版画家殺人事件 (>>22に解決編を載せました)≫ No.1 ≫No. 2
寒來
2007/02/05 03:52
被害者の死亡推定時刻は昨晩の23時前後で、専らその時間に別荘にいるのは庚岱だけだったそうだ。
事件当夜、夕食の時間までは弟子兼助手(主に雑用担当だが)の森崎花恵(もりさき はなえ)26歳と
家政婦の岸田成美(きしだ なるみ)32歳が居たようだが、森崎は夕食準備前に岸田は夕食準備後に帰宅したとのことであった。
妻の鞍馬菊乃(くらま きくの)44歳に至っては、別荘に篭りっ放しの夫に愛想を尽かし、いつもの様に一人自宅に居たそうだ。
そうして14時過ぎ、少し寝過ぎた私の所為で遅れて事情聴取が始まった。
来栖「え〜っと、態々ご足労頂き申し訳ありません。少し皆さんにお話を聞かせてもらえばと思って集まってもらいました」
菊乃「あの、一体何がどうなってるんでしょうか?夫は自殺だって聞いてるのに、何か問題でもあるんですか?」
来栖「えぇまぁ、違法拳銃を持ってる時点で問題なんですが〜因みに皆さんは拳銃の事をご存知でしたか?」
菊乃「あぁ趣味でやってるアレね、一度自慢げに見せられたわ。まさか人が死ぬ程のものとはね」
成美「私と花恵さんも知ってました。泥棒でも来たらこれで脅してやれって言われてて、あの引き出しの中に
何時もは入っていたはずです。ね、花恵さん」と、家具の一部を指差しながら花恵に同意を求めた。
花恵「はい、護身用にって事で、でも、見ただけなので本物かどうかはわからなくて、むやみに触れないし」
と、お互い顔を見合わせて成美と花恵はうなずき合った。
来栖「なるほど。えー実はですね、ご主人は自殺ではなく他殺の疑いがでてきましてね、それでお話をと」
そう聞くと、少し声を荒げて妻の菊乃は「他殺ってどう言うことよ!?」と立ち上がったのを見て、
私が「まぁ奥さん落ち着いて、未だ完全にそうと決まったわけじゃないので、念の為に聞いてるんですよ」
となだめるも、「大体あなたは何?人が死んでるって言うのにその眠たそうな顔は!」と
手痛い反撃を受けつつ、寝坊したことを謝り何とか再開したのだった。
来栖「え〜っと、それじゃ先ず、第一発見者の岸田さんにお伺いしますが、昨晩の鞍馬さんに何か変わった様子は?」
成美「いえ、特に変った様子というのは感じ取れませんでした」
来栖「そうですか。では、昨晩の11時頃何をしていか、それと今朝の発見時のことを教えてください」
成美「はい、えっと明日も早いので早めに寝ようと思い10時頃には寝ました。それで今朝着いてから先ず朝食を作って
それから鞍馬さんが現れないので呼びに部屋に行ったのですが、返事が無いので書斎かと思い向かったら
そこに倒れている鞍馬さんを発見して、で、気が動転してしまって、少し通報が遅れてしまいました、すいません・・・」
来栖「あ、いえいえお気になさらずに、あっ、その眼鏡は普段もさてるんですか?最近流行ってますよね〜?」
成美「あ、はい、仕事中はコンタクトですが、それ以外は眼鏡の方が落ち着くので」
寒郡「何聞いてんだ〜眼鏡なんか関係ねぇだろう」
来栖「あはは、そうですよねぇ。あっ、事件があった時刻に部屋に居たという事を証明してくれる人はいますか?」
成美「いえ、一人暮らしなもので、すいません」
来栖「いえいえ、そうですか。では、次は森崎さんで、えっと昨晩の11時頃は何されてました?」
花恵「はい、今日もこっちに来る予定だったので10時半には寝ました。私も一人暮らしなので証明してくれる人はいません。」
来栖「そうですか、因みに今朝の状況はどうでした?」
花恵「はい、今朝きてみたら大変なことになってて私、何がなんだかで・・・すいません」
と、瞳を潤ませ少し詰まりながらそう答えた。
来栖「あああそうですよね、びっくりしますよね、お気持ち分かります、あ〜とっても可愛いペンダントですねぇ」
花恵「あ、はい、有難うございます。これ私の宝物なんです」
「ったく、こいつは」と呆れる私を尻目に聴取は進んでいくのであった。
来栖「では、最後に奥様の」と、全てを言い終わらぬうちに、また業を煮やしたかのように、
「何で私まで犯人扱いされなきゃならないのよ、大体あの人は自分のことばっかりで家のことなんか全然」
とまくし立てられ、来栖も私も圧倒されつつ、周囲の全員で何とかなだめて落ち着かせると、
