太傅の事件簿『タイピンは何を語るのか…』 ≫No. 1
たいふ
2007/05/03 17:13
昨日の内に地方での浮気調査を終え、依頼者への報告書も纏めた私は、ホテルの部
屋でグラスを傾けながら時計に目をやった…22:30か…今回は仕事が仕事なのでヒロシ君は居ない(浮気調査
に興味は無いらしい)…久し振りにゆったりとした時間を過ごすことが出来そうだと思っていたが、救急車とパトカー
のサイレンが鳴り響いた。到着し30分ほど経っただろうか…未だパトカーは引き上げる様子がない。
よほどの重大事件なら様子だけでも窺おうかとも思ったが、私も疲れているし、アルコールも多少入っている…
『君子危きに近寄らず』とベッドに入ろうとした時、部屋のドアをノックされた。嗚呼…こちらが寄らずとも向こうからやって
来る…そんなものさと諦めてドアを開けると…
若刑事「こんばんは〜、太傅さ〜ん!!宿泊名簿の中に貴方の名前を見つけましたので…是非ともお力をお借りしたい
と思いまして…話…聞いて頂けますか?まぁ、どっちにしろ僕は勝手に話を進めますけど…」
太傅「若井君……分かった…伺いましょう。入り口では何ですから取りあえず中へ…」
殺人事件らしい…
被害者は沖田 勇(60)
死因は絞殺。死亡推定時刻は20:30〜21:30の間。
第一発見者はホテルの従業員
室内を物色された様子は無く、被害者の部屋に出入りした者の目撃者はない。また宿泊客以外の不審な人物の
目撃情報もないことから、容疑者は宿泊客の中にいるのではないかと調べた所…被害者と関わりのある人物3名
(アリバイもなし)が浮かび上がってきた。
愛田 愛(27)沖田の愛人と噂されるホステス。
好川 伊織 (42)秘書
伊東 裕太郎(55)二十年来の友人であり、ライバル会社の重役。
若刑事「それでですね〜、この3人に話を聞いてあるんですよ…っと、その前に大事な事を言うのを忘れてました。
実は被害者…右手にネクタイピンを握っていたんです…これです」
太傅「ふむ…ちょっと拝見…普通のクリップ型のタイピンですが、白金でしょうか…良い物ですね」
若刑事「そう言えば被害者の部屋のハンガーに掛かっていた上着や、身に付けていた物は全部ブランド物ですよ…
上着の襟に刺していたピンの宝石だけでも僕の給料何ヶ月分だろう…凶器に使われたネクタイも高いんだろ
うなぁ…デザインも両剣が太くて…」
太傅「中央が細い…?」
若刑事「そうなんですよ…やっぱり高い物ですかね?」
太傅「さぁ…値段は分かりませんがお洒落な方だったようですね。…ん?このタイピン…裏に何か彫って有りますね…
【I LOVE YOU】」
若刑事「えっ?本当だ…誰かからの贈り物ですかね…」
太傅「さぁ、どうでしょうか…とにかく3人の話を聞かせて下さい」
愛田「メグはね〜、イサミンのぉ〜、2号さんなんだよぉ〜ウフフッ…カッコ良いでしょ〜イサミン…いっつもスカーフ
みたいなのを首に巻いててね〜真珠とか宝石がねぇ〜光ってるの〜……っく、うぅ…イサミ〜ンどうして死ん
じゃったのぉ〜。明日は一緒に…ウワ〜ンッ!!」
(この後は、泣きじゃくる彼女をあやすのに必死で…情報どころではありませんでしたよ)
伊東「何…勇もこのホテルに泊まっていたのか?それは知らなかったよ…殺されただと…ふん、どうせ女絡みに決
まっている。仕事の時は真面目な奴だが、プライベートは化けの皮が剥がれるのさ。この前も一緒に行った
クラブで…俺の狙った女を横取りしやがって…あの時ばかりは俺も腹が立って、奴の自慢のネクタイを掴んで
首を締め上げてやったのさ…そうしたら、タイピンでネクタイが破れてなぁ…泣きそうな顔してやがったが、
ざまあ見ろだ。えっ?首をネクタイで締められ殺された?…言っとくが、俺じゃないぞ!!ん、愛?
…あぁ、あの頭の悪そうな…あれは俺の好みじゃないよ…」
好川「いつも折目正しく誠実に、謙虚にいらっしゃって…もし独身だったら…あっ!!今のは忘れて下さいっ!!
えっ…スカーフ?知りませんよそんなの…社長は会社では普通のネクタイを締めていますし、プライベートでも
ネクタイは締める…と仰っていましたから、スカーフなんて巻かないと思いますよ。女性問題ですか?…私も公私
はきっちり区別しておりますので社長の私生活まで関知いたしておりません…が、先日社長の机の上に【愛】と
書かれたピンクの名刺が御座いました」
若刑事「本当に身嗜みに気を使う方だったのですね…ネクタイなんて巻かなきゃ、絞殺されずに済んだのにお洒落の
しどころを誤りましたかね?」
太傅「ネクタイが殺意を抱く決め手ではありませんから、絞殺が刺殺に変わるぐらいのもので、彼の死自体は避けられ
なかったのではないでしょうか…」
皆さん、如何でしょう。犯人が誰か分かりますか?
