さよなら、忘れないで。 ≫No. 1
香歩 kaho
2007/04/04 12:59
いきなりですが、始めます。
学校から帰ってきた妹の柚希は、
「お姉ちゃん、聞いて!!」
と、私に向かって勢いよく喋りだした。
段ボールの巣窟になっているリビングの床に、赤いランドセルを放り投げながら。
段ボールと身の回り品意外家にないのは、私たちが引っ越すからだ。とはいえ、今回が初めてではない。転勤を繰り返す、いわゆる転勤族の私たちは、今までに数回以上、いろんな町を点々としてきた。
「どうしたの? そんなに慌てて。」
「今日ね、学校でスゴイことがあったの!」
段ボールに腰を下ろして、柚希は嬉しそうに話した。
「私、クラスの人たちから紙で出来た花束もらったのよ。一人ひとりのメッセージが書いてて、花の色が青だった。
それで、友だちの瑠美ちゃんが渡してくれたんだけど、瑠美ちゃんね、花束をくれた後、
「柚希ちゃんは、マジック見たことある?」って聞いてきたの。私、「見たことないよ。」っていったら、
「今から見せてあげるね。」って、笑顔でいってきたわ。私が返事もしないまま、花束持ってみんなどっかにいっちゃった。」
ふうん、と私は相づちを打つ。
自慢じゃないけど、私はそんなものもらわなかった。
「それでね、五分ぐらいしてみんな帰ってきたの。一緒に持っていった花束が見えなかったけど。
また瑠美ちゃんが出てきて、もう一回花束くれたの。そしたら!」
どうやら、ここからが大事なポイントみたい。一番にいたいことのとき、声を大きくするのは柚希の特徴だ。
「――そしたら、さっきまで青かった花が、全部ピンクになってたのよ!!!」
なるほど、それは不思議じゃない。みんな、どんな手を使ったんだろう?
「でね、「柚希ちゃんは、青よりピンクのほうが好きでしょ?」っていって、瑠美ちゃんは俯いて、私に押しつけるみたいにして帰っていったの。
それから私も教室を出て、家に帰ってきたんだけど‥‥‥」
「それは不思議ね。柚希、その花束、見せてくれない?」
柚希が大事そうに抱えてきた花束は、確かに紙の花が全部ピンクだった。
『柚希ちゃん、元気でね!』
『宮原、おれたちのこと忘れるなよ。』 ‥‥‥etc
柚希にとってはスゴク嬉しいであろう別れの言葉が、男女とわず並べられていた。
「みんながどっかにいってる間に、また新しくつくったんじゃない?」
「違う。だって、今日、手に包帯してる子がいたもの。その子の分も、ちゃんとあるから。」
へぇ。じゃ、違うわね。
「あら?」
しばらく、その花束を遠巻きに眺めていた私は、ふと不審な点に気がついた。
「それ、ちょっとかして?」
柚希は快く手渡してくれた。
一カ所だけ、少し青っぽいところがあったのだ。まるで、そこだけ青色の絵の具を飛ばしたみたいに。
さらに見ようと顔を近づけた私は、思わず
「!」
びっくりして花束を顔から遠ざけた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「これ、酸っぱい匂いがするんだけど?」
なんか、レモンみたいな、お酢みたいな、鼻につく匂い。
「ほんとだ。花に、香水かなんかかけたのかな?」
なにかを‥‥‥かける?
柚希の言葉で、私は閃いた。
そっか、そうだったんだ!
さて、この後私は謎を解くことが出来ました。
あなたには、解けるでしょうか?
学校から帰ってきた妹の柚希は、
「お姉ちゃん、聞いて!!」
と、私に向かって勢いよく喋りだした。
段ボールの巣窟になっているリビングの床に、赤いランドセルを放り投げながら。
段ボールと身の回り品意外家にないのは、私たちが引っ越すからだ。とはいえ、今回が初めてではない。転勤を繰り返す、いわゆる転勤族の私たちは、今までに数回以上、いろんな町を点々としてきた。
「どうしたの? そんなに慌てて。」
「今日ね、学校でスゴイことがあったの!」
段ボールに腰を下ろして、柚希は嬉しそうに話した。
「私、クラスの人たちから紙で出来た花束もらったのよ。一人ひとりのメッセージが書いてて、花の色が青だった。
それで、友だちの瑠美ちゃんが渡してくれたんだけど、瑠美ちゃんね、花束をくれた後、
「柚希ちゃんは、マジック見たことある?」って聞いてきたの。私、「見たことないよ。」っていったら、
「今から見せてあげるね。」って、笑顔でいってきたわ。私が返事もしないまま、花束持ってみんなどっかにいっちゃった。」
ふうん、と私は相づちを打つ。
自慢じゃないけど、私はそんなものもらわなかった。
「それでね、五分ぐらいしてみんな帰ってきたの。一緒に持っていった花束が見えなかったけど。
また瑠美ちゃんが出てきて、もう一回花束くれたの。そしたら!」
どうやら、ここからが大事なポイントみたい。一番にいたいことのとき、声を大きくするのは柚希の特徴だ。
「――そしたら、さっきまで青かった花が、全部ピンクになってたのよ!!!」
なるほど、それは不思議じゃない。みんな、どんな手を使ったんだろう?
「でね、「柚希ちゃんは、青よりピンクのほうが好きでしょ?」っていって、瑠美ちゃんは俯いて、私に押しつけるみたいにして帰っていったの。
それから私も教室を出て、家に帰ってきたんだけど‥‥‥」
「それは不思議ね。柚希、その花束、見せてくれない?」
柚希が大事そうに抱えてきた花束は、確かに紙の花が全部ピンクだった。
『柚希ちゃん、元気でね!』
『宮原、おれたちのこと忘れるなよ。』 ‥‥‥etc
柚希にとってはスゴク嬉しいであろう別れの言葉が、男女とわず並べられていた。
「みんながどっかにいってる間に、また新しくつくったんじゃない?」
「違う。だって、今日、手に包帯してる子がいたもの。その子の分も、ちゃんとあるから。」
へぇ。じゃ、違うわね。
「あら?」
しばらく、その花束を遠巻きに眺めていた私は、ふと不審な点に気がついた。
「それ、ちょっとかして?」
柚希は快く手渡してくれた。
一カ所だけ、少し青っぽいところがあったのだ。まるで、そこだけ青色の絵の具を飛ばしたみたいに。
さらに見ようと顔を近づけた私は、思わず
「!」
びっくりして花束を顔から遠ざけた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「これ、酸っぱい匂いがするんだけど?」
なんか、レモンみたいな、お酢みたいな、鼻につく匂い。
「ほんとだ。花に、香水かなんかかけたのかな?」
なにかを‥‥‥かける?
柚希の言葉で、私は閃いた。
そっか、そうだったんだ!
さて、この後私は謎を解くことが出来ました。
あなたには、解けるでしょうか?