「だいたい殺されて当然なのよ、あんな自分のことしか考えない傲慢男」と、自分の夫を公然と非難しこう続けた。
菊乃「確か腹違いの弟さんがいるみたいで、ここにも顔出してたみたいだけど。なんでも最近ではお金に困ってて、
いくらか貸してくれないかって言われたみたいよ。結局貸さなかったらしいけど」
来栖「はぁちょっと白状で・・あ、いや失礼。奥様のされてらっしゃる指輪もお高そうですねぇ」
菊乃「全く出せない金額じゃあるまいし、いくら腹違いだからって冷たすぎるわよね」
と来栖のおべっかを聞き流す夫人と不甲斐ない部下を尻目に、
寒郡「おい、弟の方も連絡つけてこっちに来てもらえ」と他の捜査員に指示し、一旦休憩を取ることにした。
(数時間後・・・)
血相を変えた男が部屋へと駆け込んできた。腹違いの弟の神代達也(かみしろ たつや)42歳であった。
庚岱と達也は両親の死をきっかけに最近まで疎遠状態であったが、父の跡を継いだ工場(こうば)の経営が苦しく、
有名になった庚岱に金銭の事で相談していたらしい。
一方、鞍馬家に婿養子として入った庚岱は旧姓時代にも作品は出していたものの、一向に認められず、
そんな折に知り合った菊乃と大恋愛の末結婚。義父母共に寛容な人物で何かと援助をしてもらっていたらしく、
そのお陰で今の鞍馬庚岱が在ると言っても過言ではないそうだ。
そんな苦労をした鞍馬も、弟の気持ちを汲む度量を養うどころか、傲慢な道を歩んでしまったらしい・・・
来栖「あ、神代さんですか?」 達也「は、はい」 来栖「どうぞこちらにお座り下さい」 達也「はい・・」
達也「あ、お姉さんですよね?初めまして弟の達也です」と、座り際に挨拶を交わすと、聴取を三度再開した。
来栖「えっと、お二人は今日会うのが初めてなんですか?」
達也「え、ええ。兄とは、兄が結婚する前から疎遠になってましたから」
来栖「そうなんですか。えっと簡単な説明で申し訳ないんですが、ざっと状況だけ説明させてもらいますね」
と、いつに無く体育会家がなりを潜め神妙に話が進み、ようやく達也にも落ち着きが戻ってきたようであった。
こう言う、仕事に対する真摯な態度だけは、私がこいつをかっている理由でもあったが、それは本人には絶対言わないのである(笑
来栖「それでですね神代さん、昨晩の11時頃はどこで何をされてましたか?」
達也「はい、えーっと、実は昨日の夜9時頃に兄にお金の事で相談しに来たんですが、考えておくとだけ言われまして」
来栖「その〜お金というのはどういったことで?」
達也「はい、私は小さな町工場を経営してるんですが、その資金の事で兄に相談しに来たんです」
来栖「それは色々大変ですねぇ。あ、それで、その後の11時頃は」
達也「あ、すいません、えっと、確か11時頃には家に帰り着いて、その後酒を飲みながら気を晴らしているうちに
いつの間にか寝ちゃいました。一人暮らしなもので証明してくれる人はいませんが・・」
来栖「なるほどわかりました。あっそれと因みになんですが、お兄さんが改造銃をお持ちだったのはご存知でしたか?」
達也「あっ、アレって改造銃だったんですか・・あの、実は初めて来た時に兄があの辺りの引き出しから取り出したのを見て、
『そんなの持ってて良いの』かって聞いても、『趣味なんだよ』の一言で・・・」
達也「恐らくおもちゃかなんかだろうって思ってたんですが、まさか改造銃だとは知りませんでした」
その後、家の中や現場を見てもらい、変わったところは無いか確認してもらったが、特にこれといって変わりは無かった。
また、一通り庚岱の最近の様子などを聞いたものの、やはり自殺に結びつくようなこれといった話は無かった。
結婚して数年は大して芽が出なかったらしいが、最近では世間にも認められる程になったこともあり、
まさにこれからという大事な時に死を迎える程、愚かな人物ではなかっと考えるのが妥当だろう。
その後、念の為に任意で指紋採取をし、それぞれにはお引取り願いその日はそれで終わったのであった。
来栖「それでは皆さん何か詳しいことが分かりましたらまたご連絡いたしますので」
こうして、私にとって長い一日が終わろうとしていた・・・
来栖「自分はこれから署に戻って報告書作りますが、寒さんは?」
寒郡「あぁもう昨日から動きっ放しだからこのまま直帰するわ、後適当にやっといてくれよ」と言い終わるとまた大きなあくびを一つ、
疲労感が全身を襲い、自宅で布団に入って直ぐ泥のように眠るのであった・・・その後に待ち受ける大きな波を知らずに・・・・・