屋でグラスを傾けながら時計に目をやった…22:30か…今回は仕事が仕事なのでヒロシ君は居ない(浮気調査
に興味は無いらしい)…久し振りにゆったりとした時間を過ごすことが出来そうだと思っていたが、救急車とパトカー
のサイレンが鳴り響いた。到着し30分ほど経っただろうか…未だパトカーは引き上げる様子がない。
よほどの重大事件なら様子だけでも窺おうかとも思ったが、私も疲れているし、アルコールも多少入っている…
『君子危きに近寄らず』とベッドに入ろうとした時、部屋のドアをノックされた。嗚呼…こちらが寄らずとも向こうからやって
来る…そんなものさと諦めてドアを開けると…
若刑事「こんばんは〜、太傅さ〜ん!!宿泊名簿の中に貴方の名前を見つけましたので…是非ともお力をお借りしたい
と思いまして…話…聞いて頂けますか?まぁ、どっちにしろ僕は勝手に話を進めますけど…」
太傅「若井君……分かった…伺いましょう。入り口では何ですから取りあえず中へ…」
殺人事件らしい…
被害者は沖田 勇(60)
死因は絞殺。死亡推定時刻は20:30〜21:30の間。
第一発見者はホテルの従業員
室内を物色された様子は無く、被害者の部屋に出入りした者の目撃者はない。また宿泊客以外の不審な人物の
目撃情報もないことから、容疑者は宿泊客の中にいるのではないかと調べた所…被害者と関わりのある人物3名
(アリバイもなし)が浮かび上がってきた。
愛田 愛(27)沖田の愛人と噂されるホステス。
好川 伊織 (42)秘書
伊東 裕太郎(55)二十年来の友人であり、ライバル会社の重役。
若刑事「それでですね〜、この3人に話を聞いてあるんですよ…っと、その前に大事な事を言うのを忘れてました。
実は被害者…右手にネクタイピンを握っていたんです…これです」
太傅「ふむ…ちょっと拝見…普通のクリップ型のタイピンですが、白金でしょうか…良い物ですね」
若刑事「そう言えば被害者の部屋のハンガーに掛かっていた上着や、身に付けていた物は全部ブランド物ですよ…
上着の襟に刺していたピンの宝石だけでも僕の給料何ヶ月分だろう…凶器に使われたネクタイも高いんだろ
うなぁ…デザインも両剣が太くて…」
太傅「中央が細い…?」
若刑事「そうなんですよ…やっぱり高い物ですかね?」
太傅「さぁ…値段は分かりませんがお洒落な方だったようですね。…ん?このタイピン…裏に何か彫って有りますね…
【I LOVE YOU】」
若刑事「えっ?本当だ…誰かからの贈り物ですかね…」
太傅「さぁ、どうでしょうか…とにかく3人の話を聞かせて下さい」
愛田「メグはね〜、イサミンのぉ〜、2号さんなんだよぉ〜ウフフッ…カッコ良いでしょ〜イサミン…いっつもスカーフ
みたいなのを首に巻いててね〜真珠とか宝石がねぇ〜光ってるの〜……っく、うぅ…イサミ〜ンどうして死ん
じゃったのぉ〜。明日は一緒に…ウワ〜ンッ!!」
(この後は、泣きじゃくる彼女をあやすのに必死で…情報どころではありませんでしたよ)
伊東「何…勇もこのホテルに泊まっていたのか?それは知らなかったよ…殺されただと…ふん、どうせ女絡みに決
まっている。仕事の時は真面目な奴だが、プライベートは化けの皮が剥がれるのさ。この前も一緒に行った
クラブで…俺の狙った女を横取りしやがって…あの時ばかりは俺も腹が立って、奴の自慢のネクタイを掴んで
首を締め上げてやったのさ…そうしたら、タイピンでネクタイが破れてなぁ…泣きそうな顔してやがったが、
ざまあ見ろだ。えっ?首をネクタイで締められ殺された?…言っとくが、俺じゃないぞ!!ん、愛?
…あぁ、あの頭の悪そうな…あれは俺の好みじゃないよ…」
好川「いつも折目正しく誠実に、謙虚にいらっしゃって…もし独身だったら…あっ!!今のは忘れて下さいっ!!
えっ…スカーフ?知りませんよそんなの…社長は会社では普通のネクタイを締めていますし、プライベートでも
ネクタイは締める…と仰っていましたから、スカーフなんて巻かないと思いますよ。女性問題ですか?…私も公私
はきっちり区別しておりますので社長の私生活まで関知いたしておりません…が、先日社長の机の上に【愛】と
書かれたピンクの名刺が御座いました」
若刑事「本当に身嗜みに気を使う方だったのですね…ネクタイなんて巻かなきゃ、絞殺されずに済んだのにお洒落の
しどころを誤りましたかね?」
太傅「ネクタイが殺意を抱く決め手ではありませんから、絞殺が刺殺に変わるぐらいのもので、彼の死自体は避けられ
なかったのではないでしょうか…」
皆さん、如何でしょう。犯人が誰か分かりますか?