう言ってもしょうがないわね。……有り難う、紅ちゃん。」
「え?」
「気づいたのでしょう?私がちょっとナーバスになっているのに……でも、心配かけちゃったけど、もう平気よ。」
その声の調子に、私は漸く安堵した。
(ああ、吹っ切れたみたい。)

電話を終えた後、見るともなく窓から夜空に目をやると、晩秋の澄んだ空気の中、星がいつもよりくっきりと輝いて見えた。
(明日はきっと晴れるわね……これからも。)
                                  <了>


ということで、正解は本文中にありますように、「比翼の鳥・連理の枝(ひよくのとり・れんりのえだ)」という、夫婦や恋人同士の仲睦まじさを表す語句で、出典は中国唐代の詩人白居易(楽天)の七言古詩<長恨歌>になります。  

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