(ダイイングメッセージ編へと続く・・・)
寒來 2007/02/05 03:52
事件当夜、夕食の時間までは弟子兼助手(主に雑用担当だが)の森崎花恵(もりさき はなえ)26歳と
家政婦の岸田成美(きしだ なるみ)32歳が居たようだが、森崎は夕食準備前に岸田は夕食準備後に帰宅したとのことであった。
妻の鞍馬菊乃(くらま きくの)44歳に至っては、別荘に篭りっ放しの夫に愛想を尽かし、いつもの様に一人自宅に居たそうだ。
そうして14時過ぎ、少し寝過ぎた私の所為で遅れて事情聴取が始まった。
来栖「え〜っと、態々ご足労頂き申し訳ありません。少し皆さんにお話を聞かせてもらえばと思って集まってもらいました」
菊乃「あの、一体何がどうなってるんでしょうか?夫は自殺だって聞いてるのに、何か問題でもあるんですか?」
来栖「えぇまぁ、違法拳銃を持ってる時点で問題なんですが〜因みに皆さんは拳銃の事をご存知でしたか?」
菊乃「あぁ趣味でやってるアレね、一度自慢げに見せられたわ。まさか人が死ぬ程のものとはね」
成美「私と花恵さんも知ってました。泥棒でも来たらこれで脅してやれって言われてて、あの引き出しの中に
何時もは入っていたはずです。ね、花恵さん」と、家具の一部を指差しながら花恵に同意を求めた。
花恵「はい、護身用にって事で、でも、見ただけなので本物かどうかはわからなくて、むやみに触れないし」
と、お互い顔を見合わせて成美と花恵はうなずき合った。
来栖「なるほど。えー実はですね、ご主人は自殺ではなく他殺の疑いがでてきましてね、それでお話をと」
そう聞くと、少し声を荒げて妻の菊乃は「他殺ってどう言うことよ!?」と立ち上がったのを見て、
私が「まぁ奥さん落ち着いて、未だ完全にそうと決まったわけじゃないので、念の為に聞いてるんですよ」
となだめるも、「大体あなたは何?人が死んでるって言うのにその眠たそうな顔は!」と
手痛い反撃を受けつつ、寝坊したことを謝り何とか再開したのだった。
来栖「え〜っと、それじゃ先ず、第一発見者の岸田さんにお伺いしますが、昨晩の鞍馬さんに何か変わった様子は?」
成美「いえ、特に変った様子というのは感じ取れませんでした」
来栖「そうですか。では、昨晩の11時頃何をしていか、それと今朝の発見時のことを教えてください」
成美「はい、えっと明日も早いので早めに寝ようと思い10時頃には寝ました。それで今朝着いてから先ず朝食を作って
それから鞍馬さんが現れないので呼びに部屋に行ったのですが、返事が無いので書斎かと思い向かったら
そこに倒れている鞍馬さんを発見して、で、気が動転してしまって、少し通報が遅れてしまいました、すいません・・・」
来栖「あ、いえいえお気になさらずに、あっ、その眼鏡は普段もさてるんですか?最近流行ってますよね〜?」
成美「あ、はい、仕事中はコンタクトですが、それ以外は眼鏡の方が落ち着くので」
寒郡「何聞いてんだ〜眼鏡なんか関係ねぇだろう」
来栖「あはは、そうですよねぇ。あっ、事件があった時刻に部屋に居たという事を証明してくれる人はいますか?」
成美「いえ、一人暮らしなもので、すいません」
来栖「いえいえ、そうですか。では、次は森崎さんで、えっと昨晩の11時頃は何されてました?」
花恵「はい、今日もこっちに来る予定だったので10時半には寝ました。私も一人暮らしなので証明してくれる人はいません。」
来栖「そうですか、因みに今朝の状況はどうでした?」
花恵「はい、今朝きてみたら大変なことになってて私、何がなんだかで・・・すいません」
と、瞳を潤ませ少し詰まりながらそう答えた。
来栖「あああそうですよね、びっくりしますよね、お気持ち分かります、あ〜とっても可愛いペンダントですねぇ」
花恵「あ、はい、有難うございます。これ私の宝物なんです」
「ったく、こいつは」と呆れる私を尻目に聴取は進んでいくのであった。
来栖「では、最後に奥様の」と、全てを言い終わらぬうちに、また業を煮やしたかのように、
「何で私まで犯人扱いされなきゃならないのよ、大体あの人は自分のことばっかりで家のことなんか全然」
とまくし立てられ、来栖も私も圧倒されつつ、周囲の全員で何とかなだめて落ち着かせると、
「だいたい殺されて当然なのよ、あんな自分のことしか考えない傲慢男」と、自分の夫を公然と非難しこう続けた。
菊乃「確か腹違いの弟さんがいるみたいで、ここにも顔出してたみたいだけど。なんでも最近ではお金に困ってて、
いくらか貸してくれないかって言われたみたいよ。結局貸さなかったらしいけど」
来栖「はぁちょっと白状で・・あ、いや失礼。奥様のされてらっしゃる指輪もお高そうですねぇ」
菊乃「全く出せない金額じゃあるまいし、いくら腹違いだからって冷たすぎるわよね」
と来栖のおべっかを聞き流す夫人と不甲斐ない部下を尻目に、
寒郡「おい、弟の方も連絡つけてこっちに来てもらえ」と他の捜査員に指示し、一旦休憩を取ることにした。
(数時間後・・・)
血相を変えた男が部屋へと駆け込んできた。腹違いの弟の神代達也(かみしろ たつや)42歳であった。
庚岱と達也は両親の死をきっかけに最近まで疎遠状態であったが、父の跡を継いだ工場(こうば)の経営が苦しく、
有名になった庚岱に金銭の事で相談していたらしい。
一方、鞍馬家に婿養子として入った庚岱は旧姓時代にも作品は出していたものの、一向に認められず、
そんな折に知り合った菊乃と大恋愛の末結婚。義父母共に寛容な人物で何かと援助をしてもらっていたらしく、
そのお陰で今の鞍馬庚岱が在ると言っても過言ではないそうだ。
そんな苦労をした鞍馬も、弟の気持ちを汲む度量を養うどころか、傲慢な道を歩んでしまったらしい・・・
来栖「あ、神代さんですか?」 達也「は、はい」 来栖「どうぞこちらにお座り下さい」 達也「はい・・」
達也「あ、お姉さんですよね?初めまして弟の達也です」と、座り際に挨拶を交わすと、聴取を三度再開した。
来栖「えっと、お二人は今日会うのが初めてなんですか?」
達也「え、ええ。兄とは、兄が結婚する前から疎遠になってましたから」
来栖「そうなんですか。えっと簡単な説明で申し訳ないんですが、ざっと状況だけ説明させてもらいますね」
と、いつに無く体育会家がなりを潜め神妙に話が進み、ようやく達也にも落ち着きが戻ってきたようであった。
こう言う、仕事に対する真摯な態度だけは、私がこいつをかっている理由でもあったが、それは本人には絶対言わないのである(笑
来栖「それでですね神代さん、昨晩の11時頃はどこで何をされてましたか?」
達也「はい、えーっと、実は昨日の夜9時頃に兄にお金の事で相談しに来たんですが、考えておくとだけ言われまして」
来栖「その〜お金というのはどういったことで?」
達也「はい、私は小さな町工場を経営してるんですが、その資金の事で兄に相談しに来たんです」
来栖「それは色々大変ですねぇ。あ、それで、その後の11時頃は」
達也「あ、すいません、えっと、確か11時頃には家に帰り着いて、その後酒を飲みながら気を晴らしているうちに
いつの間にか寝ちゃいました。一人暮らしなもので証明してくれる人はいませんが・・」
来栖「なるほどわかりました。あっそれと因みになんですが、お兄さんが改造銃をお持ちだったのはご存知でしたか?」
達也「あっ、アレって改造銃だったんですか・・あの、実は初めて来た時に兄があの辺りの引き出しから取り出したのを見て、
『そんなの持ってて良いの』かって聞いても、『趣味なんだよ』の一言で・・・」
達也「恐らくおもちゃかなんかだろうって思ってたんですが、まさか改造銃だとは知りませんでした」
その後、家の中や現場を見てもらい、変わったところは無いか確認してもらったが、特にこれといって変わりは無かった。
また、一通り庚岱の最近の様子などを聞いたものの、やはり自殺に結びつくようなこれといった話は無かった。
結婚して数年は大して芽が出なかったらしいが、最近では世間にも認められる程になったこともあり、
まさにこれからという大事な時に死を迎える程、愚かな人物ではなかっと考えるのが妥当だろう。
その後、念の為に任意で指紋採取をし、それぞれにはお引取り願いその日はそれで終わったのであった。
来栖「それでは皆さん何か詳しいことが分かりましたらまたご連絡いたしますので」
こうして、私にとって長い一日が終わろうとしていた・・・
来栖「自分はこれから署に戻って報告書作りますが、寒さんは?」
寒郡「あぁもう昨日から動きっ放しだからこのまま直帰するわ、後適当にやっといてくれよ」と言い終わるとまた大きなあくびを一つ、
疲労感が全身を襲い、自宅で布団に入って直ぐ泥のように眠るのであった・・・その後に待ち受ける大きな波を知らずに・・・・・
(ダイイングメッセージ編へと続く・・・)